天鐘(7月22日)江戸時代、歌舞伎の楽屋でお茶を出す役の下級役者が演じた滑稽な寸劇を「茶番」と言ったそうだ。それが転じて、すぐ発覚するうそを並べ、その場を取り繕うような行為の意味合いでも用いるようになった▼日常用語の中には歌舞伎に由来するものが少なくない。終息を図る「幕引き」は、本来は芝居が終わると幕を閉じることにちなむ。肝心なことは何も言わない「だんまり」は、暗闇の舞台で登場人物が無言で探り合いをすること▼大げさな態度や言動で他人に自信のほどを示す「見えを切る」は、感情の高まりを独特のポーズで表す歌舞伎特有の劇的表現のことだ。他にも「愛想尽かし」など歌舞伎にまつわる言葉が浮かぶ▼稲田朋美防衛相は南スーダン国連平和維持活動部隊の日報について、「隠蔽を了承したことはない」と断言した。森友学園の訴訟に弁護人として出廷していたとの指摘を「全くの虚偽」と否定していたのに、後に「記憶違いだった」と訂正した経緯がある。今度は大丈夫か▼防衛相の指示で実施する特別防衛監察は正念場。制度上、政務三役は調査の対象外だが、政府の方針で対象とされ、きのう異例の聴取が行われた▼監察の調査結果は近く公表される。安易な「幕引き」なら、事実の解明と説明責任を果たすとしてきた大臣の一連の言動は「茶番」に終わる。辞任する考えはないと言うが、当事者能力が問われている。