◇生保にノルマは必要

 一方で、「販売目標はやはり必要」と考えるのは、日本生命保険の清水博社長だ。その理由をこう語る。

「生命保険には、顧客が潜在的に持っている不安やニーズを、こちらから出向いて話を聞く中で掘り起こして加入してもらうという事業の性格がある。そのため、積極的な販売・コンサルティング活動は必要で、目標を置く方が活動が活発になる」

 では、無理な販売につながらないためには、どうしているのか。

「日本生命では販売目標を、市場規模や営業職員数などに照らしてかけ離れたものになっていないか毎年チェックしている。また、既契約の顧客への訪問数など複数の目標を設定して、販売目標だけに偏らない運営を心がけている」(清水社長)

 銀行業界にも営業ノルマは必要とする声はある。首都圏の地銀首脳は「営業ノルマは必要」という立場だ。日本郵政グループのかんぽ生命保険の不正販売などを念頭にノルマが不正の温床という見方に対して、この地銀首脳はこう指摘する。

「運用の問題だ。不正に走らせるほどの過大なインセンティブを置けば、郵便局という信頼を逆手に悪用する人が出てくる。しかし、郵便局の事例は極端なもので、それをもってすべての営業ノルマが否定されるものではない」

 営業ノルマを廃止する銀行は三井住友銀以外にも広がりを見せる。福井銀行(福井市)や北国銀行(金沢市)など地方銀行でも取り組みが始まっている。

「顧客がいま必要としているサービスは何か」に重点を置く福井銀では、個人向け運用商品の数値目標を今年4月から廃止した。地銀に何よりも求められるのは地域基盤の支援だ。目先の収益目標を撤廃し、コンサルティングに重点を置くことで、より長期的な取引を構築するモデルに転換する流れが進んでいる(75ページに関連記事)。

 顧客の悩みや要望を把握し、ニーズに合った運用を行うことで、預かり資産をしっかり増やす。そうした姿勢や取り組みが信用を作り、長期の取引につながる。結果として銀行の収益も増えていく。これが本来求められる営業の理想像だろう。

 ノルマは必要か不要か──。働き方改革に取り組む銀行業界で、模索が続く。

(編集部)