「あなたは私で私はあなたです」

“愛”のラストメッセージに涙が止まらない。


正義感は強いが、慌てん坊で空回りの刑事・望月彩子(綾瀬はるか)と、頭脳明晰だが連続殺人容疑をかけられる経営者・日高陽斗 (高橋一生)の魂が入れ替わってしまう『天国と地獄〜サイコな2人〜』。ヒットメーカー森下佳子氏が脚本を手掛ける伏線だらけの展開に、回を追うごとにぐいぐい引き込まれ、気付けば最終回を迎えていた。

 

思えば初回のレビュー記事では…

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序盤から彩子も、日高もキャラクター付けが非常に明確だ。

善:正義、正論の彩子

悪:サイコパス感満載の日高


善が悪を打ち負かす、痛快な刑事ドラマ。視聴者を魅了するには必要不可欠なピースが全揃いだ。

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と綴っていたが、森下氏が最後にみせてくれたのは、善が悪を打ち負かす、そんな分かりやすい痛快な刑事ドラマなどではなかった。


一人の女を守ろうとするために嘘をつき罪を被ろうとする日高。

ぬれぎぬを着るさまを見てみぬふりは絶対できない彩子。

真実に蓋をせず“丸裸”にすることが正義と貫く河原(北村一輝)。

大事に思っているからこそ、その人の前から黙って立ち去る陸(柄本佑)。

綾瀬はるかと高橋一生という実力派の2人が入れ替わる圧巻の演技に加え、SNSでもさまざま考察が飛び交うほど、先の見えない精巧なストーリーに盛り上がりをみせた本作だが、何よりも心に残ったのは一人一人が自分の持っている“正義”を貫く上でみせた“愛”の本質だった。


そしてそれを語る上ではずせないのが、やはり高橋一生という存在だろう。

本作を通して彼の芝居をずっと追ってきたが(過去レビュー記事参照、ページ最後リンクあり)、改めて感じたのは高橋一生という役者はまるで変幻自在の「器」のよう、だということ。

許容範囲が大きいというか、底の知れない、何にでも変容できる…もちろん魂が入れ替わるという2役を演じていた部分もあるが、特に驚かされたのは後半、元に戻ったあとの受けの芝居だ。


その最たるシーンがやはり取調室だろう。

一つは河原と、そして二つ目はもちろん彩子との対峙だ。


〜トリガー①〜

「1982年9月13日。東朔也は福岡県で生まれた。双子であったが父母の離婚により東朔也は父方へ引き取られた…」

東朔也について調べ上げられた経歴が(幅さんの有能さに感服)河原によってつらつらと述べられる。


「サイコパスのお前はお兄ちゃんにその死をプレゼントして回った?」


「はい」

「あまりにも兄が惨めでかわいそうだったんで」

「じゃあなぜまた奪う?」

「やってることは人殺しだ。汚えしゃがれた聞くに堪えない声だ」

「でも!それでも!」

「声は声だ」

「お前にその声を奪う正義はあるのか?」


「たかが女一人のために」

「ありますね」

「あの人を守ることは私を守ることですから。自分を守るのに理由なんていらない」


〜トリガー②〜

朔也が残したSDカードの映像を彩子から見せられる。

朔也が犯した殺人の自供だった。


「改めて確認します」

「田所仁志さん、四方忠良さん、久米幸彦さん、この3名を殺したのは東朔也ですね」

「いいえ私です」

それでも認めようとしない日高。

「私は10歳の時、警察官になろうと決心しました」

「学校でぬれぎぬを着せられたからです。その私が誰かがぬれぎぬを着ていくのを見過ごしていいと思う?」

「もしこれを見て見ぬふりをしたら、その瞬間私は私の正義をなくす」

「もう警察官をやるべきではないと自分で自分に引導を渡すことになる」

「警察官は続けられない。同じなのよ」

「どっちだってやめることになる。したでしょ?この話」

「頭いいくせにどうしてそんなことも分かんないかなあ」

「あなたは私だったくせにどうしてよ?」

「私に私の正義を守らせて」

「私を守りたいと思うならあなたは私のために本当のことを言うべきでしょう!」

「日高陽斗、やったのはあなたじゃありませんね?」

「違うわね?」


「っ…はい」

両シーンとも、高橋はほとんど言葉を発さない。

それでも目は彼を追ってしまう。河原や彩子の熱気や気迫の波が、高橋の“受け皿”——見事に変化していく“感情”の揺れを介して、私たちに押し寄せ胸に突き刺さる。相手との対峙で生み出されるその変化に、彼の懐の深さ、『愛』を感じる。


『るろうに剣心』で共演している佐藤健は高橋の芝居について「映った瞬間にキャラクターに説得力を出すことはとても難しい。僕にはとてもできないお芝居を一生さんが見せてくれました」と手放しで賛辞を送っている。


そう、だからこそ、胸が締め付けられながらも、なんてぜいたくなものを目の当たりにしているのだろう、と思ってしまう。


いつも誰かのために生きていた日高。

相手を生かす高橋の受けの芝居。


「あなたは私で私はあなたです」

彩子と日高の関係性だが、高橋と日高に自然とだぶる。


「まあ“好きです”ってことじゃな〜い〜?」

全ては『愛』だ(新田さん良いこという)。

相手を受け入れ、生かすこそ『愛』、本作を通して高橋一生と日高からそう言われている気がした。


「日高、泣けてよかったなって心から思った。そして、日高と2人で一つの彩子が一緒に泣くのがすごくよかった。やっぱりこの2人のお芝居ずっと見てたい…最高の3ヶ月だった」「取り調べの一連のシーン、一生さんの表情変化本当に細かい!個人的にここが一番すごいだと思う 兄さんのことが持ち出され、涙が流れだそうな時、「一人の女のために」を聴いて、ふっと自分の本心を思い出した。自分がなぜ罪をかぶるかを。目に光が戻って、強い意志が輝いてる」視聴者みなこの3カ月間、彼の深い愛に浸っていた。


もちろん、どのシーン、どの登場人物を切りとってもそれぞれの“愛”にあふれていた『天国と地獄』。ここでは書きつくせないその想いに心を寄せながら(paraviスペシャル版配信を楽しみにしつつ…配信されたら、きっとまた沼落ち確定だ)


「また入れ替わっちゃっても困るしね」

「おっしゃるとおりです」


またどこかでお会いできますように…。

「さようなら」

日曜劇場『天国と地獄  〜サイコな2人〜』

Paraviにて全話配信中 

TVerでは、スペシャル副音声付き限定配信も


(C)TBS