鉄道の駅のホームは平地や高地だけではない。地下鉄では当たり前の低地にも設けられている。東京メトロ銀座線のような地下1・2階という浅いところから、30メートル以上の相当深いところにも設けられている。駅の深さに関する定義は、地上から線路のレール面までの長さを計測するのが一般的のようである。それでは、地下30メートル以上を対象に、番外編も併せてご紹介しよう。



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■ケーブルカーは上に行くとは限らない

 最低地点の駅第1位は、なんとケーブルカー。本来は急勾配を登り、山上へ向かうものだが、地下へ向かうケーブルカーが青森県に存在する。

 その名は青函トンネル記念館青函トンネル竜飛(たっぴ)斜坑線の「体験坑道駅」で、海面下140メートル。青函トンネル記念館は一般財団法人が運営するれっきとした鉄道で、営業期間中に運転される(新型コロナウイルスの影響で2020年8月24日から営業休止)。

 青函トンネル竜飛斜坑線は、1988年7月9日に青函トンネル記念館〜体験坑道778メートルで営業運転を開始。青函トンネル記念館は建物内にある地上駅で、発車すると急勾配を下り、体験坑道に到着する。線路はその先も延びているが、残念ながら“非公開”である。

 青函トンネルを通る列車がすべて在来線の時代は、2013年まで竜飛海底駅(後述)からの見学コースにも組み込まれ、好評を博した。しかし、北海道新幹線の工事に伴い2014年以降は、JR東日本津軽線三厩(みんまや)駅から徒歩100分、もしくは外ヶ浜町循環バスの龍飛行きに乗り、青函トンネル記念館で下車する。

 津軽線は列車の運転本数が少ないため、自動車で直接青函トンネル記念館へ向かうほうがよさそうな状況だ。青函トンネル記念館は“日本最難関の旅客鉄道”ともいえる。

■第2位以降はすべて東京都

 第2位は東京都交通局の都営大江戸線六本木駅の1番線(大門・両国方面)で、地上からマイナス42.3メートル。ホームは2層構造で、上の2番線(新宿・都庁前方面)は地上からマイナス32.8メートルの第8位である。

 なお、都営大江戸線の駅では、下記の駅もランクインされている。

・第5位 新宿駅:地上からマイナス36.6メートル
・第7位 中井駅:地上からマイナス35.5メートル
・第10位 東中野駅:地上からマイナス34.2メートル
・第13位 中野坂上駅:地上からマイナス33.4メートル

 地下鉄というのは、先に建設された路線と交差する場合、基本的にその下を掘ることが多く、後発の路線は駅のホームが半ば必然的に深い位置となる。都営大江戸線の場合、六本木、新宿、中野坂上はほかの地下鉄と交差する。

 第3位は東京メトロ千代田線の国会議事堂前駅で、地上からマイナス37.9メートル。ホームは高低差があり、北千住寄りは高い位置、表参道寄りは低い位置にある。

 千代田線では新御茶ノ水駅が第11位にランクイン。ホームの北千住寄り(JR東日本御茶ノ水駅の聖橋口側)は坂の上に駅舎が建つため、地上からマイナス34メートルである。しかし、表参道寄りは平地に駅舎があるため、ホームは浅い位置にある。東京メトロはホームを「地下2階」としており、駅舎の位置によって、地下1階(きっぷうりば、改札)と地下2階(ホーム)の距離が異なる。

 第4位は東京メトロ南北線の後楽園駅で、地上からマイナス37.5メートル。付近に東京ドームがあり、南北線はその下を通っている。交差する丸ノ内線は地上駅で、駅の改築工事により、現在はビルの中にホームがある。

 第6位は東京メトロ半蔵門線の永田町駅で、地上からマイナス36メートル。先に開業した有楽町線ホームは地下4階、後に開業した南北線ホームは地下3階に対し、半蔵門線ホームは地下6階にある。半蔵門線の開業により、永田町駅と赤坂見附駅(銀座線、丸ノ内線)が直結し、同一駅扱いとなった。

 第8位は東京メトロ副都心線の東新宿駅3・4番線(小竹向原・和光市方面)で、地上からマイナス35.4メートル。1・2番線(新宿三丁目・渋谷方面)はその上にある。一部の各駅停車はここで急行の通過待ちを行う。この駅は都営大江戸線が先に開業したため、乗換駅では珍しく他線の上にホームがある。

 2層構造としたのは、公道の下に1面2線のホームを2カ所建設することで、費用を抑制したものと考えられる。地上から40メートル以上も下の大深度地下でなければ、私有地は地下も含まれるため、土地を購入してから掘らなければならないからだ。

 副都心線では、雑司が谷駅が第12位にランクイン。地上からマイナス33.8メートルのところに位置する。

■JR東日本の駅もランクイン

 第9位はJR東日本総武本線の馬喰町(ばくろちょう)駅で、地上からマイナス34.4メートル。東京〜錦糸町の地下区間は既設の地下鉄と交差するため、深い位置に建設せざるを得なかったようだ。都営新宿線の馬喰横山駅(さらに都営浅草線の東日本橋に直結)に隣接しており、乗換駅として案内されている。

 第14位は京葉線東京駅で、地上からマイナス33メートル。当初は成田新幹線用のホームに充てられていたが、計画が白紙となり、京葉線に転用された。ホームの位置は東海道本線東京〜有楽町のほぼ中間にある。また、東京メトロ千代田線の二重橋前駅からでも容易に乗り換えられる。

 第15位は東北新幹線上野駅で、地上からマイナス30メートル。新幹線では唯一の地下駅である。

■消えた海底駅は今……

 ここからは番外編。以前、青函トンネル内に、吉岡海底駅(海面下149.5メートル)、竜飛海底駅(海面下135メートル)があり、最低地点の駅としては第1位、3位だった。

 開業前は駅としての営業を想定していなかった。車両火災などの非常事態に備え、防災用の定点を青森県側は竜飛、北海道側は吉岡に設け、乗客の避難施設や、車両の消火設備を設けた。

 そこでJR北海道は、定点を世界初の海底駅にして、線路外の坑内を観光地に整備することで、話題づくりや増収策に努めた(両駅を利用できるのは、見学客のみ)。2014年3月15日をもって駅は廃止され、青函トンネル開業前の竜飛定点、吉岡定点に戻った。現在も新幹線の車窓から眺めることができる。

■地上駅でも海抜マイナスがある

 JR東海関西本線と名古屋鉄道尾西線の弥富駅(愛知県)は、地上駅ではもっとも低い海抜マイナス0.93メートルに位置する。1959年9月26日に台風15号(伊勢湾台風)がこの地を襲い、高潮によって弥富駅が冠水、周辺の町も甚大な被害を受けた。

 その後、海部(あま)郡弥富町(現・弥富市)は台風や地盤沈下対策として電力排水機を備え、現在も弥富駅は海抜マイナス0.93メートルのままである。(文・岸田法眼)

岸田法眼(きしだ・ほうがん)/『Yahoo! セカンドライフ』(ヤフー刊)の選抜サポーターに抜擢され、2007年にライターデビュー。以降、フリーのレイルウェイ・ライターとして、『鉄道まるわかり』シリーズ(天夢人刊)、『論座』(朝日新聞社刊)、『bizSPA! フレッシュ』(扶桑社刊)などに執筆。著書に『波瀾万丈の車両』(アルファベータブックス刊)がある。また、好角家でもある。引き続き旅や鉄道などを中心に著作を続ける。