企業の不正会計撲滅を図る方法はあるのか。証券取引等監視委員会の浜田康委員に聞いた。

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 日本から粉飾決算がなかなかなくならない。悪質の度合いもさまざまだ。ただ検察庁や裁判所には会計専門の人材がおらず、今の会計基準や会計理論に対処し切れていない。例えば粉飾決算した東芝は米国会計基準を採用している。監査法人でも精通した人間が対応しているのに、検察などが対応するのは難しいだろう。会計に関する全ての事件を検察に委ねるには限界がある。

 一つの考え方として、不正の悪質度合いによっては、会計の主管部門でもある金融庁と証券取引等監視委員会にも判断させ、課徴金を引き上げて事件を決着させるという方法はどうだろうか。

 現在の課徴金は極めて安い。有価証券報告書に虚偽記載があった場合、金融商品取引法の規定で、その会社が発行する有価証券の時価総額の10万分の6か、600万円のどちらか大きい額が課徴金として科せられる。

 不正会計した東芝は約73億7000万円の課徴金が科せられた。だが、定期的に開示している有価証券報告書で科せられたのは、2012年3月期と13年3月期の有価証券報告書で最終(当期)利益を大幅に水増した分の約1億7000万円だけ。大半は不正会計の下で調達した社債発行分3200億円に対して科された課徴金72億円(発行額の2・25%)だった。資金調達がなければ、2億円弱の課徴金にしかならなかった。これでは抑止効果がない。

 定期的に開示する文書についても、不正をした法人に対して今の100倍から200倍の課徴金を科せられる裁量権が、監視委にあってもいいだろう。米国証券取引委員会(SEC)は虚偽記載すると、罰金のみならず経営者を15年から20年の懲役刑に処すことができる。

 しかし日本は課徴金しかなく、それも多くて数億円程度だ。ルールを守らなくてもペナルティーが軽いとなると、心構えが違うのではないか。大所高所からの見直しが必要ではないだろうか。

経営者は会計最高責任者

 国際会計基準(IFRS)を導入する企業が増えている。

 IFRSは原則主義と言われる。自由度が高いというだけではなく、自由度が高い分、経営者の責任が重大だという意味だ。その理念に基づいた会計基準だと言っていい。

 一方、日本の会計基準ではそうした責任を義務付けるものは定められていない。有価証券報告書の提出の際には、経営者名を記入した確認書も併せて提出するが、添付書類であり、一般の投資家が必ずしも見られるものではない。しかも確認書に虚偽記載があっても罰則規定がない。不正会計があった場合に経営者が「知らなかった」「経理責任者に任せていた」という言い逃れができてしまう温床となっている。

 IFRS適用の理由としてM&A(企業の合併・買収)で発生する「のれん」(被買収企業の純資産評価額と買収額の差額)の償却をしなくてすむから、というケースもあるようだ。そもそもIFRSの考え方では、のれんは企業価値の反映なので、専門家である経営者こそが正しく評価できるし、その責任がある。日本基準のように定期的に償却した方が安心だという考え方とは異なる。

 このようにIFRSは、日本の会計とは元々の考え方と理念が違うというところを理解したうえで適用してほしい。会計とか開示の考え方も変えていってほしい。

 監視委では、決算書に出ている結果と非財務情報とをしっかり比較して見るようにしようという話が出ている。財務諸表と非財務情報の開示の拡充を図り、矛盾があれば正させる。そのように有価証券報告書の質を高めていかなければならない。

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はまだ・やすし
 1952年生まれ。早稲田大学理工学部卒業、同大学院理工学研究科修士課程修了。76年監査法人中央会計事務所入所、79年公認会計士登録。有限責任あずさ監査法人代表社員・理事、青山学院大学大学院特任教授を経て2016年から現職。