英国の王位継承順位9位の王子が性的虐待疑惑にさらされている。王子は荒唐無稽な弁明に終始。さらにはチャールズ皇太子にも問題が起きた。AERA 2021年9月27日号から。

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 アンドルー王子(61)はエリザベス女王(95)の第3子で次男。王位継承順位は9位だ。1982年のアルゼンチンとのフォークランド紛争では現地に向かい、ヘリコプターパイロットとして活躍した。凱旋時には、女王夫妻がポーツマス港まで出迎えるほどの歓迎ぶりで、王子はたちまち国民的英雄になった。

 しかし、その後の評判は芳しくない。交際した女性は千人を超えるとうわさされ、「ランディ(好色な)・アンディ」とあだ名をつけられた。

■写真は合成だと主張

 それでも86年にはセーラ元妃(61)と結婚、ベアトリス(33)とユージェニー(31)の2人の王女に恵まれた。しかし96年に離婚。英国の貿易・投資の特別代表になると、世界を飛び回ってぜいたくの限りを尽くしているとされた。次のあだ名は「エアマイルズ・アンディ」。カザフスタンの富豪が王子の豪邸を購入した際は、約3億7千万円を売値に上乗せしたとされている。

 未成年女性の性的人身取引を組織するジェフリー・エプスタイン(享年66)を王子に紹介したのは、同被告の元恋人ギレーヌ・マックスウェル(59)だ。彼女は「マダム」として君臨、生活に困窮する少女たちを次々に誘った。声掛けは優しく、「マッサージしてほしい人がいるの。お小遣いも稼げるわよ」だった。彼女は昨年逮捕された。

 被害者の一人ヴァージニア・ジュフリー(旧姓ロバーツ)さん(38)は今年8月、米ニューヨーク州マンハッタンの連邦地方裁判所に民事訴訟を起こした。彼女は17歳だったときに、エプスタインからアンドルー王子との性的関係を強制されたと訴える。エプスタインは、2019年、未成年者への性的虐待容疑で起訴され、裁判開始前に勾留中の施設で自殺したとされる。

 ジュフリーさんは米国の裁判所に提出した書類で、「実際に性交渉した人」としてアンドルー王子の名前を出した。王子はすべて否定していて、彼女のむき出しの腰に手を回した01年撮影の写真は合成で、彼女と会った記憶はないと強調する。19年、王子は疑惑を一掃しようとBBCの番組「ニューズナイト」に登場した。記者の質問に答えたが、あまりの荒唐無稽さに、非難と嘲笑の的になった。

■後悔の言葉はなし

 ジュフリーさんが「王子と共にいた」と話した夜は、王子はピザエクスプレスでのパーティーに娘を送っていったとしたが、裏付ける証人はなかった。二人がダンスをしたとき「王子は汗だくだった」というジュフリーさんの言葉に、「当時アドレナリン治療で汗をかくことはなかった」という王子の反論には医師から疑問が出ている。国民が最悪としたのは、少女たちへの心からの同情、犯罪者との交流への後悔の言葉が王子の口から聞かれなかったことだった。

 米連邦地裁当局は、王子に米国での聴取に出頭するよう呼びかけている。王子は「全面的に協力する」としながら、応じていない。女王が避暑で滞在するスコットランドのバルモラル城にセーラ元妃と逃げ込むありさまだ。裁判文書を受け取っても、提出の仕方に不備があったとして出廷義務はないと王子の弁護士側は主張している。

 さらに、チャールズ皇太子(72)にもスキャンダルが持ち上がった。皇太子の慈善団体に約2億円の寄付をしたサウジアラビアの富豪に見返りとして、英国市民権と勲章を与えるよう取り計らったという。責任を取って皇太子の側近が一時的に解任、皇太子は「認識がなかった」と弁明した。国民は、ロイヤル兄弟の心の弱さと志の低さを嘆く。女王崩御の際には、ウィリアム王子(39)の戴冠を望む声がまた一段と高まりそうだ。(ジャーナリスト・多賀幹子)

※AERA 2021年9月27日号