大手ネット証券による「手数料ゼロ競争」がヒートアップしている。対象は、投資信託や信用取引、ETF(上場投資信託)、株式の売買手数料と雪崩式に広がった。体力勝負の消耗戦の様相だが、「本当に顧客獲得につながるのか」と疑問の声もある。

 2019年12月、大手ネット証券5社はそろって、投信の販売手数料を無料化した。また、松井証券とSBI証券、楽天証券は、株式売買の手数料を無料とする1日の株式売買代金の上限を10万円から50万円に引き上げた。ETFについては、手数料ゼロで売買できる対象銘柄の数で競う。この間、各社の発表資料には「業界初」「業界最多」の文字が並んだ。

 発端は、KDDIの出資を受けて社名変更したauカブコム証券が12月2日、取り扱うすべての信用取引の手数料を撤廃すると発表したことだ。松井証券も同日、投信の販売手数料を完全無料化すると発表した。

 翌3日には楽天証券が、取り扱う2637本すべての投信手数料を無料にすると発表。マネックス証券も12月3日、7割でノーロード(販売手数料なし)だった投信のすべてで、販売手数料を実質無料とし、信用取引の手数料も無料にすると応戦。マネックスは「証券取引のつど手数料を受け取る従来型のサービスから、顧客の資産形成・資産運用を支援するサービスの対価として報酬を得る事業構造転換を図る」としている。

「陣取り合戦に」

 SBI証券も12月4日、これに追随する形となった。ネットでは顧客が資金の移動を簡単にできることから、コスト競争が激化しやすい。だが、ネット証券各社の収益構造は一様ではない。各社の公表資料によると、株式売買などの委託手数料が営業収益の半分を占める会社もあれば、2割程度の会社もある。

 深野康彦・ファイナンシャルリサーチ代表は「投資家の裾野はそれほど広がっていなく、陣取り合戦になっている。手数料ゼロで下がる利益をどこでカバーするかが見えないうちに競争が始まった。体力がどこまで続くか」と厳しい見方だ。

 日本総研の石川智久上席主任研究員は「過当競争になれば、健全な経営のリスクになる。相談や情報提供といったコンサルティング業務で適正な対価が得られるようなビジネスモデルへの転換が必要だ」と指摘する。

 投信の場合、販売手数料がゼロでも、毎年の信託報酬(運用手数料)を得られる。だが、信託報酬の低コスト化も進んでいる。

 三菱UFJ国際投信は低コストのETFを20年1月から運用開始する。グローバル株式に分散投資するETFなどで、信託報酬は年率0・0858%(税込み)。MSCI指数に連動するETFでは世界最低水準だという。

(編集部)