今年4月10日に他界した大林宣彦監督は、最後の最後まで“映像の魔術師”だった。2012年の映画『この空の花 長岡花火物語』から遺作となった映画『海辺の映画館−キネマの玉手箱』(7月31日公開)までの計4作品に出演した女優の山崎紘菜が、享年82歳の映画少年との思い出を語る。


「大きくなったね」「身長が伸びたね」「立派な女性になりましたね」。大林監督とは女優デビューしたばかりの16歳の頃からの付き合い。撮影現場で再会するたびに成長を口にしてくれた。「大林監督とは10代のころからのお付き合いですから、まるで娘のように見守ってくれていました。色々な俳優の方から『毎回作品に呼んでもらえるのは羨ましい』と言われることが多くて、それは私の中での誇りでもあります」と大林組の一員としての自負がある。




大林監督にとっては、すでに余命宣告を受けての『海辺の映画館−キネマの玉手箱』の撮影だったが「映画好きの少年のような瞳で常に現場にいらっしゃって、映画に対して純粋なまでの愛情を持たれていました。撮影で疲れたときにふと大林監督を見ると、誰よりも生き生きとしていて若々しい。『死んだら沢山寝るんですから、生きているときは寝なくてもよい』とおっしゃっているくらいお元気でした」と巨匠の衰えぬ力強いエネルギーを目の当たりにした。



完成作品の上映時間は2時間59分と長尺だが、それを感じさせない凄まじいテンションはまさに“大林印”。撮影スタイルも大林イズムに満ち溢れるものだった。「撮影と並行してセリフやシーンが追加されるのはいつものこと。アイデアが閃くと大林監督は現場の隅で自分の台本に書き加えて、私たちはそれをその場で見せてもらって覚えて演じる。湧き出るアイデアにどれだけ食らいつき、イメージ通りのものを体現できるか。試されているようで責任重大。まさに唯一無二の現場です」。作品同様に実験精神あふれる映画作りの場だった。


ミュージカルにアクションにメロドラマに時代劇……本作は、ジャンルを縦横無尽に駆け抜ける。「ミュージカル、方言を使った役、殺陣…。すべて女優として挑戦してみたいと前々から思っていたことで、夢が全部叶いました。まさか1本の作品で叶うとは…」と笑いつつ「大林監督は最後に私の夢をすべて叶えてくれたんです」と故人を悼む。



新型コロナウイルス感染拡大の影響から、当初の予定より公開が遅れた。ステイホーム期間は山崎にとって「人間らしい時間だった」という。「私は仕事が大好きで休日なんていらないタイプ。休みがあったら、次の作品の準備に費やすなど常に仕事を優先に動いていました。でも今回のステイホーム期間は、頭を空っぽにして何も考えなくていい期間にしました。部屋を掃除し、花を飾って、外を散歩するときも自然に目をやったりして」と心に余裕を与えることにした。


真剣に仕事に打ち込む姿勢から「真面目な人」だと周囲からは言われてきた。「ユニークさや個性的なことが強みになる業界にあって、真面目と言われると“堅物”“面白味がない”と言われているようで最初は嫌でした。でもどんな職業でも結局は真面目が勝つ。真面目であることで悪いことは一つもありません。この仕事で成功している方のほとんどは真面目だし、ひたむきに頑張っています。私はその姿が好きだし、私自身もそうありたい」と今では長所と捉えている。

来年でデビュー10年。「厳しい世界だとは思うけれど、諦めずに継続できたことは自信を持ってもいい事ではないかと思っています」とこれまでの道のりを振り返り「継続できているのは大林監督をはじめ、10代の多感な時期から才能のある方々とご一緒できて、素敵な言葉や経験を頂く事ができたから。私はとても幸運なんだと思います」と代えがたい経験の数々を噛みしめている。


流量な英語で掴んだハリウッドデビュー作『モンスターハンター』の公開も控えて、ますます活躍の場を広げていく。真面目な人は努力の人。それが花開かないわけがない。運も才能のうち。大林監督もそれを見抜いて大林組の一員に招いたのだろう。


≪山崎紘菜 プロフィール≫

1994年生まれ、千葉県出身。2011年、第7回「東宝シンデレラ」オーディションで審査員特別賞を受賞。

主な出演作品に、映画「神さまの言うとおり」(14)、「チア☆ダン〜女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話〜」(17)、「花筐」(17)などがある。

2021年、ハリウッドデビュー作「モンスター・ハンター」が公開予定。


ヘアメイク: 室橋 佑紀(ROI)  

スタイリスト:中村 璃乃

文・写真:石井隼人



映画『海辺の映画館−キネマの玉手箱』

公開日:7月31日(金)

監督:大林宣彦

出演:厚木拓郎、細山田隆人、細田善彦、吉田 玲(新人)、成海璃子、山崎紘菜、常盤貴子

製作:︎『海辺の映画館—キネマの玉手箱』製作委員会(吉本興業/TANAKA/バップ/アミューズメントメディア総合学院)

製作協力:︎大林恭子 

エグゼクティブ・プロデューサー:︎奥山和由 

企画プロデューサー:︎鍋島壽夫 

脚本・編集:︎大林宣彦 

脚本:︎内藤忠司/小中和哉

音楽:︎山下康介 

撮影監督・編集・合成:︎三本木久城 

VFX:︎塚元陽大 

美術監督:︎竹内公一 

照明:︎西表燈光 

録音:︎内田 誠 

整音:︎山本逸美

配給:︎アスミック・エース 

製作プロダクション :︎PSC 


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