いやいやいやいや、展開が早。恋の三角関係が始まったと思いきや、たった1話で一気に進展した『SUPER RICH』第6話。



※以下第6話、一部ネタバレあり

3人の同居生活が始まり、ここから複雑な恋愛模様が繰り広げられるのかなと正座で待機していたら、あっという間に空(町田啓太)が撤退。衛(江口のりこ)と優(赤楚衛二)も想いが通じ合うことに。まさかこんなに早く恋の相関図に決着がつくとは思わなかった…。


なぜ衛は優に気持ちを伝えたのだろうか。思うに、優との出会いは、衛が「人から愛される自分」を受け入れるためのリハビリだった。衛は「お金はあるけれど愛に飢えた人生」を過ごしてきたという設定だが、社員に対する面倒見の良さからもわかる通り、与える愛に関してはちゃんと持っていた。衛が知らなかったのは、「愛されること」。


その原因が、祖母・多恵子(赤座美代子)だった。母をいびり、両親の死後は父の死を衛のせいだと罵り、いじめ続けてきた。そんな祖母と幼少期を過ごしてきた衛は、人格形成において必要な「愛されること」がじゅうぶんではなかった。だから、今でも人から愛される自分にうまく慣れることができていない。


一途に愛情を表現してくれる優にも、どう返していいかわからなかった。今までずっと衛はひとりで生きてきたし、どんなピンチもひとりで切り抜けてきた。でも、祖母の葬儀をひとりで取り仕切っている衛を見て、優は言う。


「こういうときにひとりなのが大したことだって言ってるんです」


この言葉が、突き刺さった。贅沢し放題の人生を生きて、だけど最後には葬儀に誰ひとり参列する者もおらず、ひとりでこの世を去った祖母。自分も、そういうふうに死んでいくのかもしれない。でも、それでいいとさえ思っていたから、そんなふうに言ってくれる優の言葉がうれしかった。


今回は、江口のりこのうまさが光る回でもあった。基本的にぶっきらぼうで表情に乏しく見える衛だけど、その中で繊細に気持ちを表現している。今回で言えば、衛に謝ってくださいと大河(田山涼成)に迫る優を見つめるシーン。その表情に、あたたかいものが湧き上がっているのがはっきりと感じられて、そのあとに続く告白シーンに説得力を持たせていた。それでいて、優にプロポーズをされて、「そう来たか」と頭を抱えるリアクションはまったく恋愛ドラマのヒロインっぽくなくて、江口のりこらしい味が出ている。

次回は優が衛にほっぺにチュウとかしてたけど、いきなりラブラブすぎじゃない!?あの白無垢は、完全に『ロングバケーション』のオマージュだろう。なぜ衛は白無垢姿で街を走り回っていたのか。今回のさらに上を行く急展開が待っていそうだ。


そんな幸せいっぱいな2人とは対照的に、大人のせつなさをたっぷり見せてくれたのが、町田啓太だ。衛と優の間に立ち入れないものを感じた空は、自ら身を引くことを決めた。自分が抱きしめたときは、衛はすぐに離れようとした。でも、優に抱きしめられたときはそのまま受け入れていた。「痛いの痛いの飛んでけ」とおまじないを唱える優に、心がほどけたみたいに笑っていた。


それを見て、わかったのだろう。優を見ている視線と、自分を見ている視線は、違うことを。その痛みを抱えたまま、空は言う。


「それでも、目指していいですか。衛さんのそばで、いちばん衛さんの役に立つ人間を目指していいですか」


町田啓太の瞳は、まっすぐだ。だから、気持ちがまっすぐに届く。なんだか自分が言われているみたいに、胸が引き裂かれる。その声は低くて、穏やかで、こんなときでも理知的に振る舞おうとしている空がいとおしい。でも、一度だけ、「きっと俺にしかできないことがあるって、そう思いたいんです」と言うときだけ、少しひっくり返ったように揺れる。そこに、誠実さでコーティングした空の綻びが見えて、つい空に感情移入してしまう。


空というポジションに町田啓太を配したことで、このドラマ全体がぎゅっと引き締まった。そう感じさせてくれる良質なシーンだった。


一途に愛してくれるのは、優も空も同じ。でも、じゃあどうして優の気持ちは届いて、空の気持ちは届かなかったのか。いろいろ理由はあるだろうけれど、きっと空の前では社長である自分から離れられなかったのだろう。それは、同志として働いた時間が長すぎたからかもしれないし、自殺しようとしている空を救ったときから、衛にとって空は「与える愛」の対象だったからかもしれない。

一方、優の前ではただのひとりの人間になれた。軽口を叩き合えるのも、おにぎりが喉につまってむせる姿を見て思わず笑ってしまうのも、優だから。武装しがちな衛にとって、無防備な優が心地よかった。だから、好きになった。衛と優にはどうかこのままハッピーエンドを迎えてほしい。そして、そう願う気持ちと同じくらい、空にも報われる日が来ると信じたい。


オセロで角をとったみたいに、一気に展開がひっくり返った第6話。と言いつつ、最大の見どころはやっぱり優と空がデスクで一緒に寝落ちしているところだったりするのが正直な気持ち…。2人が机に突っ伏して眠っている場面写真があったらぜひ公式はSNSにアップしてほしい。こちとら家宝にしますんで。



文:横川良明


【第7話あらすじ】

氷河衛(江口のりこ)は春野優(赤楚衛二)からプロポーズされた。だが、優は自分が宮村空(町田啓太)に借金を返済するまで待って欲しいと頼む。仲良さげな衛と優の会話を偶然聞いてしまった今吉零子(中村ゆり)は衝撃を受ける。


一方、『スリースターブックス』は森ノ宮大吾(矢野聖人)が新たに設立した『フォレストモバイル』とのコラボ企画が正式に決定し、銀行からの融資も受けられるほど順調となっていた。さらに、田中リリカ(志田未来)や東海林達也(矢本悠馬)たちは旧『スリースターブックス』のオフィスビルに入っている『フォレストモバイル』に移転計画があることを知り、自分たちが元のオフィスに戻れるかもしれないと希望を持つ。そんな中、リリカは鮫島彩(菅野莉央)の様子がおかしいことに気付き…。



■木曜劇場『SUPER RICH』
毎週木曜よる10時放送
出演者:
江口のりこ、赤楚衛二、町田啓太、菅野莉央、板垣瑞生、嘉島 陸、野々村はなの、茅島みずき、矢本悠馬、志田未来、中村ゆり、戸次重幸、美保純、古田新太、松嶋菜々子
主題歌:『ベテルギウス』優里(ソニー・ミュージックレーベルズ)

(C)フジテレビ