これほど実写化実現に驚かされる漫画もそうない。劇画タッチの作画とシュールなコメディというアンバランスさで根強い人気を誇る漫画家・野中英次氏による『課長バカ一代』が、連続ドラマとして実写化。BS12トゥエルビで1月12日(午後7:00)よりスタートする。(ひかりTV・dTVチャンネルにて順次配信中)


“課長補佐代理心得”という謎の肩書を持ち、バカなことを大真面目に考える主人公・八神和彦を演じるのは、歌舞伎界のプリンスこと尾上松也。原作にはない変顔を独自に加えて、そんなバカな!?と目を疑いたくなるような衝撃的熱演を披露する。「すべてはここに通ずる道でした…」という松也は一体何に目覚めてしまったのか!?


松也が原作漫画を一読した際に感じたのは「これをドラマ化して30分間どうやって持たせるんだ!?」という疑問。しかし完成イメージが容易に浮かばないからこそ「その難題に挑もうというチャレンジ精神に共鳴しました。一かバチか、もうやるしかないっ!」とオファーを快諾した。


“歌舞伎俳優”という言葉には、伝統を重んじるイメージがある。だが松也いわく「僕はひょうきん系。学校でいうところの、おふざけタイプ」と自己分析。学生時代は「クラスで何かしらのハプニングがあると『松也君たちが〜』みたいに、真っ先に名前を挙げられてしまう代表格でした。面白いと思うことを率先してやってしまう性格で、よく先生のモノマネをして怒られていました」と照れながら振り返る。


それゆえにお笑いポテンシャルは高い。「バカみたいなことをする上で大事なのは100%バカになること。照れや戸惑いがあると面白くはならない。そこは気をつけました。そもそも『課長バカ一代』をやると決めた時点で恥ずかしさや不安を感じていたら、オファーなんて受けません」と凛々しい。

意識したのは原作の持つシュールさを壊すことなく、映像にも還元すること。「八神を時代から取り残された形にしようと思ったので、八神だけオフィスの机にパソコンを置いていません。仕事をしているシーンでも電卓しか触らず、この人は一体何の仕事をしているのか?という謎の部分を作りました」と細部にもこだわった。


原作では登場人物たちが無表情でバカなことをするのが笑いに繋がっている。ドラマ化に際しては、そこに変顔をプラス。しかし松也としては不本意だったようで「無表情で演じようとすると、どうしても笑ってしまう。僕の稚拙な技術ではシュールさを表現しきれず、変顔という顔芸に逃げたんです」と肩を落とす。


「逃げた」と言いながらも、そこはお笑いポテンシャルの高い松也。「ほとんどのシーンでおそらくやりすぎだと言われるようなことをやりました。控えめに演じて後悔するよりもフルスロットルで。変顔もオーバー過ぎるくらいの気持ちでやりました」と全身全霊で笑いに賭けた。

このシュールな作品に役立ったのは、意外なことに本業である歌舞伎俳優としての経験だった。「一度に1,000人以上のお客様を前に表現する舞台上のパフォーマンスで大切なことは、遠くのお客様にも伝わるようにある程度大げさに表現すること。歌舞伎はその最たる演劇の一つです。映像の世界でその表現方法を持ち込むとオーバーリアクションになってしまいますが、今回はそれが成立した。お芝居のイメージとしては舞台表現に近いので、凄くやりやすかったです」と八神との親和性を実感。


最近は映像作品ならではの演技にも慣れてきたという松也だが「歌舞伎に比べると、映像作品では言葉の言い回しや体の動き、表現などを自分の中でセーブしなくてはなりません。それだけにフルスロットルで八神を演じたときに、すべてはここに通ずる道だった…と思わされた」と歌舞伎俳優として磨いた技を遺憾なく発揮した。

ドラマのオープニグシーンは、名作ドラマ『Gメン’75』をパロディ化。まさに何でもあり。それゆえにシーズン2製作の暁には「マーベルヒーローのキャプテン・アメリカならぬ、キャプテン・ジャパンをパロディとしてやりたい」とお気に入りヒーローのパロディ化を熱望する松也は「キャプテン・アメリカは普通の人よりも少しだけ身体能力が高いだけにも関わらず、恥ずかしげもなく周りをグイグイ仕切っていく感じがいい。僕自身も“キャプテン”という地位が好きなので『課長バカ一代 シーズン2』までに本業の歌舞伎で腕を磨いて、キャプテン・ジャパン実現に備えたい」と饒舌に期待している。