いま英語業界で話題の教師がいるという。独自の人材教育・育成のための英語学習Eラーニングシステムを開発し、自身はTOEIC990点満点、TOEFL120点満点という輝かしい実績を持つ山内勇樹さんだ。高校時代にバスケットボールで全国大会に出場し、卒業後は単身渡米し、偏差値30からUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)に進学した。いまでは日本全国に300人近い生徒を抱え、語学教育・留学サポートを行う「Sapiens Sapiens」の代表取締役でもある。業界内でもその名は知られ、「英語の先生が教えを請う英語教師」として話題になっているという。その山内さんに自身の生い立ちや英語学習のコツ、今後の目標などについて聞いた。



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――いきなりですが、どうすれば英語を話せるようになりますか?

 その質問は毎日何度もされる質問です(笑)。実は英語を話すこと自体はそれほど難しいことではありません。まずは分野を絞ることが需要です。例えば、英語を話したい理由が「海外で取材をしたい」だった場合、そのシチュエーションで使われる英会話や単語はある程度絞られます。相手の話していることのすべてを理解しようとせず、分野ごとに使われる単語を集中的に覚えることで、相手の話していること、そしてこちらが伝えたいことのキャッチボールができるようになります。まずはそこが入り口となります。

――では、海外で生活をしたい場合は?

 その場合も同じです。生活のなかの分野を絞って単語を覚える。例えば、レストランで使われる英語や道案内のときに使われる英語などです。それぞれの分野をひとつずつ学んでいって、それから横に展開していく。そうすることで時間と共に守備範囲が広くなっていきます。ありがちなのは”浮気”をしてしまうこと。参考書を買って難しい文法の勉強をしてみたり、複数の分野を同時に学んだりすると、途中で挫折する生徒が多いという印象です。単語、文法、リスニング、ヒアリングなど、一度にすべてをやらない。もちろんTOEICなどの資格取得を目指す場合は別です。まずは分野を絞り、単語を覚え、横に展開していくことに集中してみてください。

――そうした学習法はご自身の経験から生まれたものでしょうか?

 高校時代の私はバスケットボールに夢中で、本気でNBAの選手になりたいと考えていました。全国大会出場など、ある程度の実績は残しましたが、今考えるとちょっと無謀な高校生でした。とはいえ、その頃はNBA挑戦しか頭にありませんでしたので、高校卒業後は迷わず米国への留学を決めました。そもそもそうした経緯での留学でしたので、本気で英語を勉強しようという思いはなく、渡米後は毎日バスケットボールばかりやっていました。不思議なことに、きがついたらバスケットボール英語がペラペラになっていたんです。「パス出せ」とか「俺に行かせろ」とか「いいプレーだった」とか。その程度のレベルでしたが、米国人とバスケットボールをするうえで不便なことはなくなっていました。

――渡米前にある程度の英語力があったのでは?

 ほとんどゼロでした。偏差値は30台でしたから英語なんて「サンキュー」レベルしかわかりませんでした。

――そこから数年でUCLAへ入学するというのは驚きです。
 
 渡米してバスケットボールをしながら語学学校に通い、その後、短大に入学しました。米国には短大に2年間在籍して、いい成績を修めると4年制の大学に入学できるシステムがあります。そのシステムでは、大学入学時の試験はなく、短大時代の内申点的が基準となり評価されますので、UCLAに入学できたのだと思います。ただ短大時代はやはり努力を重ねました。 
 
――UCLA出身のNBA選手はたくさんいますが、山内さんもバスケットボール部に所属されたんですか?

 いえ、その頃にはNBAへの夢を諦めていました。高校3年生で練習をしすぎて疲労骨折を経験していたんですが、その傷が短大時代に悪化して、大学進学前にプロへの道は諦めました。でも米国の生活は楽しかったですし、UCLAで勉強を続けようと決心しました。博士号コースに進むかどうか悩みましたが、最終的には起業の道を選びました。

――その理由を教えてください。

 実は父が実業家で、妻の家族にも実業家が多く、当時、周辺にいた人に起業家マインドを持つ人が多かったんです。その影響だと思いますが、私も漠然と「社長になりたい」と考えるようになりました。自分に何ができるかを考えた時に、「偏差値30からUCLAに入学することができた。同じような道を歩みたいと思う人も少なくないはず」と考え、そうした人たちのサポートをしてみようと考えたんです。

――起業を決意して、23歳で帰国。その後は順風満帆の実業家人生が続いたのでしょうか?

