昨年4月に第一子の出産と結婚を電撃発表した、大ヒット4コマ漫画『アラサーちゃん』作者・峰なゆかさん。出産からちょうど1年。出産直後のインタビューでは、“出産後にやっちゃいけないことリスト”を作成したと話していた峰さん。その後の育児について尋ねると、独特すぎる子育てルールを話してくれた。



――出産からちょうど1年です。どのような生活になりましたか?

 子どもはちょうど1歳になったばかりです。おしゃべりはまだですが、伝い歩きをするようになりました。

 子育てに関しては、夫が育休を取ったので、夫がメインです。もともと(出産前から)夫がワンオペ育児をすると言っていて、それをほぼ宣言通りやっている感じですね。私が仕事に追われて昼間に寝ている間も、夫が子どもを見ながら家事をしていて、これまでは夫に育児の9割くらいを任せていました。

 でも4月初旬に夫の育休が終わってしまって、これからは私と半々で分担していこうという話になっています。なので保育園で慣らし保育をしながらも、私が子どもの面倒を見る時間が増えましたね。といっても、私は夫の育休が終わって2日目にして、あまりにもつらくてゲロを吐きました。

――ゲロですか(笑)。そんなに大変だったのですね。

 赤ちゃんは生命力がめちゃめちゃ強い分、一緒にいるだけでこっちの生命力が吸われていくような感覚があります。幸福をもたらしてくれるけれど、「生気を吸ってくるかわいい妖怪」。ベビーシッターや夫の帰りを待ちながら“妖怪”を見ているだけでも、相当疲れました。仕事どころではないです。ベビーシッターが来て安心と思いきや、別室で寝ようとしても、知らない人が家にいると落ち着かなくて、寝られない。世の中のワンオペ育児をしている人たちは、想像を絶する大変さだと思います。

――実際に育児をしてみて、予想外だったことはありましたか。

 もともと「育児は大変」ということは散々聞いていたので、最悪の想像ばかりしていました。離婚してシングルマザーになって、子どもの面倒を見切れなくなって警察に相談する、といったところまでシミュレーションして(笑)。でも夫が頑張っていることもあり、実際はそれよりははるかにマシでした。

 それよりも、私の場合は「妊娠中」の方がつらかった。出産や育児に比べて妊娠中のつらさがあまり語られていなかった分、ハードルを高く設定していなくて、こんなにつらいのかと。

 まずつわりがひどくて、ほぼ寝たきり状態。寝室からトイレに行くことすらつらいので、夫に大人用の紙おむつを勧められたほどです。臨月の時期もほぼ寝たきりで、横向きに寝るしかない。寝るだけでもつらかったですね。妊娠中は誰にも代わってもらえない。あまりにもつらすぎて、誰かにバットで頭をたたいてもらって、産むまでの間、気絶させてほしいとすら思っていました。

――パートナーは、『アラサーちゃん』に登場する、彼氏の「チャラヒゲ」というキャラクターのモデルでもある一般人男性。出産後、夫婦の関係性に変化はありましたか。

 夫のことがめちゃくちゃ好きになりました。子どもが生まれると夫のことが嫌いになるという話をよく聞きますが、私の場合は逆でした。正直、子供を産む前は「良いやつ」といった感じで、めっちゃ好きとまではいかなかったのですが……。私には、「父親萌え」の要素があるようです。以前は「ネクタイをほどいた男」がすてきだと思っていましたが、「男と赤ちゃん」の組み合わせも、すごくすてきだと分かりました。

――出産前に、“出産後にやっちゃいけないことリスト“を作成していたそうですね。

 リストの項目は、10個ぐらいあります。たとえば「夫と『ママ』『パパ』と呼び合わない」は、今も下の名前で呼び合っているので、達成できています。「マタニティーフォトを撮らない」も運良く達成できていますね。妊娠中に体調が悪すぎて、着替えて腹を出して笑顔を作るのは、状況的に無理でした。

 あとは、「赤ちゃんの大便をうんちと呼ばず、『お花』と呼ぶ」も達成できています。子どもがいる家庭では、『うんち』という言葉を平気で使うことに違和感がありました。何か美しい言い替え表現はないかなと考えていた時に、登山界では大便をするときに「お花を摘む」という呼び方をしていることを思い出して、使おうと思いました。

――面白い呼び方ですね。

 でも、「お花」という呼び方は後からマズったなぁと思いました。出産祝いにお花がたくさん届いたのですが、夫が「お花のにおいがするね!」と言ったときに、「どっちの?」ってなった(笑)。
 夫が鼻水のことを指して「おはなが出てるね」と言った時も、私は大便が出ていると思って焦りました。とにかく紛らわしいんです。もっと汎用性の低い言葉にすればよかったと思いました。

――他に、リストにはどんな項目がありますか?

 ちょっと待ってくださいね。(スマホを取り出す)

他は、
・SNSのアイコンを赤ちゃんにしない
・ラインのハンドルネームを○○ちゃんママにしない
・背景が汚い写真をSNSに載せない
・子どもの顔面をSNSに載せない
・ママっぽい服を着ない(ママっぽい服の例:チュニックにレギンスに特にこだわりのないスニーカー。汚れてもいいような服)
・鼻水やよだれが垂れている写真を投稿しない(親がいくらかわいいと思っても、子どもがいない人が見たら、汚いと思うこともある)
・他人の前で子どもの話をなるべくしない

 ちなみにこれらは私個人がやりたくないと思っていることリストであって、他人が好きでやっている分には何ら問題はないですからね。

 項目はほとんど達成できているのですが、「子どもの話ばかりしない」は一番難しいですね。なるべくしないように心がけていますが、いつも「またしちゃった!」と反省しています。

――なぜ、子どもの話をしないようにしているのでしょうか。

 赤ちゃんや育児の話って、いわゆる「オタクトーク」なんです。興味のある人は限られていますし、興味のない人にとって、オタクトークを急にされても困ると思うんです。私は宝塚が好きなのですが、興味のない人が宝塚の話を熱く語られてもつらいでしょうし、逆に、急にエヴァやガンダムの話をされても困ってしまいます。それと同じだと思っています。

 夫や身内は同じ“赤ちゃんオタク”なので、子どもの話をしてもOKというルールにしています。あとは0〜1歳ぐらいの子を持つ人は、同じく“赤ちゃんオタク”であることが多いので、話をしてもいいかなと思っています。それ以外の人の前では、なるべく自分から話題に出さないようにしていますね。

――親として、将来子どもにはどんな風に育ってほしいですか。

 子どもには、「青学(=青山学院大)のテニサーに入ってほしい!」と思っています。イケてる子に育ってほしいんです。先日、子どもを連れて青学の前をお散歩していた時、「将来はここに入るんだよ……」って言い聞かせてきました。

 今のうちからイケてる子に育てる計画を立てています。小学校では足が速い子がイケているとみられがちなので、足が速くなる教室に通わせて技術を身につけさせて、体力任せの同級生たちとの勝負で勝ってほしい。あとはラップを習わせたい。語彙も増えるし、英語を学ぶモチベーションにつながるかも、と思っています。

 子どもには、すでにイケてるっぽい服を着せることを心がけています。幼稚園など外に行くときには、モノトーンな装いにまとめてみたり、幅広くモテるような無難な好感度を狙っています。あと2〜3年もしたらもっと自己主張ができるようになって、「こんな量産型大学生のような服装はしたくない」とか「青学には興味ない」みたいなことを言われるのかもしれないので、それまでの短い間だけでも、イケてる大学生のコスプレをする赤ちゃんを楽しみたいと思ってます。
(構成=AERA dot.編集部・飯塚大和)