12月4日(金)より映画『サイレント・トーキョー』が公開中だ。原作は、『アンフェア』シリーズの作家・秦建日子氏が、ジョン・レノンの名曲「Happy X-mas (War Is Over)」にインスパイアされて執筆した小説『サイレント・トーキョー And so this is Xmas』。それを『SP』シリーズの波多野貴文監督が99分のノンストップサスペンスとして映画化した。クリスマスの東京を突如襲った連続爆破テロ事件に揺れる、国家と翻弄される人々の姿を追う。



本作は佐藤浩市石田ゆり子西島秀俊中村倫也広瀬アリス井之脇海勝地涼らオールスターキャストが顔を揃える。原作者の秦氏も「これだけの素晴らしく隙のない布陣をよくも集めたなと。まさに原作者冥利に尽きる」と破顔。とはいえ秦氏への原作小説に対する思い入れは強い。かつて自身で舞台化もしたほどだ。その思いに「まさに、怖いの一言」と恐縮する波多野監督をよそに、秦氏は「娘を嫁にやる気持ちではありますが、新居にお邪魔するのも悪いのでどんな風に暮らしているのかと思いながらも、こちらからは連絡しないようにするという感覚。新婚旅行についていくわけにはいきませんからね」と完全に下駄を預けている。



秦氏は脚本家や映画監督としての顔も持っている。ゆえに「原作者が製作に関してああだこうだと言うと、現場のモチベーションは下がる。僕自身も脚本家として参加した時は、原作者に対して『預けた以上は任せてくれ』と思うし、そもそも任せられないと思うなら原作を預けるなと思う。現場のテンションを下げることだけはしたくはないし、納得の上で嫁に出していますから」と十分な理解がある。


秦氏は「完成作を見たときは、感慨深いものはやはりありました。小説は小説。映画は映画。先ほどの親子にたとえると、親離れ子離れがきちんと出来たという感じでしょうか」とのこと。そして「この映画が撮影され、完成するまでの間に新型コロナウイルスが流行。人と人との距離は引き離され、エンタメ業界も大打撃を受けました。この作品には沢山の人が関わり、渋谷のシーンは大勢の人たちがひしめき合っています。それが今このタイミングで公開になるということにも、感慨深いものがあります」とシミジミする。




笑顔と歓楽が満ちる東京・渋谷のハチ公前での聖夜の爆破テロ。その落差はショッキングだ。撮影にあたっては栃木県足利市にスクランブル交差点をそのまま丸々クリエイト。実際の渋谷で撮影されたのでは?と思うほど細部に渡ってリアル。さらに一人一人の人間の死の重みを伝えるために、爆発の瞬間と熱波が巻き起こす阿鼻叫喚をスローモーションで捉えた。


波多野監督は「爆破の一瞬をこれだけの時間を割いて表現した作品はないでしょう。求めたのは静寂と衝撃です。普段は時間をいじるのが嫌いで、スローで見せることはしないのですが、今回は爆破の衝撃と没入感が欲しくて」とこだわりあり。ハチ公前の爆破場面に秦氏は「本当にこれ撮れるの?という不安はありました」と本音を打ち明けるも「実際に映像を観て驚いた。爆発した瞬間で描写は終わるのかと思いきや、その余波を延々とスローで見せる。大勢のエキストラの方々の演技も素晴らしく、全員で作品を共有している一体感があった」と想像を超えるビジュアルに手応えを得ている。



実のところ「爆発」は波多野監督の十八番である。過去作でも爆破シーンを何度も扱っている。ヒューマンドラマ的前作『オズランド 笑顔の魔法おしえます。』でも爆発物騒ぎがストーリーに盛り込まれているくらいだ。「本当に撮れるの?という言葉に僕は燃えるタイプ」とニヤリとする波多野監督は「渋谷が舞台のここまでの大規模な爆発は、あと10年は出てこないでしょう。そんなチャンスをいただけた僕はラッキーです」と胸を張って爆発シーンを見どころに挙げている。



文・写真:石井隼人




映画『サイレント・トーキョー』

公開日:2020年12月4日(金)

原作:秦建日子「サイレント・トーキョー And so this is Xmas」(河出文庫刊)

監督:波多野貴文  脚本:山浦雅大

【出演】 佐藤浩市 石田ゆり子 西島秀俊 / 中村倫也 広瀬アリス 井之脇海 勝地涼 ほか

公式HP:silent-tokyo.com

公式Twitter:@SilentTokyo2020

公式Instagram:@silent_tokyo2020