「英国を代表するスポーツクーペは何か?」と聞かれたら、おそらく多くの人がアストンマーチン『DB』シリーズを挙げるのではないか。世界で最も有名なスパイ、ジェームズ・ボンドの愛車としても知られるGTカーの傑作である。このアストンマーチン伝統の「DB」の2文字を車名に冠した最新モデルは、2016年にデビューした『DB11』。しかし、5.2LのV12ツインターボエンジンを搭載する『DB11』は、圧倒的なパワーと速さを誇る一方、価格や環境性能において必ずしも手を出しやすいクルマとはいえなかった。そこで、アストンマーチンは『DB11』に4.0Lの V8エンジンを搭載するモデルを新たに設定した。それがメルセデスAMG製エンジンを積む初のアストンマーチン、『DB11 V8』である。

V12モデル並みの加速、軽さと省燃費を実現したV8モデルのアストンマーチン『DB11』


『DB11 V8』のパワーユニットは、2013年にアストンマーチンと提携を結んだ同社のテクニカルパートナー、メルセデスAMGが供給する4.0L V8ツインターボエンジン。スーパースポーツ『AMG GT』などに搭載される強力ユニットで、アストンマーチンのモデルがメルセデスAMG製エンジンを採用するのはこれが史上初めてのことだ。



このV8エンジンは『DB11』にそのまま積まれたわけではない。開発にあたっては、アストンマーチンのエンジニアチームが専用のエアインテーク、エキゾーストシステム、ウエットサンプ潤滑システムを装着して『DB11 V8』に適合するように調整。エンジンの電子的キャブレーションを行ったほか、新しいECU(エンジンコントロールユニット)ソフトを開発してエンジンのリプログラミングとスロットルマッピングを行なうなど、アストンマーチンならではの「エンジンフィールとサウンド」を実現した。



最高出力は510ps、最大トルクは675Nmと、V12モデルに比べてそれぞれ102psと25Nmほどダウンしているが、速さはそれほど大きく変わらない。エンジンがコンパクトかつ軽くなったことで、乾燥重量はV12モデルより115kg軽量化された。それにより、0-100km/h加速は4.0秒をマーク。このタイムはV12モデルとわずか0.1秒しか違わない。最高速度は187マイル(約300km/h)。燃費性能やCO2排出量も大きく改善されており、自動車税がエンジン排気量に応じて課税される市場では大きなメリットをもたらすはずである。





V12よりお手頃価格になったV8モデルの『DB11』、独自の個性を持つ類まれなGTカー


エクステリアにもV12モデルと微妙な差別化が図られている。フロントマスク周りでは、LEDヘッドライトのベゼルが「ダーク」になったほか、足元には『DB11 V8』のためにデザインされた専用の20インチアロイホイールを装着。V12モデルでは4つだったボンネットベントも2つに変更された。このベントのメッシュはブラックとチタニウム仕上げのいずれから選択が可能となっている。



インテリアはV12モデルと同じ標準の装備グレードを採用。カラーやトリムオプションの選択肢もV12に準じている。さらに個性を求めるオーナーには、オプションパックやデザイナー仕様のほか、「Q by アストンマーチン コレクション」も用意された。「Q by アストンマーチン コレクション」は、アストンマーチンが長年培ってきたクラフトマンシップによって顧客のスペシャルオーダーに応えてくれるビスポークプログラムだ。


アストンマーチンCEOのアンディ・パーマーは、V8モデルの『DB11』について、「開発段階で試験走行を繰り返したことにより、エンジンの変更のみにとどまらず、V12モデルとは異なる独自の個性を持った類まれなGTカーとして、ダイナミックな変貌を遂げた」と評している。



少しだけ手頃に、そして環境にもやさしくなった、美しくも猛々しい英国を代表するスポーツクーペ。もしかすると、今後はV8モデルの『DB11』がアストンマーチンの新たなランドマークモデルとなるのかもしれない。すでに日本でも6月29日から受注が開始されており、価格はV12モデルより約200万円ダウンの2193万8900円となっている。