「自分の正義は、自分で決めてよ」


きっとあの羽生(綾野剛)の言葉が、すべてだろう。第2部へ突入した『アバランチ』。第6話は“戦争”へとなだれ込むその直前、火薬庫に爆薬が着々と積み込まれていくのを眺めているような回だった。


※以下第6話、一部ネタバレあり

“戦争”は、正義と悪によって行われるのではない。正義と、また別の正義によって起きるもの、というのは昔からよく言われる話。どんなものも立場が変われば見方が変わる。正義などはその最たるものだ。


「立場が違えば、正義は変わる」


西城(福士蒼汰)に問われた父・尚也(飯田基祐)はそう答える。刑事部長である父は、西城にとって正義そのものだった。偉大な父の後を追い、自らも刑事の道を歩み、不正を働いた上司を殴ったのも、父ならそうすると思ったからだ。

そんな父が、戸倉(手塚とおる)とつながっていた。それは、西城にとって自らの正義が根底から覆された瞬間だった。はたして正義とは何か。西城は、ずっと揺れ続けていた。


思えば『アバランチ』というドラマ自体、正義とは何かを視聴者に問い続けてきたように思う。彼らの「悪を動画で晒しものにする」という手法が、その好例。これだけインターネット上での暴走が社会問題化する中で、いかに悪を裁くためとはいえ、ともするとネットリンチを肯定的に描く姿勢に、疑問や違和感を持つ人も少なくなかった。

が、それもやはり確信的だったのだろう。自分の正義は、自分で決めてよ。『アバランチ』はそう視聴者に迫り続けていたのだ、これまでずっと。


「匿名じゃ伝わんねえこともあるんだよ」


戸倉との正面対決を決めた羽生は、そう言った。これも匿名による誹謗中傷が目立つ昨今の社会に対して投げかけた言葉でもあるはずだ。自分の顔と名前を世に出して初めて伝わるものがある。羽生は、戸倉に何を伝えるつもりなのか。

ただ、次回予告を見る限り、予想だにしない展開が羽生を待ち受けているようだ。SNSアカウントをのっとるようにして現れた、匿名のマスクで顔を隠した偽の「アバランチ」。彼らが仕掛けたテロ予告。やはり大山(渡部篤郎)の手によって「アバランチ」は危険なテロ集団に仕立て上げられるらしい。羽生が指名手配され、ネット上の風向きが一変する場面も今回の冒頭に挿し込まれていた。やはり「雪崩」に巻き込まれるのは「アバランチ」の方なのか。


現実社会でも、政府による情報操作が行われているという言説は今や公然の事実のように話されている。一方で、荒唐無稽な危険思想は「陰謀論」と一笑に付される。では、両者の境目はどこなのか。結局は、当人たちが決めていくしかないだろう。己の正義というまなこで見極めていくしかない。その準備はできているか。あなたは何を信じ、何を選ぶのか。


賛否が分かれたネットリンチ的な制裁方法も含めて、『アバランチ』は問いかける。「あとの判断は、この動画を観ているすべての人間に委ねる」と。


まさに作品のメッセージ性を決定づけた第6話で支柱を担ったのが、西城演じる福士蒼汰だった。もともとこの物語は西城が「アバランチ」に巻き込まれるところから始まっている。つまり、西城は視聴者と同じ視点に立つ者として配置されていた。そして、何も知らなかった青年がこの社会の闇を知り、現実を受け止めながら、人間的に大きく成長していくというプロセスは、物語の主人公として極めて王道だ。西城という役は作品内では脇役だが、ある意味、主人公的要素が必要なキャラクターと言える。

こうした役が気持ちよくハマるのは、これまで数々の作品で主人公を演じてきた福士蒼汰ならでは。俳優デビューから10年。ブレイク期の印象からどうしても恋愛モノのイメージが強いが、近年は『ザ・ファブル』や『DIVER-特殊潜入班-』のように意欲的に役の幅を広げてきた。


そうした活動を経て、原点回帰のような今回の青臭い坊ちゃん刑事は、福士蒼汰の良さを最も引き出せる役どころ。いい意味で、品の良さは20代前半の頃からまるで褪せない。その上で、10年かけて、人間の中にある澱(おり)のようなものを身につけ、表現できるようになってきた。今回見せた、父との車内のシーンはその檜舞台。ちゃんと顔の肉に苦悩が染み込んでいる。すっきりとした切れ長の目が、別人のように落ち窪んでいる。それは、とても役者らしい顔だった。ピカピカの靴じゃない。泥と傷にまみれた刑事の靴のような顔だった。


だからこそ、「俺たちはみんな君をひとりにしたくないと思っているよ」と言われたあとの、こみ上げる顔が胸を打つ。頬がヒクつき、目が潤む。羽生に「帰るぞ」と肩を抱かれ、こらえきれずに眉間に手の甲を当て、下唇を噛む。綾野剛が『Document of Avalanche』で西城のことを「表の主役」と評していたが、その期待を裏切らない、主人公感たっぷりの心の動きを福士蒼汰が万感こめて表現してみせた。

そんな綾野剛は、今回アクションで存在感を発揮。目の覚めるハイキックで敵を一蹴し、ボンネットから転げ落ちたあと、「いってえ」とバランスをとるように片足で3度ジャンプするところは、なんだか漫画のヒーローみたいだった。拳の重みが伝わってくる肉弾戦も、疾走するトラックにしがみつくシーンも、喉が渇くようなスリル感。この組では、どのシーンも基本的にテストを設けず一連で撮影しているというが、ライブにこだわったこの手法が視聴者を巻き込むような迫力を生んでいるのかもしれない。


ついに“戦争”の火はついた。はたして「アバランチ」は大山の策略に打ち勝つことができるだろうか。



文:横川良明


【第7話あらすじ】

公安時代の上司・戸倉(手塚とおる)と素顔で対面した羽生(綾野剛)。ドローンカメラを通じて、山守(木村佳乃)らがその模様を見守る中、3年前に5人の仲間を死に追いやった偽装テロ事件の真相と、黒幕である大山(渡部篤郎)の真の狙いについて証言するよう迫る。しかし、戸倉はその答えの代わりに、「3年前の事件を終わりにしよう」と銃口を羽生に向けて…。


日本版CIA創立のため、犠牲や手段をいとわない大山によって張り巡らされていくアバランチ包囲網。正義のヒーローから一転、テロリストとして非難の的となっていく彼らが打つ、次なる一手とは?



『アバランチ』

毎週月曜夜10時〜10時54分

カンテレ・フジテレビ系全国ネット

【出演】

綾野剛 福士蒼汰 千葉雄大 高橋メアリージュン 田中要次 利重剛 堀田茜 ・ 渡部篤郎(特別出演) 木村佳乃

【主題歌】

UVERworld(ソニー・ミュージックレーベルズ)

【監督】

藤井道人、三宅喜重(カンテレ)、山口健人

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