日本人の先祖がどんな姿で、どこから来たかには謎が多い。その謎を解く手がかりになるかもしれない、国内最古の全身骨格が発見された。毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、朝日新聞編集委員・中村俊介さんの解説を紹介しよう。

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 沖縄県石垣島の白保竿根田原洞穴遺跡で、2万年も昔の、旧石器時代の人骨がたくさん発掘された。少なくとも19体で、全身の骨格がそろう国内最古の例も。私たちの先祖がどんな姿で、どこから来たかには謎が多い。発見された膨大な人骨は、この難問を解く手がかりになりそうだ。

 この遺跡は空港敷地の洞穴内にある。数年前から沖縄県立埋蔵文化財センターや研究機関の専門家たちが本格的に発掘をし、その成果の概要を5月に発表した。

 それによると、旧石器時代の人骨の破片は約千点にも上り、復元すると19人以上で、世界有数の規模だ。4体は人間の特徴をよく表す頭の骨がある。うち1体は全身骨格がほぼ復元できるほど残りがよく、科学的な手法で測ると2万7千年前の年代が得られた。

 旧石器時代の骨は古いため、普通は破片ばかり。だが、全身の骨がそろえば体つきや顔つきを知ることができる。彼らが南方系の人々だったのか、それとも北からやってきたのか、日本人の祖先なのかそうでないのか、わかるかもしれない。

 骨のまとまりや出土状況から、この遺跡は墓地とみられる。全身骨格では、それぞれの骨の位置を観察すると、仰向けに手足を折り曲げる「屈葬」に似た姿勢だった。また、土の中に埋められていないので、遺体をそのまま安置する「風葬」らしい。葬られ方までわかる旧石器時代の墓は国内初の確認。もしそうなら、旧石器時代の葬送儀礼や死生観を知る糸口になりそうだ。

 これまで国内で確認された旧石器時代の人骨はわずか10例余りで、ほとんどが沖縄県。骨は普通、火山が多く酸性土壌の日本本土では溶けてしまう。ところが沖縄は珊瑚礁由来のアルカリ土壌で、保存に適しているのだ。これからこの人骨をもとに、さまざまな角度から研究が始まる。人類史を前進させる大発見が生まれるに違いない。(解説/朝日新聞編集委員・中村俊介)


<旧石器時代の発見が相次ぐ沖縄>
 沖縄では旧石器時代の古い骨が集中的に見つかっている。有名なのは八重瀬町の「港川人」だ。2万2千年ほど前の、これまで国内唯一の全身骨格例だった。日本最古とされるのが、山下町第一洞穴(那覇市)の人骨。小さな破片だが、3万年前を超える年代が出ている。
 近年は、沖縄県立博物館・美術館が発掘するサキタリ洞(南城市)で発見が相次ぐ。人骨とともに、「貝器」と呼ばれる貝でつくった道具も見つかるなど当時の暮らしぶりがうかがえ、白保竿根田原洞穴と同様、こちらも注目だ。

※月刊ジュニアエラ 2017年8月号より