菅義偉政権の「値下げ」号令に端を発し、今年3月下旬からサービスがスタートしたドコモ、au、ソフトバンク、楽天モバイルの格安の新料金プラン。いずれも月額2千円台と安く、上手に利用したいところ。自分のライフスタイルに合ったお得なプランをどう選べばいいのか、考えてみた。



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 NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの大手3キャリアが打ち出した新プランの共通点は、低価格で20ギガバイト(GB)まで高速通信が利用できること。最新技術の5Gにも対応している。月額基本料金(税込み)は、いずれも2千円台。従来の大容量プランが軒並み月額6千円超なので、月々のスマホ料金を半額以下にすることも可能だ。

 さっそく乗り換えねば、と動く前に注意点がある。大手3社の新プランはどれもオンライン契約専用。ユーザー自身が契約から端末の起動まで行わなければならない、いわば“自己責任プラン”だ。スマホ安全アドバイザーの鈴木朋子氏が言う。

「店頭サポートが受けられない点は要注意です。特に他社のプランに乗り換える場合は、ユーザー情報・電話番号などを識別する『SIMカード』を自分で入れ替える作業が必要。手順がわからず店頭で聞いても、対応してくれません。UQモバイルなどの格安スマホに乗り換える手順とほぼ同じなので、格安スマホを利用している家族や友人を頼るのもいいでしょう」

 記者も客として各社のショップで新プランについて尋ねてみたが、auとソフトバンクは受付非対応。店員から「お客様と同じ知識しかありません」と門前払いを食らった。ドコモは説明こそしてくれたが、店員のテンションがやや低い。唯一元気な対応だったのは、店頭契約が可能な楽天モバイル(以下、楽天)だけだった。スマホ事情に詳しいITジャーナリストの三上洋氏が語る。

「大手3社の公式ショップは大半が第三者資本による代理店ですが、彼らは新プランの契約をさせてもらえず、サポートをしてもお金が入らない。ショップに払うコストがなくなることも、格安プランが安い理由の一つです。代理店にとっては打撃で、『卸が直接売るなよ』と怒っているでしょうが……」

 契約後のアフターサポートも原則オンライン。楽天は店頭契約こそできるが、端末故障などは店頭で対応せず、原則メーカー対応になるという。

 使えない機能にも要注意だ。大手3社の新プランは、留守番電話や転送電話の機能が使えない。また、ドコモメールなど各社独自の「キャリアメール」も使えなくなる。

「キャッシュレスサービスや請求書のネット閲覧などのアカウントにキャリアメールで登録している場合、プラン切り替えでアカウントが消失すると面倒です。キャリアメールで登録したサービスを事前に洗い出し、他のメールアドレスに変更する作業が必要です」(三上氏)

 こうしたデメリットが割に合わないと感じるなら、現プランにとどまってもいいだろう。

 では、やはり新プランにしたいという場合は、何を基準に選べば良いのか。大手3社の料金はほぼ横並びで決定的な差はないが、ライフスタイルによって微妙な「向き、不向き」はある。

 まず、電話回線を多用する人は、ドコモのahamo(アハモ)がおススメだ。そもそも新プランを2千円台で利用するには、なるべくLINEやMessengerといった無料通話アプリを使うのが得策。それでも電話回線を使う必要がある場合、5分以内の通話が無料で、かけ放題も月額1100円で利用できるahamoが最もコスパが良い。

 一方、ソフトバンクのLINEMO(ラインモ)はかけ放題が月額1650円と割高だが、グループ会社のサービスであるLINEを利用すると真価を発揮する。前出の鈴木氏が語る。

「LINEでの通話やトークのデータ消費がゼロなので、いくら通話してもタダ。LINEクリエイターズスタンプも夏から使い放題になります」

 高速通信をたっぷり利用したい人には、auのpovo(ポヴォ)に分がある。

 大手3社の新プランは、データ通信量が20GBを超過しても低速(1Mbps)ならネットを利用できるため、「YouTubeの普通の動画なら十分見られる」(三上氏)。それでも高速通信を使いたい場合、povoならば200円(税抜き)の「データ使い放題24時間」をトッピングするとデータ容量を気にせず高速通信が可能になり、映画を高画質で一日中楽しむこともできる。

