(河村靖史・ジャーナリスト)
 世界的に急加速している「カーボンニュートラル」(温室効果ガス排出実質ゼロ)への焦りから、トヨタ自動車が電気自動車(EV)対応を急いでいる。

 昨年10月、トヨタとして国内市場向けで初の市販モデルとなるEV「レクサスUX300e」を限定135台で販売開始したのに続いて、昨年12月25日には2人乗り超小型EV「シーポッド」を、法人や自治体向け限定で販売開始した。個人向けを含めた本格販売は2022年ごろになる予定だ。

 トヨタは世界初の量産型ハイブリッド車(HV)の「プリウス」を実用化したこともあって、HVを環境対応車と位置付けており、次世代環境対応車としてはHV技術を進化させたプラグインハイブリッド車(PHV)を本命視。将来的な脱炭素社会では燃料電池自動車(FCV)が主力になると見ていた。充電時間や航続距離、バッテリーの価格などの問題からEVは普及しないと考えていた。

 しかし、カーボンニュートラルに向けた動きが世界的に加速し、中でも欧州を中心に、ガソリン車を排除する動きが目立つ。英国政府はガソリン車とディーゼル車の新車販売を30年までに禁止を打ち出した。フランスやインド、米国カリフォルニア州なども30〜40年にガソリン車の販売を禁止する。トヨタが懸念しているのは、英国などがHVの販売も禁止する方針で、EV重視が鮮明となっていることだ。

 トヨタは、EVシフトに短期間で対応するため、提携しているSUBARUやマツダそれぞれとEV専用プラットフォームの共同開発を決めた。さらに、電動車シフトで将来的に不足が見込まれるリチウムイオン電池の調達先を世界最大手である中国のCATLやBYDなどグループ外に広げ、出遅れていたEVへの追撃を急いでいる。

業界の懸念表明

 世界的なカーボンニュートラルの動きに歩調を合わせて昨年12月25日、日本政府も50年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」に向け、30年代半ばまでに新車販売は電動車両のみとする目標を掲げた。

 一方それに先立つ昨年12月17日、日本自動車工業会の会長としてのオンライン会見で、トヨタの豊田章男社長は、電動車両にはHVを含んでおり、「電動車イコールEV」ではないことを強調。国のエネルギー政策の見直しがないままでのEVシフトは「自動車業界のビジネスモデルが崩壊する」と懸念を表明した。

 得意のHVを重視するあまり、市場の先行きを読み誤ったツケがまわりかねない状況に、トヨタの危機感は強い。