日本海にまた北のミサイルが着弾した。覇権国家アメリカでは“CNN”にラリアットする男が大統領だ。いつの世もリスクはつきものだが、いよいよニッポンもきな臭くなってきた。そんな時代に我が家の家計を、資産をどう守るか。苦難を乗り越え今に至る、隣の中国の「不動産投資」やインドの「金投資」から知恵をいざ、学ばん。AERA 2017年7月17日号では「中国とインドのお金を守る方法」を大特集。

 漠然とした将来不安を抱える日本人は少なくない。翻って世界には、策を講じなければ命も資産も守れない人がいる。彼らはいかにして、命と資産を守っているのか。

 セコムが2016年12月末、「日本人の不安に関する意識調査」を発表した。それによると、「最近不安を感じている」が72%。老後の生活や年金、健康、地震がトップ3に入った一方、「今後の治安の悪化、犯罪増加の可能性」には78%が「そのように思う」「どちらかといえばそのように思う」と回答した。

 国家存亡の危機に見舞われた国とは比べようもないが、災害多発、少子高齢化や核家族化といった社会構造の変化、北朝鮮ミサイルの着弾など、日本も危機と無縁ではない。何らかの危機下にある祖国・母国を持つ人、その地に長く住んだ人の防衛術や考え方が、不安解消の道しるべにならないだろうか。

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 雑誌などに出てくる「資産運用の成功者」のエピソードは庶民にすれば非現実的にも見える。特集冒頭でも中国人富裕層の防衛術を紹介したが、一般人も守ろうとするものは同じだ。

「外貨流出? それは北京や上海に住む一部のお金持ちの話。中国人だって同じです」
 そう口をそろえて話すのは、日本の大学に留学し、中国語講師をしている王さんと張さん(共に20代・仮名)。

 中国人民銀行の発表によると、今年4月末の外貨準備高は前月末より204億ドル多い3兆295億ドル(約340兆円)。3カ月連続で前月比増加。この報道から「外貨流出に歯止めはかかったが、実際のところは?」と質問したところ、前述の答えが返ってきたのだ。

「ただし、経済の先行きが不安であることは確か」

 王さんの実家周辺は農村地で、生活は貧しく、何かに投資する余裕はない。一方の張さんは両親が公立学校の教師。農家なら土地を売る、商売人なら新たな商売を始める、という道があるが、教師ではいずれも難しい。

 だから、不動産、マンション購入が資産防衛の手段だ。人民元の価値が下がっても、不動産があればなんとかなるだろう、と考えている。

「一人っ子政策が長く続いた中国では、少子高齢化も大きな問題なので、今のうちに資産を、という気持ちが強い。両親の世代は自分たちより貯金があるので、頭金を払える。親子が一体となって、マンションを購入するのです」

 日本の大学に進学し、日本語を流暢に話せること、言い換えれば「教育への投資」が将来への投資につながり、結果的に一族の「資産防衛」とならないのか? そう投げかけると、無言で首を振った。

「10年前なら違った。今は留学経験がある中国人が増えているので、競争が激しい」

 例年、6月には2日間にわたり、中国の全国大学統一入試、通称「高考(ガオカオ)」が実施される。中国の大学はほぼ全て国立大学で、この日以外に試験のチャンスはない。大学受験の熾烈さは、日本の比ではない。

「よく言われるのは、貧乏人、貧乏な生活から抜け出すには高考しかない」(王さん)
 選択肢がほかにないのだから、10代のすべてを捨ててでも、必死で挑戦するしかないのだ。

 農村出身で、北京の有名国立大学を卒業したある中国人は「高校3年間、同級生の顔や名前を一人も覚えていない。勉強以外記憶がない」と言っていた。その話をすると、王さん、張さんともに大きく頷いた。(ライター・羽根田真智)

※AERA 2017年7月17日号