天鐘(11月18日)休日に日帰りで近隣の市町村を訪ねるようになって、かれこれ20年になる。観光名所の見物も魅力だが、各地の産地直売所巡りも小さな旅のささやかな楽しみだ。農村地帯なら特産の野菜や果物、沿岸部なら魚介類などが並ぶ▼先日、三戸町の産直を訪ねた。食堂で郷土料理「ひっつみ」を味わっていると、高齢の男性客の注文する声が聞こえた。「串餅を10枚」。その客と入れ替わるようにやって来た女性客は「5枚下さい」▼ここの串餅は麦餅にエゴマを使ったジュネみそ、あるいはクルミみそを塗り、炭火で焼く。ジュネの人気が高いらしい。店舗内には農産物の他、きんか餅などの手作りのおやつ類も並んでいた▼産直巡りをしていると、各地で地域に伝わる料理などを提供していることに気付く。七戸町の道の駅しちのへと、むつ市の道の駅かわうち湖は、甘い小豆のあんの団子を澄まし汁に入れた「けいらん」がメニューに載っている▼昔はどの家庭でも作った料理でも、時が流れ、生活様式が変わるにつれ、目にする機会すら減った。だから、懐かしい味を求めて産直へ足を運ぶ人が少なくないのだろう▼産直の側にも悩みはある。作り手の高齢化で、後継者の確保が難しくなっている。若手に作り方を教える講習会を開くグループも多い。そう聞くと、懐かしい料理などに出会ったら、つい注文したくなる。さもないと伝統が絶えてしまう。