30余年の生産中止期間を経て、2017年に生産開始60周年を迎えたイタリアの人気コンパクトカー、“チンクエチェント”ことフィアット『500』。この「フィアット500」とは、単なる一モデルの名ではない。MINIが『クロスオーバー』や『クラブマン』といった多様なモデルをラインナップすることで“車種”から“ブランド”になったように、「フィアット500」も、フィアットのサブブラント「500シリーズ」としての顔を持ち、その派生モデルには、カブリオレの『500C』やSUV仕立ての『500X』、そしてMPV(マルチパーパスヴィークル)の『500L』がある。『500L』は日本には未導入だが、ヨーロッパでは高い人気を誇る「500の上級モデル」で、2017年5月にはビッグマイナーチェンジを行った。

“ルパン三世の愛車”をモチーフに誕生したフィアット『500』のMPVがマイナーチェンジ


フィアット『500』は、スタジオジブリの名作アニメ『ルパン三世 カリオストロの城』にルパンの愛車として登場した「旧フィアット500」のデザインを受け継ぐ、レトロでポップなスタイリングのイタリアンコンパクトカー。そのスモールプレミアムを体現したキャラクターによって、イタリア車ファンのみならず、世界中で多くのユーザーを獲得しているベストセラーモデルだ。



とはいえ、あくまでも3ドアのコンパクトハッチバックだけに、ファミリーユースという意味では足りない部分が多かったのも事実だろう。そこで、『500』よりもひと回り大きい『プント』のプラットフォームを使ってフィアットが新たに開発したのが、2012年に発売された『500L』である。



車名の「L」とは、「ラージ」を意味する。つまり「Lサイズの500」だ。この名が示すように、全長は『500』より約600mm長くなり、その広々とした車内空間からファミリーユースも十分に可能となった。今回のマイナーチェンジでは、フロントマスクのデザインをはじめ、内外装を一新。じつにコンポーネントの約40%が新しくなっているという。




もう「間延びした500」と呼ばせない、フロントとリヤのデザインを刷新した『500L』


従来の『500L』のスタイリングは、『500』に忠実であろうとするあまり、「間延びした500」と見られることも少なくなかった。新型『500L』は、全体のフォルムはそのままに、キャラクターと車格に見合うアグレッシブで精悍なスタイリングとなっている。



フロントはグリルが新デザインとなり、フォグランプ周りもワイドになった。ヘッドライトの形状に変更はないが、LEDを用いたドライビングライトを採用することで、引き締まった表情を作り出している。もちろん、フィアットのアイコンであるヒゲ付きフロントエンブレムはそのままだ。リヤ周りはやや角張ったデザインとなり、バックライトとフォグランプをバンパー下部に配置。クロームのインサートが追加された。



インテリアは、ステアリングホイールやメーター類をリフレッシュした。スピードメーターとレブカウンターの間には3.5インチのカラー液晶ディスプレイを装備し、インフォテインメントシステムには、FCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)による「Uconnect(ユーコネクト)」の最新版を搭載。Apple CarPlayやAndroid Autoにも対応する。




新型『500L』は3列シートの7人乗りモデルも設定、多様なライフスタイルに対応する


さらに、従来から設定されていた3モデルが、それぞれ「Urban(アーバン)」「Cross(クロス)」「Wagon(ワゴン)」と車名を変えたのもトピックだろう。「アーバン」はその名の通り、クロームが配された都会的なスタイリングの標準モデル(メイン写真と上の写真)。「クロス」は、最低地上高が25mmアップされ、悪路でトラクションを制御するドライブモードも備えるなど、SUVテイストが強調されている。「ワゴン」は「アーバン」より全長が約200mm長く、3列シートの7人乗りを選べるミニバン仕様。コンパクトカーの7人乗りは、ヨーロッパではめずらしい存在だ。



パワーユニットには、日本仕様の『500』と同じ0.9Lの「ツインエア」ガソリンエンジンをはじめ、1.4Lのガソリンエンジン、LPGも使用できるバイフューエル、1.3Lと1.6Lのディーゼルエンジンなど、複数のユニットが設定される。



もともとコンパクトMPVは国産メーカーのお家芸ともいえるカテゴリーだ。しかし、輸入車の場合、このカテゴリーのクルマを探してもほぼ見当たらない。7人乗りとなれば、さらに難しくなる。『500L』を日本に導入すれば十分にニーズがありそうだが、現時点でFCAジャパンが正規輸入を行なう予定はなさそうだ。



ビッグマイナーチェンジで生まれ変わった「500の上級モデル」。多様なライフスタイルに対応するだけに、国産コンパクトMPVでは飽き足らない人、ひと回り大きな『500』がほしい人は、並行輸入業者を訪ねてみるといいだろう。日本未導入の希少車を手にする優越感を味わえるはずである。ちなみに、『500L』のヨーロッパでの入り口価格は、「アーバン」1万8420ユーロ(約231万円)、「クロス」2万0870ユーロ(約261万円)、「ワゴン」1万9620ユーロ(約246万円)からとなっている。