松崎隆司 (経済ジャーナリスト)

 セブン−イレブンの親会社セブン&アイ・ホールディングス(HD)は4月4日、セブン−イレブンの古屋一樹社長が退任し、後任社長には副社長の永松文彦氏が就任する人事を発表した。永松氏は3月に副社長に昇格したばかり。永松新社長は一律に求めてきた24時間営業について、各店の経営環境に応じて柔軟に判断する考えを示した。


オーナー側に加勢

 きっかけとなったのはFC加盟店をめぐる混乱だ。今年2月、人手不足に悩む東大阪市の加盟店オーナーが、独自に夜間の営業時間を短縮して19時間営業にしたところ、本部からFC契約に違反すると指摘を受けた。さらに、違約金が発生する可能性についても指摘されたことからオーナーは態度を硬化させ、対立は続いているという。



 一部の加盟店オーナーがこの動きを支持し、24時間営業の見直しを求める加盟店は96店(全体の0.5%)に膨らんだ。セブン−イレブンの加盟店オーナーを中心につくる「コンビニ加盟店ユニオン」(岡山市)は、深夜営業を見直すようセブン−イレブンに求めた。セブン−イレブンは3月、直営10店舗で時短営業の実験を始めるなど対応に追われている。


深まる溝

 セブン−イレブンは1973年、「ヨークセブン」としてスタートし、「生産性の上がる中小小売店経営」を目指してFCビジネスを展開した。業務をすべてマニュアル化し、それを徹底させることで生産性を上げていく仕組みだ。

 企業経営に関するノウハウ提供から商品開発に至るまで、本部がすべてを行うことで全く商売の経験のない人でも加盟店オーナーになることができ、高収益も望むことができる。こうした仕組みをつくりあげたことで加盟店は急増し、2018年には2万店を超えた。

 しかし、加盟店が増えるほどマニュアルによる画一化されたビジネスのやり方に違和感を持つオーナーも増加し、本部と加盟店オーナーとの対立の構図が鮮明になってきた。

 コンビニ加盟店ユニオンは本部に対して団体交渉を求めたが、本部はこれを拒否。だが、岡山県労働委員会は加盟店オーナーを労働組合法上の「労働者」と認め、団交拒否は不当労働行為に当たると判断した。

 その後、ファミリーマートの加盟店オーナーの一部もコンビニ加盟店ユニオンに合流。ファミリーマートにも「ファミリーマート加盟店ユニオン」が誕生し、東京の加盟店オーナーが東京都労働委員会に救済を求め、岡山と同様、労働者であると認定を受けた。しかし、今年3月、中央労働委員会が岡山や東京の認定を覆し、「本部が団体交渉に応じないことは団体交渉拒否には当たらない」という判断を示したことから、本部とコンビニ加盟店オーナーの溝は深まっている。

 一方、ローソンは加盟店オーナーと独自の関係づくりを進めている。4月3日には、24時間営業問題などについて協議する「ローソン加盟店アドバイザリー委員会」を設置した。

 ローソンには1992年から、全加盟店が加入する「オーナー福祉会」という組織があり、年2回の理事会は、経営課題について社長を含めた本部とオーナーらが話し合う場にもなっている。アドバイザリー委員会はオーナー福祉会の理事らでつくる。

「中内功さん(ダイエー創業者)は、ダイエーを退職した社員の受け皿としてローソンを設立した経緯があり、コンビニオーナーに対しても寛容な社風がある」と、ローソン幹部は語る。

 そうはいってもローソンにもかつては、本部と加盟店オーナーとの間に壁もあったという。本部は加盟店オーナーに対して「オーナー様」と慇懃(いんぎん)無礼な言い回しをし、オーナーの集まりには社長を出席させなかった。社長が加盟店オーナーから批判されるのを恐れたからだ。


新浪氏の“一喝”

 本部と加盟店オーナーとの関係を変えたのが三菱商事から経営再建に入った新浪剛史氏(現サントリーHD社長)だった。オーナーの集まりには積極的に顔を出し、社長としては初めてオーナー福祉会にも出席。加盟店オーナーを前に「本部もオーナーも同じ立場なんだから、オーナー様じゃない。オーナーさんだろう」と本部の役員たちを一喝した。

 これをきっかけに社長はオーナー福祉会に必ず出席することが不文律となり、本部とオーナーは経営の課題について緊密に話し合うようになったという。

 こうした取り組みを通じて、本部は現場の人手不足などの情報をいち早く吸い上げ、加盟店オーナーの提案で、人手不足の店舗に人材を派遣する会社「ローソンスタッフ」を14年に設立した。24時間営業問題でも、すでに41店での営業時間短縮を認めており、竹増貞信社長は個別に対応する姿勢を示している。

 時には収益を犠牲にすることもあったというが、ローソンは時間をかけて本部と加盟店オーナーとの信頼関係を構築してきたといえる。こうしたやり方をそのまま他のコンビニが導入するのは難しいにしても、これまでのやり方を抜本的に見直す必要があるのではないか。