食べ放題「焼肉きんぐ」で急成長

── コロナ禍で飲食業界全体が大変な状況の中、焼き肉業態は比較的堅調です。
加藤 決してすべての会社や店舗が好調というわけではありません。郊外にあるか、駅前や繁華街にあるかなど、立地によって違いがあります。新型コロナウイルスの感染拡大で、外食市場は縮小しています。例えば、月3回行っていた外食を1回か2回に減らした人も多いでしょう。どこから減らしているかといえば、仕事帰りに会社の仲間と居酒屋に行くことかもしれません。そのため、駅前や繁華街にある店の方が影響は大きいです。(2021年の経営者)

── 運営する焼き肉チェーンの「焼肉きんぐ」は郊外の立地が多いですね。
加藤 家族との外食ならば安心感があるため、郊外店が健闘しているのかもしれません。外食の回数も減る中で「せっかく行くならば」と比較的高級な焼き肉が選ばれている面もあります。換気設備が整っているというイメージが強いことも影響しています。

── 最近の売り上げの状況は。
加藤 昨年11月までは(政府の外食需要喚起策の)「GoToイート」があり、売り上げの押し上げ効果がありました。12月に入ると、コロナの第3波や忘年会がなくなった影響で、前年を下回るようになりました。

── 食べ放題を武器に焼肉きんぐは急成長を果たしました。
加藤 我々が支持されているのは、食べ放題の常識を覆したことでしょう。焼肉きんぐを初めて出店したのは2007年です。それまでの焼き肉の食べ放題といえば、「安かろう悪かろう」でした。焼肉きんぐは、食べ放題なのに席に座ったままタッチパネルで注文できて、品質の良い厚切りの肉が食べられる。親切な接客に加え、商品の提供の早さも心がけています。一般的には、食べ放題は原価率が高いので「たくさん食べさせないような仕組み」を考えますが、それはダメだと切り替えました。

── どのように工夫していますか。
加藤 たくさん注文してもらっても商売が成り立ち、顧客満足度とも両立ができる仕組みの研究を常に重ねてきました。例えば、1皿当たりの食材の量を少なくしています。1人当たり15皿ぐらい注文するので「いろいろな種類を食べられた」と顧客の満足度が高まるためです。原価率の高い商品と低い商品を組み合わせる「メニューミックス」も研究しています。人気商品の「すき焼カルビ」も牛肉と豚肉を用意し、両方の注文をもらえるように見せ方を工夫しています。100分で2980円(きんぐコース=税抜き)という価格設定も他社ではマネできないでしょう。

── 1人2980円で利益は出るのですか。
加藤 「大箱」の店舗で運営していることが大きいです。小さい店舗なら入店客数が限られるので、食べ放題のビジネスモデルとしては成り立ちません。焼肉きんぐの標準店舗は90坪(約300平方メートル)ほどあります。賃料や人件費がかかるため損益分岐点は当然高くなります。しかし入店客も多くなるため、損益分岐点を超えた時点で粗利が大きく出ます。

── 客席を回り、焼き方や食べ方を指導する「焼肉ポリス」はユニークな取り組みですね。
加藤 コロナ禍で地域一番店に顧客が集まる傾向がより強まるだろうとみています。おいしい状態で焼き肉を食べてもらうため、スタッフが焼き方までサポートする「おせっかい」の取り組みはとても重要です。今年1月から配膳ロボットを導入した店舗もありますが、それは人件費の削減ではなく、人にしかできない接客などに注力する目的です。

── ラーメンチェーンやしゃぶしゃぶ店も運営していますね。
加藤 「丸源ラーメン」は約160店舗あります。郊外の広い店舗で運営しているチェーンは少なく、業界内で独自の地位を築いています。看板商品は熟成醤油(しょうゆ)ラーメンの「肉そば」で男性客や学生はもちろん楽しめますが、女性や子どもたち向けの豊富なメニューをそろえています。しゃぶしゃぶチェーンの「ゆず庵」は和のイメージを全面的に打ち出しています。すしとしゃぶしゃぶというあこがれのメニューを食べ放題にすることに価値があると考えています。