トランプ米大統領は、米連邦準備制度理事会(FRB)の次期議長にパウエル現FRB理事を指名した。次期議長候補として名前が挙がっていた米スタンフォード大学教授のテイラー氏は、利上げに積極的なタカ派として警戒されていたが、ハト派寄りとされるパウエル氏に決まったことで、市場はこの人事を好感している。

 しかし、今回の人事でイエレン議長時代よりも政策の先行き不透明感が増すことに、市場はいずれ気が付くことになるだろう。

 まずパウエル氏は、常に利上げに消極的なハト派ではなく、状況次第で臨機応変に対応しようとする中立派だ。パウエル氏の人物像について、バーナンキ前議長は「穏健でコンセンサス(合意)形成の名人」と評している。パウエル氏は2012年の理事就任以来、金融政策を決める連邦公開市場委員会(FOMC)で一度も反対票を投じたことがないことからも、その評価が適切だとうかがえる。つまり、パウエル氏はコンセンサス次第でハト派にもタカ派にも変化しうるということだ。

 そこで、コンセンサスを形成するFOMCでの投票権保有者の顔ぶれが重要になるが、その点も不透明感が強い。

 FOMCでは議長、2人の副議長、4人の理事、ニューヨーク連銀総裁の8人は常に投票権を持ち、加えて1年ごとに輪番交代する4人の地区連銀総裁が投票権を持つ。副議長のポストの一つは長期間空席だったが、今年10月に金融規制担当副議長として元財務次官のクオールズ氏が就任した。しかし同時期にフィッシャー副議長が辞任し、再びポストの一つが空席となった。

 また、4人の理事のうち2人は空席のままだ。さらに、ニューヨーク連銀のダドリー総裁は、任期切れを待たずに来年半ばに辞任すると公表した。トランプ大統領は、空席をすべて埋める人事を行う意向らしい。副議長、2人の理事にどのような人物が任命されるか、不透明だ。自身の「低金利好き」の標榜(ひょうぼう)通りにハト派を任命することも、共和党保守派の意向に配慮してタカ派を任命することも、どちらもありうる。

 投票権を持つ4人の地区連銀総裁は、17年はタカ派1人、中立派1人、ハト派2人だったが、18年はタカ派2人、中立派2人となる見込みだ。副議長にテイラー氏を就任させるという観測もあり、それが実現すればコンセンサスは一気にタカ派寄りに傾く。FRBのタカ派シフトは、市場には悪材料視されるだろう。それが実現しなくても、先行きの不透明感は市場が最も嫌う状況だ。

 イエレン議長は、おそらく12月13日の次回FOMCで今年3度目の利上げを行い、議長職から勇退する。イエレン議長は絶妙な政策運営で米経済の成長を下支えしてきたが、その手腕を失うことの重大さから、市場はいつまで目を背け続けることができるだろうか。
(真意一到)