内海潤(自転車活用推進研究会事務局長)

 シェアサイクルは2007年、パリ市の「ベリブ」から世界に広がった。約230万人の人口がいるパリでは、人口の1%にあたる約2万4000台が設置されており、市民や観光客の足となっている。約800万人都市のロンドンやニューヨークも約1万台がある。

 国土交通省の調査(17年10月時点)によると、日本でシェアサイクルを本格的に導入しているのは110都市で、年々増えている。観光戦略や公共交通の補完、地域活性化を目的としている自治体が多い。札幌市の「ポロクル」、金沢市の「まちのり」、岡山市の「ももちゃり」などが知られる。

 ソフトバンクのほか、セブン─イレブン、メルカリなど、新規参入も増えている。東京では、「ドコモ・バイクシェア」「コギコギ」「ハローサイクリング」「ピッパ」といった複数の会社のサービスが展開されている。中国のシェアサイクル大手2社も昨年、日本に進出し、「モバイク(摩拝単車)」が福岡市や神奈川県大磯町など、「オフォ(小黄車)」が滋賀県大津市や和歌山市などで事業を開始した。

 中国では、15年に北京でスタートアップしたモバイクやオフォなどのシェアサイクル企業の参入が相次ぎ、一時は過当競争になった。現在では淘汰(とうた)が進み、先の2社に絞られた。利用料が30分1元(約17円)程度と安価であり、中国では多くの市民が2社のシェアサイクルで移動している。現地に行くと、その数の多さに圧倒される。

 中国では、日本のようにシェアサイクルの駐輪場「サイクルポート」は設置されていない。街中いたるところに自転車を並べて置いてあり、好きな場所で借りて好きな場所に乗り捨てられる。この「フリーフロート方式」を取ったことで、市民の支持を得た。

 しかし、北京や上海などの大都市では、シェアサイクル各社が大量に自転車を投入したため、歩道からあふれたり積み上げられたりするなど社会問題となり、当局の規制が入った。

 そもそも日本では放置自転車と見なされるため、中国のような方式は採用できない。自治体と連携するなどしながら、ポートを設置しサービスを提供する必要がある。日本に進出する中国の2社はポートの場所確保で苦戦しており、本国が期待するスピード感でビジネスを展開できていない。

探さないと見つからず

 急速に広がる日本のシェアサイクル事業だが、利用者にとっては使い勝手が良いとは言えない。約1300万人の人口を抱える東京では、ドコモ・バイクシェアが先頭に立ち、ポート数や自転車の台数を増やしている。しかし、実施主体は各区単位で、ポートのない区もある。最近、千代田、港、品川など九つの区で、区をまたいで貸し出し・返却できる広域相互乗り入れが可能となった。だが、ようやく5000台を超えたところだ。海外の主要都市と比べると台数が少なく、ポートも探さないと見つからない。また、ポートによっては自転車があふれて返却できない場合もある。

 日本のシェアサイクルは、登録手続きの煩雑さも指摘されている。先日、韓国のソウルに行って「タルンイ」というシェアサイクルを視察した。登録はクレジットカード情報だけで、外国人でも気軽に使えた。同じように、中国のシェアサイクルはスマートフォンの専用アプリと電子決済で簡単に借りられ、日本でも同じアプリで借りられる。

 また、前述の通り、東京都では複数の企業がシェアサイクル事業を開始しているが、会社が違うとシステムが異なり、目的地の近くにあっても返却できない。本来シェアサイクルは、必要な時に借りて目的地で乗り捨てるものだ。利用者目線に立てば、区ごとや企業ごとではなく相互利用できるように、東京都がリーダーシップを取って、整備・管理することが必要ではないだろうか。

 例えば、ロンドンのシェアサイクルは、市の交通局が事業主体となって民間会社に委託している。地下鉄やバスなどと同じ、公共交通の一つとして運営されている。

 日本は、昨年5月に施行された自転車活用推進法と、それに基づく自転車活用推進計画で、「シェアサイクルと公共交通機関との接続強化」や「サイクルポートの設置の促進などにより、シェアサイクルの普及を促進する」としているが、駅の近くにポートがあるなど、便利で快適でなければ市民の足として定着しないだろう。