新型コロナウイルスによる肺炎が流行した武漢で、作家の方方氏が発表し続けた日記が世界の注目を集めた。温和で、中国共産党の権威に挑むものではまったくなかったが、流行を食い止められなかったことについて責任を追及する考えを示しただけで、中国国内で2カ月にわたり数千万のネットユーザーの袋叩きに遭い、脅迫を受けた。この「私はウイルス――武漢ロックダウン日記」は、方方氏と同じく武漢で暮らす一般市民の男性「阿坡(A.PO)」が、中国共産党を批判する反省の書として記したものだ。「一人の健全な精神を持つ中国人」として、世界に向けてお詫びの気持ちを示したいという。国内での一報から武漢ロックダウンまでの54日間を振り返った阿坡は、そこに国家の「邪悪」を見る。



*  *  *

■2020年2月11日 政府のでたらめな操作と、斟酌する私たち(7)

 引き続き2020年に年が変わってからの時系列表を見てみよう。

■1月1日
華南海鮮市場閉鎖
武漢市公安局がデマを広めたとして医師8人を取り調べ

(注:公安局が8人を取り調べる以前に、すでに冷酷な国家マシンが原因不明の肺炎を理由に動きだしていたのは明らか。彼らが真相隠蔽を選んだとしてもなんら驚くに当たらない)

■1月2日
大量の環境衛生要員が華南海鮮市場を徹底清掃
新華病院のCT担当医師がCT異常3例発見

■1月5日
同済病院の救急医師1人にCT異常
武漢市衛生健康委員会が患者59例発表、依然明らかな人から人への感染は未発見、医療スタッフの感染も未発見

(注:現在私たちが理解している新型コロナウイルスの感染力と感染速度からすれば、この59例という数字は絶対にでっち上げと断言できる。再度「人から人への感染は未確認」と強調しているのもパニックの発生を恐れ状況に配慮したものだ。人命に関わる事柄でありながら、「人から人への感染は未確認」という推敲に堪えないフレーズに対し、1000万都市武漢の誰一人として反応を示すことはなかった、私を含めて)

■1月6日
武漢市人民代表大会・政治協商会議開幕
新華病院の呼吸科医師1人にCT異常
新華病院で内部会議、状況を外に出せないと強調、メディアへも公表できず
中国疾病予防管理センター(中国疾病予防控制中心)が通達、2級(重大)応急対応発動

■1月8日
国家衛生健康委員会専門家グループ、新型コロナウイルスが肺炎流行の病原と確認

■1月10日
武漢市人民代表大会・政治協商会議閉幕
新華病院のCT医師がCT異常30例発見
同済病院のCT異常救急医師、感染確認

■1月11日
新華病院で2例目の医療スタッフ感染
武漢市衛生健康委員会が感染確認患者41例発表、死亡1例、3日以降新たな発病例はないと強調、「人から人への感染は未確認、医療スタッフの感染も未確認」
湖北省人民代表大会・政治協商会議開幕

■1月15日
中国疾病予防管理センター(中国疾病予防控制中心)が通達、1級(特別重大)応急対応発動

■1月16日
新華病院の耳鼻咽喉科主任がCT異常
武漢市衛生健康委員会が新たな病例増加はないと発表、「人から人への限られた感染は排除しないが、なお人から人への感染リスクは低い」

■1月17日
湖北省人民代表大会・政治協商会議閉幕。武漢市衛生健康委員会が12日から17日まで新たな病例増加はないと発表

(注:両会議開催中、病例増加を発表せず、人々をカッとさせる。が、この国に住む誰一人として斟酌して口にせず)

■1月18日
武漢市衛生健康委員会が病例4新増発表
新華病院のCT医師がCT異常100例発見

■1月19日
武漢市衛生健康委員会が病例17新増発表、病原確認後累計62例

■1月20日
新華病院のCT飽和状態に
鐘南山医師がメディアに対し「人から人へ伝染」と発表

■1月22日
湖北省が2級応急対応発動

■1月23日
武漢ロックダウン

■1月24日
湖北省が1級応急対応発動

■1月25日
新華病院耳鼻咽喉科主任死亡

 2019年12月1日から2020年1月23日の都市封鎖まで54日間の政府による操作を「再放送」で振り返ると、その操作がでたらめで邪悪であることが容易に見て取れる。と同時に、李文亮医師ら8人の「情報通報者」が微博の友人グループ内で微弱な警報を鳴らした以外、政府の情報に懸念を抱いたり、懸念について問いを発したりした者が人口の1千万分の一もいなかったとは、私たちは考えもしなかったのではないか。事情を知る者は8人の医師に留まらなかっただろうし、政府の情報は穴だらけだったというのに。これでは次に同じような災難に襲われたらどうなる?

 一つの都市、国家を生命体と捉えるなら、私たちの免疫力はあまりに低下しているのではないか。私たちは何を以て、次なる災難を人災としない予防対策とするのだろうか。

○阿坡(A.PO)/一武漢市民。77日間の武漢都市封鎖(ロックダウン)を経験し、この手記を執筆。「阿坡」は本名ではない。全世界に多大な迷惑と災難をもたらした新型コロナウイルスについて、一人の健全な精神を持つ中国人としてお詫びの気持ちを表すために、英語の「apologize(お詫びする)」から取った。全世界の国々が中国からのお詫びを待ったとしても、それが述べられることはない。だか、この名前を用いて手記でお詫びの気持ちを表したいと考えている。

訳:kukui books

※AERAオンライン限定記事