落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「郵便投票」。



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 アメリカ大統領選はバイデンさんの勝利がほぼ確定のようですが、11月12日付のニュースによると『ジョージア州、500万票、手作業で再集計』なんだそうだ。20日までにやらなきゃいけないんだって。24時間態勢で1時間に2万3千票を集計しないと間に合わないんだって。まじか。今回は全て憶測と妄想です。

 これって選挙管理委員会だけで足りるのかな? 「遠洋のマグロ漁船に乗せられて〜」「気づいたらダム現場の詰め所に放り込まれて〜」的なワケアリたちの力も借りないといかんのではないか? みんなで黙々と開票開票開票。その合間に食事は5分、入浴10分。終えたらすぐに開票開票、また開票。刑務所の封筒貼りのほうが楽しいかもしれん。体操の時間とかあるんだろうか。

 ましてやこの時期、乾燥のせいで紙を触ってると指先が荒れるのです。ジョージア州ってアメリカのどのへん? 砂っぽいよ、埃っぽいよ、常に湿度20%くらいだよ(イメージ)。私、指の皮も剥けやすくて、ささくれになりやすい敏感肌。何万枚もの紙をめくってると指の感覚がなくなってきて、知らないうちに指紋もツルツルになっちゃって、指先が切れてたりして、紙に血が付いて横のおばさんに「あら? 川上さん、血が出てるわよ」とか言われて、「洗ってきます」って席を立つと上役が「そんなにしょっちゅうトイレ行ってたらいつまでたっても大統領なんか決まらんわなぁ〜」とか言ってくるはず。やだなぁ。イヤミが傷に染みるよ。

 何人態勢でやるのかわからないけど、自分とちょうど同じくらいのやる気の人がチームだといいな。妙に気合入ってる人や、やたらに雑な人が同じだとストレスだ。「それ、チェックマークが半分はみ出てるからみんなに判断仰いだほうがいいんじゃないですか?」「いや……これくらいならOKじゃないかな?」「ちょっとでも疑問を感じる人がいるのなら、そこは一旦立ち止まるべきです。我々のプレジデントを決めるのだからっ!」。めんどくせえ。かといって「はーい、この山、だいたいバイデンでーす! 休憩入りまーす」というコネで入ってきたバブル期の新人OLみたいなのも考えものだ。

 コロナだから開票所だって換気が大切。窓を開け放しで開票していて、大風が吹いてきたらどうしよう。「わーっ! 飛んでっちゃったっ!(泣)」「ここに置いてあった3千票、また最初から数え直しかよ」みたいな「ドミノあるある」は勘弁。みんなドンドン無口になっていくしね。

『郵便投票』って到着がかなり遅れる地域もあるらしい。期限はあるだろうけど、そんなに遅れるってどういうことだよ? ことによるとヤギなんじゃないか? ヤギさん郵便? 「シロヤギさんたら開票所に届けずに食べちゃった」みたいな? となると、そのヤギたちの便を採取して、ザルにとって、水でゆすいで、そのなかの未消化の投票用紙の紙片を繋ぎ合わせて、一票一票紡いでいくのか……。

 物凄い地道な作業をされる方に頭が下がる。指の傷口にヤギの便をすすいだ水が入ると大変です。キズパワーパッドを忘れずに、民主主義万歳。

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。YouTube 「春風亭一之輔チャンネル」ぜひご覧ください! アーカイブもいろいろあります

※週刊朝日  2020年12月4日号