 帰国後、高田馬場に語学教育と留学サポートを事業内容とする会社を立ち上げました。でも、すぐに倒産してしまいました(笑)。500万円くらいの借金を抱え、返済のために派遣社員として通訳や翻訳の仕事をしました。まさに寝る間を惜しんで働いていた時期です。UCLAでは脳神経科学を専攻していましたので、国家機関の研究所で翻訳や通訳の仕事をすることができました。幸いなことに2年間で借金を返済、それなりの事業資金を貯めることもできました。

――倒産、借金を経験して、「起業は諦めよう」という気持ちにはなりませんでしたか?

 その逆でした。研究所で通訳や翻訳の仕事をしているときに気がついたんですが、日本にはとても優秀な研究者がたくさんいるにも関わらず、彼らは世界で戦えていなかったんです。もちろん英語の論文を読むなどの最低限のことはできましたが、国際学会で研究成果を発表してネットワークを広げて共同研究にもっていくとか、資金を募るとか、そうしたグローバルに活動している研究者がほとんどいなかったんです。実力的には十分やれるのに、英語が壁となって研究所に閉じこもっている研究者がたくさんいました。そうした経験から、より英語学習や留学サポートへの熱意と英語需要という意味で、チャンスはあるんだと自分に言い聞かせることができたんです。

――現在、代表取締役をつとめる「Sapiens Sapiens」はどんな会社ですか?

 TOEICなどの資格試験対策、留学支援、受け入れ先の確保、留学後のサポートまで。留学のために必要なことのすべてをサポートしています。

――最近ではオンラインスクールにも力を入れていますね。

 私のやりたいことをシンプルに言葉にすると「人の人生を変えたい。その手助けをしたい」ということに集約されます。やはり対面授業だけでは影響力が小さすぎるんです。対面での教育とサポートは15年間、東京でやってきましたから。これからはより活動範囲を広げたいと考えています。

――現在はどのくらいのペースで教壇に立たれているんですか?
 
 今も昔もあまり変わっていません。1レッスン30分の授業を毎日やっています。日本全国に2〜300人くらいの生徒がいて、私個人としては2〜30人くらいの生徒を受け持っています。

――その他の英語教師、または英語教育と山内さんの違いはなんですか?

 生徒によって、その目的によって柔軟に教え方を変えているところだと思います。生徒数を増やして、ただ利益をあげたいのであればカリキュラムを組んで、生徒数を増やせばいい。影響力を拡大したいとはいえ、目標は「人生を変えたい」ですから、その場合、こちらのやり方を押し付けるのではなく、相手に合わせることが重要になります。ですから生徒によって授業の内容はがらっと変わります。20〜30代野多い留学目的であれば、英語を楽しんだり、留学に関する実務的なことも教えます。30代や40代に多い資格習得であれば、限られた時間でいかに効率よく目標スコアに到達できるかどうかを優先します。最高齢の90歳の生徒であれば「ボケ防止」などもあります。

――はじめに「どうすれば英語を話せるようになる?」と聞きました。同時に「どうすればTOEICで高得点、満点をとれる?」もよく聞かれる質問だと思います。正直、うんざりしませんか?

 それも毎日のように聞かれます(笑)。海外の大学を卒業、TOEIC満点などの経歴があるため、そうした質問をされるのは当然だと思います。でも最終的に私が言うのは「英語なんてどうでもいいよ」ということです。これには理由があります。当たり前のことですが、英語を学んだ後の人生のほうが英語学習よりも何百倍も重要です。ですから生徒には「資格をとって何がしたいの?」「英語を話せるようになってどうするの?」など、必ず質問をするようにしています。そうした問いかけを経て、最終的に「英語を学ばなくてもいいや」となった生徒もいます。

――6月にYouTubeチャンネル「それゆけ山内先生」を開設しました。今後について教えてください。

 英語を音楽や絵画と同じように楽しんでいる様子を伝えていくつもりです。本業はあくまでも英語教師ですが、語学を学問として捉えるだけでなく、「英語を日常生活に落とし込んでみては?」という提案をしてみたいと考えています。ですから、冒頭でお話したような喫茶店での英会話や外国人女性と仲良くなるための実践英会話を街に出て台本なしで収録しています。

――外国人女性とは仲良くなれましたか?

 詳細は動画をみていただければ嬉しいです。英語ができるだけで男女関係がうまくいくとは限らないという、いい例になったと思います(笑)。

(AERA dot.編集部)

◆山内勇樹
やまうち・ゆうき/1980年長崎県生まれ、広島育ち。英語教師。99年に渡米し、UCLA卒業(脳神経科学専攻)。TOEICテスト990点満点、TOEIC SWテスト400点満点、TOEFL iBTテストベストスコア120点満点を取得。語学教育・留学サポートを行う「Sapiens Sapiens」の代表取締役。