高橋克英(マリブジャパン代表)

 銀行がデジタル人材の確保を急いでいる。システム企画開発はもちろん、ビッグデータ、IoT(モノのインターネット)、サイバーセキュリティー関連など求められる人材は幅広い。

 メガバンクはこの動きが顕著だ。三井住友銀行は2019年4月入社の新卒採用で、総合職にプログラミングやAIに詳しい人材を対象にした「デジタライゼーションコース」と、数学や統計の専門知識を持つ学生向けの「クオンツコース」を新設した。いずれも大学院修士課程の修了者が対象だ。みずほフィナンシャルグループも理系の新卒採用に力を入れ始めている。

 三菱UFJ銀行は、AIなどを活用したビジネスの立ち上げなどを担う新卒を募集する一方、中途採用にも力を入れる。IT戦略の立案、推進、データサイエンス、デジタル・イノベーション、データ基盤構築といった職種で中途採用を継続的に行っている。

 しかし、理系のトップ人材は米グーグルや米アマゾンなど世界的なIT企業をはじめ、有力企業がこぞって求めている。メガバンクの採用は苦戦することになるだろう。

 これまで、銀行は理系の学生の就職先として認識されていなかった。また修士課程以上の大学院修了生は、研究室の教授を通じてメーカーや研究機関の就職先を紹介されることが多く、就職活動のために銀行の会社説明会に参加する学生自体が少ない。メガバンクの採用担当は、大学の研究室を訪問して教授と学生に説明するなど地道な活動を始めているが、「お堅い」イメージの銀行をあえて就職先に選ぶ学生がどれだけいるだろうか。実際、みずほは19年4月入社の新卒採用で理系を全体の2割まで増やす目標だったが、最終的に15%にとどまった。

 解決策は、ずばり高待遇の提示だ。それだけにとどまらず、勤務体系や副業の容認、福利厚生など自由度の高い働き方を認める柔軟な対応も必要となる。世界のIT大手と並ぶ魅力ある職場にしなければ、優秀な人材を呼び込むことは難しい。

後継者難の企業へ「供給」

 銀行は同時に、デジタル人材獲得のための費用を捻出する必要にも迫られる。そのためには、余剰人員を大幅に減らす大胆な取り組みが避けられない。転職を促したり、起業を支援したりする仕組みに加えて、昨年3月に解禁された銀行による人材紹介業を自行の余剰人員に対して本格活用することも選択肢となる。経営管理職や財務・経理職、金融・不動産営業職、経営コンサルタントといった形で、銀行員を後継者不足に悩む企業に供給する「人材供給バンク」になるということだ。

 デジタル人材の採用強化は、人員・職種構成の再構築、人件費の効果的配賦、そして銀行カルチャーそのものの変化が欠かせない。それができなければ、デジタル化の波に乗り遅れることになる。