6年連続の最終赤字に苦しむジャパンディスプレイ(JDI)だが、2020年度も黒字化は厳しい状況だ。外部資金の導入で債務超過は解消したものの、主力のスマートフォン(スマホ)向け液晶は低迷が見込まれているからだ。今後の主戦場となるスマホ用の有機ELディスプレーに参入できるかどうか、経営陣の知恵が試されている。

「2年のうちに進捗(しんちょく)を示す」──。8月26日の株主総会で3月に就任したスコット・キャロン会長は21年度に最終黒字を目指すとの考えを示した。

 JDIは、12年4月、日立製作所、東芝、ソニーの液晶パネル部門が統合し、官民ファンドの産業革新機構(現INCJ)から2000億円の出資を得て発足。スマホ普及の波に乗り、14年3月に東証1部に上場を果たしたものの、上場後に最終損益で黒字を出したのは初年度だけだ。

量産でつまずく

 電機産業に詳しい早稲田大学大学院経営管理科教授の長内厚教授は、苦境に陥った要因について、「量産技術を重視しなかった」と指摘。具体例として、狭い額縁が特徴の液晶パネル「フルアクティブ」の出荷が遅れたことを挙げた。同パネルは、米アップルのiPhone(アイフォーン)に採用されたものの、販売が始まった18年秋シーズンで出荷が遅れ、18年度の黒字化を逃す一因となった。

 一向に水面上に浮上しない業績が続き、19年9月末には1000億円超の債務超過に陥った。とはいえ、官民ファンドが累計で4000億円以上、資金支援した「国策会社」を簡単につぶすわけにはいかないのか。今年3月末には、INCJによる債務の株式化(1020億円)と、独立系投資顧問会社、いちごアセットマネジメント系のいちごトラストから出資(優先株504億円)を受け、債務超過を解消。3月の出資分を含め、いちごトラストからは総額1108億円の出資を受ける予定で、資金面での危機は遠のいた。

 ただ、事業面の展望は厳しい。最大顧客アップルは今後、発表するとみられるアイフォーン新機種に有機ELを採用することが確実視されている。JDIは、スマート時計「アップルウオッチ」用に有機ELを供給しているが、スマホ用で先行するサムスン電子とLGディスプレイの韓国2社を追撃するには本格的な設備投資が必要になる。

 スマホ用の有機ELを本格生産するかどうかJDIは明確にしていないが、世界的に需要が成熟化したスマホ用に、新工場を立ち上げるリスクは小さくない。

 英調査会社オムディアの早瀬宏アナリストは、「財務負担が少ない形で、アップル向けに有機ELの専用工場を立ち上げることは不可能ではない」と話す。早瀬氏は、「サムスンは、有機EL工場の稼働率が落ちた場合はアップルから補償金を得ている。専用ラインがほぼ止まっていた昨年度上期分は、数千億円ともいわれている。JDIも知恵を絞ってアップルから有利な条件を引き出す交渉をすればよい」と指摘する。

(浜田健太郎・編集部)