店の準備をする青山(中村倫也)、丁寧に淹れられる珈琲。急に挟まれる金髪姿の青山。やさぐれたような表情で、顔には血。手には湯気が立つコーヒー。

小沢健二のオープニングテーマ『エル・フエゴ(ザ・炎)』が、穏やかな景色もダークな空気も優しく包み込んでいた。


中村倫也が主演を務めるドラマ『珈琲いかがでしょう』(テレビ東京系、毎週月曜よる11:06〜)は、先週までで第4話を終え、全8話のちょうど半分。優しくもほろ苦い人情珈琲群像劇は、第5話から後半に突入する。中村倫也が「結構ダークな方にいく」、ぺい役の磯村勇斗が「ハードなシーンだらけ」と語っていた後半。第4話のラストには、ずっと青山を追っていたぺいが青山の前に現れ「ばぁ〜」。青山の過去が徐々に明らかになってきた。「このドラマ、振り幅えぐい」そんな声も上がっている本作の魅力を、第4話を振り返りながら探ってみたい。



第4話の1杯目『ガソリン珈琲』。

「いらっしゃいませ、淹れたての珈琲いかがですか?」
青山(中村倫也)の微笑みに、「おまえ、その笑顔だいぶ気持ち悪いぞ」と言ったのはゴンザ(一ノ瀬ワタル)。「あの青山が珈琲屋だなんてな」。

「ハッ、それはお互い様だろ」
過去を知るゴンザに話し始めた青山の口調は、見かけはいつもの珈琲屋だが、一瞬でガラの悪さをのぞかせる。ゴンザの話を聞きながらうかべる表情もまるで違う。第3話でアケミを助けたときに出たこわ〜いお顔に通ずるものが。「本当に売っとくもんだなぁ、恩って」とゴンザを見るワルイ顔にゾクッとする。


感情を爆発させるシーンでもないちょっとした導入部の会話だが、青山のダークな部分がのぞき、実は見応えがある。もともと原作ファンから「青山が中村倫也にしか見えない」と待望された役で、視聴者から「緻密すぎる表情筋のコントロール、一体どうなってんだ」「演技力、ハンパない」という声が上がる中村の演技力は、実写の魅力を存分に感じさせてくれる。


毎話登場するゲストも見事にハマり、一杯ごとに印象深く残る。『ガソリン珈琲』では、野間口徹がメガネなしの姿で登場。

青山の珈琲を飲みながら「すっごくかわいいんだ。僕なんかにはもったいないくらい」と菊川(野間口徹)が話すのは病気の妻のこと。そんな妻が毎朝淹れてくれる珈琲はマズかった。でも嬉しかった。家で妻の世話をしながら優しく語り掛ける姿が映されていたが、妻は1年前に亡くなっていた…。儚くて、壊れそうで、やさしい。妻が亡くなっていることは、なんとなく気付いていた視聴者もいたと思うが、それでも野間口の演技に「思わず泣いてしまった」「もっと観てたかった」「やっぱりすごい俳優さん」と心に届く名演を見せた。


青山の珈琲は、菊川(野間口徹)が一歩前へ進むきっかけになっていた。妻のために大好きな珈琲を絶っていた菊川に妻(幻影)が「また今日珈琲飲めたじゃない?」と言った。受け入れたくない現実。それでも、最後にはもう一度青山の珈琲を味わう菊川の姿があった。


「もしもし、母さん?オレオレオレ」。オレオレ詐欺の練習をするヤクザ。そこに入ってくる、ぺい(磯村勇斗)。いきなりバイオレンスな香りがする2杯目『ファッション珈琲』。

「例のブツです、姉さん」
「誰にも見られなかっただろうねぇ」

ヤクザのくだりと同じBGMで暗がりのなか怪しい会話をするのは青山(中村倫也)とモタエ(光浦靖子)。「やだわ〜青山くん変な事させないでよ〜」「モタエさんノリいいですねぇ〜」。カーテンを開ければ、平和な世界。遊び心いっぱいに、一気にダークから癒しへ。モタエが淹れる幻の珈琲豆をドリップする様子を背伸びしながら覗く青山。「猫の糞万歳ですね〜」と並んで珈琲をすする二人。絵になるカフェの店内と絵にかいたように癒される二人。この作品、映像からもこだわりと癒しが存分に感じられる。


モタエが、開いている珈琲教室で感じていた生徒との違和感。

「珈琲なんてそっちのけで、この珈琲教室に通ってるってことで箔をつけたいだけなのよ」。「私なんて珈琲が好きな一ババァなのよ。ちゃんと見て」「甘噛みして生活を彩らないで」「勝手なイメージでアクセサリーに仕立てないで」。生徒たちのなかで、唯一ちゃんと珈琲を味わって飲んでいた垣根が抱いていた想いは…


「箔ですか。どこの世界でもあるんですねぇ、そういうの…」青山が物憂げにつぶやいて映されるのは、ヤクザにボコボコにされる金髪姿の青山。促されて「なんでだよぉ!!」と青山を殴るぺい。これまで各話ほんのわずかの登場シーンで強烈なインパクトを与えてきた磯村勇斗の演技力が光る“ぺい”。その目には涙。青山が意識朦朧としながらつぶやいたのは…


「美味しい珈琲を淹れたい。それだけです。」


垣根(夏帆)とモタエ、そして青山の想いは同じ。ものすごい振り幅で展開するストーリーの中心はやはり珈琲なのだ。その振り幅を一つの作品の中で魅力的に見せる役者の名演とこだわってつくられたドラマの深みに、毎話唸ってしまう。



鉢合わせしてしまった青山とぺいと垣根。

予告映像にはナイフを持ったぺいの姿やたこ(光石研)の姿、「珈琲に出会えたとき、世界が変わった気がしました」という青山のセリフも。隠された青山の過去がさらに明らかになりそうだ。




「ほるもん珈琲」


ぺい(磯村勇斗)が目の前に現れ、ワゴン車の中で青ざめる青山一(中村倫也)。しかもカフェで再会した垣根志麻(夏帆)が、車まで青山を追いかけて来てしまう。青山の元仕事仲間だと自己紹介したぺいは、「静かなところで3人で話そう」と提案する。だがぺいの目的は青山を花菱(渡辺大)のもとへ連れていくこと。垣根を巻き込みたくない青山だが、垣根は保険だと逃がそうとしない。

青山の運転で移動中、垣根から青山の前職について尋ねられたぺいは、「強いて言えば清掃業」と答える。そして血や泥にまみれながら“清掃業”をしていた当時について語り出す。


「初恋珈琲」

ある理由でぺいは花菱(渡辺大)らから殴る蹴るの暴行を受けることに。自分の真っ赤な血を見ながら、小学校時代の初恋の相手が背負っていた、真っ赤なランドセルを思い出す。少年時代のぺい(込江大牙)が恋心を抱いたのは、席替えで隣同士になったひとみだ。家が貧しく父親に暴力を振るわれ、早くも人生に絶望していたぺいにとって、ひとみは天使だった。そんな折、ひょんなことから、ひとみの家で手作りの珈琲ゼリーをごちそうになる。苦くて甘くて冷たくて…それはぺいにとって初恋の味だった――。

一方青山は、垣根に珈琲にハマるきっかけになった、ホームレスのたこ(光石研)との出会いを打ち明ける。




■『珈琲いかがでしょう』
第5話 5月3日(月・祝) 23:06〜23:55

©「珈琲いかがでしょう」製作委員会