民主党のアレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員(ニューヨーク州選出)とエドワード・マーキー上院議員(マサチューセッツ州選出)が2月7日、米国を完全に脱炭素化し、化石燃料から100%再生可能エネルギーへの大転換を図るという「グリーン・ニューディール決議案(GND)」を発表した。本誌3月19日号の本欄で、2020年の次期大統領選で温暖化対策が争点になりうると書いたが、その動きが活発になってきたのだ。


 この決議案には、米国内の全電源を温室効果ガス排出ゼロのエネルギーで賄うこと▽公共交通機関や高速鉄道も含めた交通インフラの近代化▽すべての建物のエネルギー効率の向上▽農業セクターの温室効果ガス削減──が盛り込まれている。また、温暖化対策とは直接関係のない、すべての国民に対する医療保険の提供、雇用の保証などの項目も含まれている。


 主導するオカシオコルテス議員は、18年の中間選挙で共和党候補を破って29歳で当選し、米国史上最年少の女性連邦下院議員としてメディアの注目を浴びた。名前の頭文字をとって「AOC」と呼ばれ、16年大統領選で民主党候補に名乗りを上げたバーニー・サンダース上院議員の選挙運動に関わった経験も持つ。ツイッターやインスタグラムなどのソーシャルメディアを駆使することで知られ、いまや「反トランプ」の象徴的存在でもある。


 トランプ大統領は「飛行機も車も牛も石油もガスも軍隊も、全部無くしてしまうのは大変結構なことだ。そんなことをしている国はほかにどこにもないけどな!」とツイートし、強烈に皮肉った。


 決議案は理想的な社会の姿を示しているように見えるが、達成のための具体的な実行計画は提示してはいない。反対の声は、共和党や産業界はもちろん、ナンシー・ペロシ下院議長や中道派を中心に民主党内にも多い。3月26日、上院はこの決議案を反対多数で否決した。上院共和党が民主党に「社会主義的」とのレッテルを貼り、その分裂をあおるために採決を急いだとも言われている。実際、民主党の上院議員のほとんどが、賛成でも反対でもない「出席」票を投じている。


 決議案を現実味がなく、ばかげていると一蹴するのはたやすいが、問題はそう単純ではない。まず、温暖化対策や環境問題を20年大統領選挙に向けた大きな政治的アジェンダ(検討課題)に引き上げた功績は大きい。しかも主導するのが、中間選挙での民主党躍進の原動力となった「女性」や「若者」といったキーワードを体現しているAOCなのも無視できない。


福祉政策も含む工夫

 気候変動問題は国民の関心を引く争点になりにくいが、決議案に雇用問題や医療保険が含まれていることにも注目したい。これらの項目は「左派的」とさらに批判されてもいるが、気候変動問題を超えた投げかけは決議案に国民の関心を集める効果がある。


 カマラ・ハリス上院議員やエリザベス・ウォーレン上院議員など次期大統領選への意欲を見せる民主党議員も決議案への賛意を示した。共和党、民主党を問わず、次期大統領に名乗りを上げる候補者は皆、気候変動問題への見識を試されることになるだろう。


(川上直・国際協力銀行ワシントン事務所首席駐在員)