松本穂香瀬戸利樹がアニメーション映画『君は彼方』(11月27日公開)で初共演を果たした。「どうせ私なんて…」と気持ちに蓋をしてしまっていた主人公が、人生を変えるために自らと向き合っていく姿を描く本作。松本と瀬戸を直撃すると、「主人公に共感ができた」と告白。自身にとっての転機や、変化の年となった2020年に新たに芽生えた想いなどを明かした。

短編「奇魂侍」で注目された瀬名快伸が監督、原作、脚本を務めた本作。池袋を舞台に、主人公・澪(松本)の成長をつづる青春ファンタジー映画だ。努力をすることが苦手で、諦めがちな澪は、幼馴染の新(瀬戸)に想いを寄せながらも、ある日彼とケンカをしてしまう。仲直りをしようと雨の中を新のもとへと向かう澪だが、その途中で交通事故に遭い、不思議な世界へと迷い込んでしまう…。


■お互いの印象は?「瀬戸さんは天然なところがある(笑)」「松本さんは不思議な方」


劇場アニメで初主演を飾った松本。そして今回が声優に初挑戦となった瀬戸。オファーを受けた心境とはいかがなものだっただろうか。


松本は「すごくうれしかったです」とニッコリ。「瀬名監督が『こういう作品にしたい』『松本さんの声が必要』といった想いを、ものすごい熱と共に伝えてくださいました。まず、それがとてもうれしかったです。やってみても楽しかったですし、映画自体、ファンタジーの要素もありながら、後半は人間の本質に迫る内容でもあって、いろいろな角度から楽しめる映画になっていると思います」と充実の表情を見せる。


一方の瀬戸は、「いつか声優業に挑戦できたらいいなと思っていました。まさかこんなに早くその想いがかなうとは思っていなかったので、とてもうれしかったです」と目尻を下げ、「初挑戦でしたので、収録の前には瀬名監督に個人レッスンをしていただきました」と述懐。「日常の出来事からファンタジーの世界が広がっていく。後半は、『さらにその先があるのか!』と思うような目まぐるしい展開が待ち受けていて、どの瞬間も見逃せないものになっています」と語る。

劇中では、初共演となった松本と瀬戸が幼馴染役として息のあった掛け合いを見せている。アフレコ前には瀬名監督の指示で、デートシーンの即興演技=エチュードを実施。このエチュードを通して、グッと距離が縮まったのだとか。

松本は「見た目がキリッとされているので、もしかしたらイケイケ系の方なのかなと思っていたんです」と微笑み、「お話してみると、少し抜けているというか、天然なところがあって。人見知りな私でもすぐに仲良くなれました」と瀬戸の印象を吐露。「ちょっと“ワンコ的”というか(笑)、瀬戸さんからはいつも一生懸命さを感じるので、その一生懸命で素直なところが、新としてのお芝居にも映し出されていると思います」と語る。


瀬戸は「ワンコ!」と笑い、「松本さんはクールな方なのかなと思っていたんです」とコメント。「実際にお会いしてみると、とてもサッパリしていて、不思議でどこかつかめないような雰囲気もある方だなと。関西ご出身の方なので、面白いことも言われたりするんです(笑)。声がとてもすてきで、隣で聞いていてもとても心地よかったですし、澪が危機にさらされていく過程のお芝居は本当にすばらしかったです」と惚れ惚れとしていた。

■努力が喜びに変わった瞬間…転機を告白


澪は諦めがちで、努力が苦手な女の子。誰もがどこか思い当たるところがあるようなヒロインだが、松本も瀬戸も「共感できた」と話す。

松本は「特に学生時代は、澪に近い部分があった」という。「高校生になって演劇部に入るまでは、バイトもすぐに辞めてしまったりと、何事も続かないタイプで。自分ってダメな人間だなと思うこともありました。今考えると、やりたいものや、向き合えるものなど、なにかに出会う途中段階だったんだなという気がしています」と明かしつつ、自身の転機についてこう続けた。


「演劇部では、大会にも出場したりしました。それに向けて頑張った時期は、自分の中で無駄ではなかったなと思っています。それまではなにかに打ち込んだと思えることがなかったので、そういった経験を高校時代にできたことが、私にとってとても大きなことだったと思います」。

瀬戸は「僕も新しいことに挑戦するのが苦手だった。そういったことから目を背けてしまっていたのかもしれません」と打ち明ける。「そんな僕が少し変わることができたかなと思うのは、中学生の時野球部の部長を経験したことです。誰かの上に立つということ自体、とても苦手だったんですが、その当時は“変わりたい”“チームを引っ張っていきたい”と必死になって、努力しました。その経験は今でも役に立っていると思います。例えば、主演として真ん中に立つ人の苦労がわかったり、そういったときに自分が少しでも助けになれたらいいなと思ったり…。毎回そういった思いで、作品に参加しています」。

■コロナ禍で考えたこと、芽生えた想い


新型コロナウイルスの影響で、誰もが働き方や生き方に変化を求められた2020年。2人にとって、今年はどんな1年になっただろうか。

「自粛期間に映画をたくさん観た」という松本は、「いち観客として映画を楽しんだときに、作品の受け取り方や感想は、観る人によって違うものなんだと改めて思いました。お芝居はこういうもの、映画とはこういうものだと固く考えていたものが、いい意味で、少し楽になったような気がしています」としみじみ。「観る人の気持ちを少しでも豊かにすることができる作品に出られたらうれしい」と心を込めつつ、「自粛中に観た『パターソン』という映画が、とても好きだなと思って。これから何度も観ることになる映画だなと思っています」とお気に入りも増えた。


さらに「今年は、大好きなジャルジャルさんがキング・オブ・コントで優勝して。福徳(秀介)さんが泣いているのを見て、私も泣いてしまいました」と照れ笑い。「いちファンだった私が、今年はジャルジャルさんのyoutubeチャンネルでご一緒させていただいたり、私のラジオに来ていただいたりと、いろいろなつながりを持つことができました。“好き”という気持ちを発信して、よかったなと思っています」と喜びを口にしていた。

「自粛期間にはゲームをしたり、映画を観たり、料理をしていました」というのが瀬戸。「自粛明けには、ドラマを撮影することになっていました。2か月もお芝居をしていない状態でしたので、しっかりとお芝居の感覚が戻るのかと、自粛期間は不安な思いもありました。自粛明けには、初心に戻って、新しい気分で撮影に臨めた気がしています。後ろ向きになってばかりではなく、いろいろなことをプラスに、前向きに考えることも大事だなと思いました」と表情を引き締める。また「今年は女性と一対一で対峙する役柄も増え、『もっと大人にならないとな…』と実感した年でもありました」と苦笑い。「新しいことに挑戦できた年で、来年に向けて、しっかりと自分の内面を成長させたいなと思っています」と意気込んでいた。


『君は彼方』は11月27日より公開。

取材・文:成田おり枝

カメラ:友野雄(Yu Tomono)