(前谷宏・毎日新聞モスクワ支局)

 ロシアで開発された新型コロナウイルスのワクチン「スプートニクⅤ」について、接種回数を本来の2回から1回に減らす簡易版の接種方法「スプートニク・ライト」の臨床試験(治験)が今年1月に始まった。主に国外へ輸出するワクチンでの使用が想定されている。

 簡易版の導入はプーチン大統領が昨年12月に提案、ワクチンの有効性は91%から85%程度に落ち、抗体の持続期間も3〜4カ月程度に限られる。それでも、一時的に重症化や感染拡大を抑えられるとし、開発に関わる露政府系ファンドは「感染状況のひどい国々での一時的な解決策になる」と説明している。

 スプートニクⅤに対しては、50カ国以上から10億人分以上の注文が寄せられている。ただ、ロシアのワクチン生産能力は限られており、特に2回目に接種するワクチンは生産が難しいとされる。簡易版は、生産が容易な1回目のワクチンだけを使用することで、国外での需要に応えるという意味もありそうだ。

 一方で、ロシアのワクチンは治験の終了前から使用が承認され、データ公開も不十分であり、国内外から不信の声が上がっている。激しいワクチン開発競争の中、簡易版がロシアの切り札となるかは未知数だ。