── 世界経済の現状はどうか。
 この10年ほど、低成長・低インフレが続いている。世界的に見て、潜在成長率が落ちており、以前のような高成長率に戻る気配はまったくない。これは構造的な問題だろう。一つは、先進国で高齢化が進んでいること。もう一つは、技術革新の質の変化。AI(人工知能)やIT技術は、これまでの蒸気機関車や自動車といったインフラを伴って莫大(ばくだい)な需要を出す技術革新とは異なり、GDP(国内総生産)成長率への貢献が小さい。そういう意味でも、低成長・低インフレの時代は当面続くだろう。

── 米国は減税や「予防的利下げ」で景気延命を図っている。
 一生懸命、金融政策や財政政策で景気刺激策を講じてみても、利かなくなってきたし、利いても一時的。低成長・低インフレで、分け合うパイが大きくならないなら、所得分配が重要になる。一部の「勝者」と「それ以外」という構図は不満を膨張させ、社会を分断する。政治は「それ以外」の人に目を配る中でポピュリズムに向かい、自国のことしか考えなくなる。外国を仮想敵にしていれば国内政治は安定する。そんな流れが世界的に顕著になっている。

── 米中貿易摩擦は今後どうなるか。
 米中関係はその時々で波はあるだろうが、緊張関係は続くだろう。米国の大統領がトランプ氏だから対立しているというより、米国一極の時代から、中国をはじめとして複数の国が台頭して多極化の時代に移行している。