今秋は、さまざまな環境や年代で、複雑な事情や孤独を抱える女性たちを描いた新作映画が連続して公開される。作品は、いずれも演技派として知られる女優たちを主演に迎えた話題作。彼女たちの熱演によって体現された、今を懸命に生きる女性の姿を描く、今観るべき3作品をご紹介。


空に住む』(10月23日公開)


『EUREKA ユリイカ』などで世界的に知られる名匠・青山真治監督7年ぶりの新作にして、若手実力派筆頭の多部と初タッグを組んだ本作。多部が演じるのは、両親の急死を受け止めきれないまま、叔父夫婦の計らいでタワーマンションの高層階に引っ越すことになった直実。一見すると仕事も人間関係もそつなくこなしているが、実は両親の葬式で涙が出ずに泣けなかったことが心に引っかかっており、日々喪失感を抱え浮遊するように生きるヒロインだ。そんな彼女が、相棒の黒猫ハル、勤め先の出版社の仲間たち、そしてタワーマンションで出会うスター俳優との出会いを通して、自ら歩むべき道を選び前進してく姿を描き出す。多部は直実役を「一言で説明できない性格の持ち主」と称し、感情が表に出ず、泣けないキャラクターに難しさを感じながらも、現場で役をつかんでいったことを明かしている。めまぐるしい毎日の中で感情をすり減らし、「泣きたくても泣けない」リアルな女性の姿をナチュラルに表現した、多部の演技は必見。



朝が来る』(10月23日公開)

カンヌ国際映画祭など世界でも高い評価を受ける河瀨直美監督が、ベストセラー作家・辻村深月の作品を、永作博美主演で映画化した本作。一度は子供を持つことをあきらめた夫婦が、特別養子縁組で迎え入れた息子と幸せな日々を送っていたところ、突如産みの親を名乗る女性から「子供を返してほしい」という電話を受ける。実の子を持てなかった夫婦と、中学生で妊娠し子供を手放すこととなった女性、血のつながりか魂のつながりか─。現代の日本社会が抱える問題を深く掘り下げ、家族とは何かに迫るヒューマンミステリー。女性そして夫婦やパートナーたちにとって非常に重要な選択肢である養子という制度を題材とし、観客に考えることの大切さを提示しながら、最後に希望の光を届ける感動作だ。永作が演じたのは、実の子を持つことがかなわなかった妻の佐都子。突然現れた産みの親の存在に苦悩し疲弊する女性の姿を、全身全霊で演じきった女優魂に圧倒されること間違いなし。

タイトル、拒絶』(11月13日公開)

第32回東京国際映画祭で「日本映画スプラッシュ」部門でワールドプレミア上映を飾り、主演の伊藤沙莉が同映画祭にて東京ジェムストーン賞を受賞した本作。メガホンを取るのは、本作が長編初監督となる山田加奈。デリバリーヘルスを舞台に、若くてモデル体型の女性が入店したことで店の人気嬢が一変し、女性たちの人間関係やそれぞれの人生背景が崩れていく様子が、センセーショナルかつエモーショナルに描かれている。伊藤が演じるのは、かつて体験入店で店を訪れたものの、怖気づいて逃げ出し、セックスワーカーたちの世話係に落ち着いたカノウ。「ワタシの人生なんてクソみたいなもんだと思うんですよね」と無愛想に吐き捨てる姿が印象的なキャラクターで、伊藤が誰にも渡したくなかったと語るほど、意欲的に挑んだ役柄だ。「必死に、もがきながら、なんとか生きているという点では、今こういう時代だからこそ、より多くの方々に観ていただきたい」と伊藤が語るように、力強く生きようとする女性たちの姿に、勇気をもらえる一作となっている。