「自宅にネット回線がない人にもおススメ。平日は使わず土日だけ1回200円ずつ払っても、1カ月2千円弱。プロバイダーと契約するよりお得です」(三上氏)

 三上氏は、海外へ行く機会が多い人は「ahamo一択」だと言う。

「画期的なプラン。通常、日本で契約したスマホを海外で使うと別途、料金がかかりますが、ahamoは通常プランに海外でのデータ通信も含まれる。82カ国・地域で使えて、SIMの切り替えなど面倒な作業も不要です」

 大手3社の牙城を崩したい楽天は1GBまでなら0円、3GBまでなら980円、20GBまでなら1980円(いずれも税抜き)と、料金可変の「Rakuten UN‐LIMIT VI」を開始。LINEに似たトークアプリ「Rakuten Link」を使えば国内通話とSMSが0円になる。加入者は楽天市場のポイント還元率が高まるのもお得だ。

 弱点は基地局が少ないゆえの通信の不安定さ。4GのLTE回線などで約99%の人口カバー率を誇る他3社に比べ、楽天は2020年末時点で73.8%。三木谷浩史社長は目標を5年前倒しして基地局設置を進め、21年夏ごろに人口カバー率96%を達成すると宣言している。カバー未達エリアは、提携するauのネットワークを間借りする「ローミング」を実施中だ。

「契約上、楽天のカバー率が7割を超えたエリアについてauは契約を切ることができるそうです。これにより、川崎駅などは一時期auローミングができず圏外になりました(現在解消済み)。ただ、楽天は基地局設置を頑張っているので、ずっと続くことはないでしょう」(三上氏)

 もう一つのポイントは、800メガヘルツ前後の周波数帯、通称「プラチナバンド」だ。建物の壁など障害物の影響を受けにくく屋内にも通話・通信に必要な電波が届きやすいが、すでに大手3社に独占され空きがない。楽天が割り当てられているのは1.7ギガヘルツ帯の電波のみで、地下や屋内には届きづらい。auローミングがなくなればプラチナバンドも使えなくなり、エリア内でも接続できない場所が発生しかねないのだ。楽天モバイル広報部は「両社合意の上で一部エリアを終了する」と認めつつ、こう話す。

「地下街や大規模な屋内施設等は引き続きローミングで提供予定です。当社はオフィスビルや商業施設の屋内対策も進めており、主要な空港やスタジアムなどにも順次、楽天回線エリアを拡大しております。飲食店などは4G小型基地局『Rakuten Casa』の設置を進め、電波状況の改善を図っております。その他、お客様から電波が届きづらいというご相談があれば、個別に状況を調査した上で、一部のお客様にはルーター等を提供してサポートさせていただいております」

 プラチナバンド割り当ての早期実現も目指すというが、まだ具体的な見込みは立っていない。

 こうした懸念はあるが、三上氏は楽天について、「特にサブで使うと素晴らしいサービス。使わなければ0円なので、持っていて損はないです」と話す。1台のスマホに2枚のSIMを挿し込める「デュアルSIM対応スマホ」を使うことで効果を発揮するという。

「例えばiPhoneの最新機種もSIMの2枚挿しができます。これを利用して、楽天と他キャリアを併用するやり方がおススメです。私はドコモの電話かけ放題と、楽天のネット使い放題を組み合わせることで、両プランの“良いとこ取り”をしています」(三上氏)

 自分のライフスタイルに合ったプランは見つかっただろうか。別のキャリアに変える際、現在の契約内容によっては違約金をとられるので、決めかねる場合は当面、同一キャリアでプランだけ変えて様子を見る手もある。また、大容量の高速通信が必要なく安さを重視したい人などは、自前の通信設備を持たない業者(MVNO)による格安スマホも選択肢に入ってくる。熟慮の上で、お得なスマホ生活を満喫したい。(桜井恒二)

※週刊朝日  2021年4月23日号