ヘンリー王子とメーガンさんの英王室離脱発表から1年以上が経った。3月末に条件見直しが予定されているが、そんななかで目立つのが夫妻の「王室すり寄り」。メーガンさんの第2子妊娠も発表され、夫妻の今後に注目が集まる。AERA 2021年3月1日号から。



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 ヘンリー王子(36)とメーガンさん(39)がイギリス王室離脱を公表してから、1年以上が経った。昨年1月にエリザベス女王(94)が主催した会議により、王室離脱後12カ月間は移行期間とし、期間終了後には諸条件を見直すことになっている。その移行期間が3月末に終了を迎える。

 夫妻は現在、米国カリフォルニア州に暮らしているが、その日が近づくにつれて目立ってきたのが、英王室への「すり寄り」だ。1月9日はキャサリン妃の39歳の誕生日だったが、メーガンさんは妃宛てにカードを添えたプレゼントを贈っている。以前から、メーガンさんはキャサリン妃へのライバル意識が強かった。すべてにおいて「2番手」と位置付けられるのを不公平と捉えていたのだと言われている。暴露本『自由を求めて』は、ヘンリー王子夫妻へのインタビューを元に書かれたとされているが(夫妻は協力を否定)、この中でメーガンさんはキャサリン妃を「冷淡な人」として語っている。ヘンリー王子夫妻が昨年王室離脱を発表した1月8日は、キャサリン妃の誕生日の前日だった。こうした振る舞いが続いただけに、アメリカからわざわざ贈り物を届けたことに対して、いぶかしむ声が上がった。

 一方ヘンリー王子は、アーチー君(1)はエリザベス女王とのオンライン電話が大好きと話す。女王も、ひ孫の愛らしい成長ぶりに笑顔を見せると強調する。さらに兄ウィリアム王子(38)とヘンリー王子は深刻な確執がささやかれていたが、現在は時々電話などで話すと、これまた和解をにおわせる。

 しかしこうした仲良しぶりを出してくるのは、ヘンリー王子夫妻側からばかりで、王室からは夫妻との親密な関係を示唆するニュースは聞こえてこない。昨年11月、メーガンさんが第2子流産を生々しくつづったエッセイがニューヨーク・タイムズに掲載されたが、女王は完全スルーだった。

 ヘンリー王子とメーガンさんが英王室との親しさをアピールするのは、この度の見直しで、サセックス公爵と公爵夫人の称号が剥奪される可能性が出てきたからだ。2人は王室離脱後、カナダのバンクーバーからカリフォルニア州に飛び、現在は同州サンタバーバラの約15億円といわれる豪邸にアーチー君と暮らしている。アメリカの動画配信サービス会社、ネットフリックスとは100億円超えの大型契約を結び、スウェーデンの音楽ストリーミングサービス、スポティファイとは、約40億円の契約をした。ヘンリー王子が母ダイアナさんを亡くした後の精神的ダメージを話した講演料は、少なくとも5千万円といわれている。

 経済的に成功を収めたのだろうが、それはサセックス公爵と公爵夫人のタイトルを存分に使用したことが大きな理由とされる。チャンスが与えられたのは、2人が公爵(夫人)の称号を持つからこそというのが大半の見方だ。イギリス貴族の称号は、途方もない利益を生み出す「打ち出の小づち」なのである。

 その一方で、英王室に後ろ足で砂をかけるような言動も目立つ。王子は、イギリスと旧植民地からなる英連邦の若者を支援する慈善団体主催の会議で、「イギリスは過去の過ちを認めるべきだ」と発言したが、少なくとも英王室の「王子」である人物の言葉ではないとイギリス国民から批判された。また、メーガンさんはアメリカ大統領選挙前に、「今こそ“変化”が必要だ」「ヘイトスピーチを拒否しよう」と力説した。トランプ大統領(当時)ではなく、バイデン候補(当時)への投票を勧めたのだ。この発言に対し、アメリカの下院議員(共和党)が駐米イギリス大使宛てに、抗議の公式書簡を送付。それは、称号剥奪を要求する厳しい内容だった。

 選挙への介入は、政治的ニュートラルを貫く王室のあり方に反する。イギリスの新聞「デイリー・エクスプレス」は、今年1月2日に2人の称号剥奪を問うアンケート調査をし、約2万6千人から回答を得た。その92%にあたる人が「YES(剥奪すべき)」だった。公務をしないで外国に住み、王室の名前を使って荒稼ぎをする2人に対して怒りを覚えるイギリス国民も少なくない。

 英王室は、昨年12月にウィンザー城でシニア・ロイヤルが勢揃いする珍しい機会をもった。エリザベス女王を真ん中に、チャールズ皇太子夫妻、ウィリアム王子夫妻、そしてアン王女が並んだ。目を引いたのは、そこに女王の三男エドワード王子(56)と民間出身のソフィー妃(56)が顔をそろえたことだった。女王の子ども4人のうち、離婚していない唯一のカップルだ。コロナ禍でソフィー妃の、医療従事者に食事を用意する活動は高く評価されていた。女王は週末に一家を訪ね、お茶の時間をもつ。女王は控えめで誠実なソフィー妃がお気に入りだ。

 離脱したヘンリー王子とメーガンさん、未成年買春疑惑で引退した次男アンドルー王子(61)、それに高齢を理由に引退したフィリップ殿下(99)と、このところ立て続けに王室メンバーの数が減少している。公務を担うロイヤルの人手不足が心配されていた。

 エドワード王子夫妻は国民から信頼が寄せられていたから、夫妻をグレードアップして重要な公務を担ってもらうという女王の賢明な“人事”に称賛が集まった。開いた穴はたちどころに埋められたのである。むしろ「やっとソフィー妃の時代が来た」と歓迎する声が上がった。

 コロナの状況次第ではあるが、6月にイギリスでG7サミットが開かれる予定だ。それに先立ち、女王はバイデン米大統領など世界の指導者をバッキンガム宮殿に招待する。キャサリン妃と共にソフィー妃の活躍が今から期待されている。ヘンリー王子とメーガンさんには王室が必要だが、王室は次の手をすでに打ち、公務を滞りなく続行させる準備を着々と整えているのだ。

 そこに飛び込んできたのが、メーガンさんの第2子妊娠のニュースだ。今年のバレンタインデーに発表された白黒写真では、自宅の広大な庭でヘンリー王子の膝に頭をのせて寝そべるメーガンさんのおなかが、ふっくらしている。出産予定日などは明らかにしていないが、性別に関係なく赤ちゃんの王位継承順位は、アーチー君に次ぐ第8位となる。これは王室が称号剥奪を思いとどまる切り札となるだろうか。

 女王にとって、ヘンリー王子はかわいい孫息子には違いない。離脱の際も「愛する家族であることにはなんら変わりがない」と語り掛けた。2人の切望する公爵(夫人)の称号を維持させるのか、国民の声を反映して剥奪に踏み切るのか。4月に95歳を迎える女王の決断に注目が集まる。(ジャーナリスト・多賀幹子)

※AERA 2021年3月1日号