東電、再編の起点に

 現時点で同モデルに最も近い立ち位置にいるのは、東京電力ホールディングス傘下の送配電会社の東京電力パワーグリッドだ。発送電分離によって同社は、原子力事業から切り離されるが、東京近辺の地下を東西および南北に走る27・5万ボルトの高圧送電線を擁する特徴を生かせば、同社の経営は維持しうるし、その収益力を原資に福島への賠償を半永久的に行うことができるだろう。福島事故を起こした会社の後継事業体である東電パワーグリッドが、原発を含む大型電源と切り離されることによって、太陽光や風力の再生可能エネルギーや都市ガスを使ったコージェネレーションシステムなど分散型電源に基軸を置いた未来形のネットワーク重視型モデルの先頭に立つ可能性が高いのだ。

 エネルギー関連の最近の政府の審議会では「送電の広域化、配電の分散化」の議論がさかんに行われており、将来的には、発送電分離を超えて送電網と配電網を分ける「送配電分離」が行われる可能性があることを示唆している。その場合、配電は電力小売りと一体化してより分散的な供給体制をめざし、対照的に送電は広域化する。

 日本では電気の周波数が、東は50ヘルツ、西は60ヘルツと分割されている。送電広域化の流れを受けて東電パワーグリッドは、同じ周波数の東北電力の送電会社との経営統合を志向するだろう。そうなれば、東日本の周波数50ヘルツ地帯を広域にカバーするTSO(送電系統運用者)が出現する。北海道電力の送電会社は、本州・北海道間の連系が脆弱(ぜいじゃく)であるため、この統合の対象にはならない。

 東日本での広域TSOの出現は、西日本の60ヘルツ地帯でも、TSOの広域化を促すだろう。西日本の場合には、送電線が連系されていない沖縄電力を除く、中部電力から九州電力までの送電会社が統合の対象となる。

 20年4月の発送電分離は、大規模な業界再編の契機となる可能性がある。将来は、旧態依然とした原子力・石炭火力等の「大型電源依存型モデル」と本来望ましい「ネットワーク重視型モデル」という二つのビジネスモデルが並存する展開になると予想している。