高齢者人口の増加とともに、介護保険制度上でいう要支援・要介護認定者数が増加している。それに伴い、働き盛りの世代の間で、離・転職者数も増えており、「介護離職」は社会的問題として注目されつつある。

総務省が発表した「平成24年就業構造基本調査」によると、平成19年10月から平成24年9月までの約5年間で、家族の介護・看護のために前職を離・転職した雇用者数は総計43万9000人もいるという。この性別内訳をみると、女性35万3800人、男性8万5500人。また、年齢階層別内訳をみると、40~59歳が22万2500人(50.7%)と、企業内で管理職に当たる世代に増えているのだ。
「もし、介護離職することになったら、生活はどう変わるのだろうか」。40・50代男性読者のなかには、そんな不安にさいなまれる人も少なくないだろう。 そこで、ブログ「40歳からの遠距離介護 (http://40kaigo.net/)」の著者・工藤広伸氏に、どのような生活の変化が起きたのか、その実状をうかがった。

■今回のアドバイザー

工藤広伸さん


ブログ「40歳からの遠距離介護」、『認知症介護で倒れないための55の心得』(廣済堂出版)などを手掛ける介護作家・ブロガー。自身も2度の介護離職を経験している。

介護離職を2度経験…しかしそれによって生まれた気づきも


「転職し小売業の商品部のマネージャーとして勤めて9カ月目に実家である岩手に住む祖母が子宮頸がんで倒れ、母の認知症が同時に発覚しました。父は家を出ていましたし、妹も嫁いでいたので、私が介護をしようと思い、介護することが確定したあとは、東京と岩手を新幹線や深夜バスを使って往復。介護と仕事の両立をしていましたが、職場の立場や仕事の忙しさを考慮し、4カ月後には介護離職しました」(工藤さん、以下同)



実は工藤さん、これが初の介護離職ではない。



34歳のとき、岩手に住む父が病気で倒れた際にも、当時勤めていた会社を離職して介護にあたった。こうした経験から「1回目の介護離職をしていたので、こんな日が来ることをなんとなく予測していました」と工藤さん。前出ブログ『40歳からの遠距離介護』を開設したのも、介護離職によって収入が減ることを見こしてだ。



「介護離職したとしても、収入が激減したとしても、ゼロにはならないという安心感はあったので、思い切って離職できました」



マネージャー職の採用活動には、企業にとってもそれ相当の費用と時間がかかる。従業員に親の介護が発生したからとはいえ、おいそれと辞めさせてはくれないのではないか。はたまた、従業員に発生した親の介護は、企業から疎ましくみられるものなのか。工藤さんの場合は、「岩手と東京という距離の問題や自分しか介護できる人がいないこと。祖母と母の介護、転職して間もないということもあり、特に会社からこれといった反応はなかった」と話す。



一般的に勤続1年以上でなければ、介護休業制度は利用できない。そこで、転職間もない工藤さんは介護が始まって1カ月後に辞表を提出。「その間、会社も新体制を検討することができたのでしょう」と工藤さんは振り返る。やむを得ない事情とはいえ、やはり、介護離職は勤める会社の体制が整ったら。会社には迷惑はかけないというのが最低限のマナーということか。

暗く考えすぎずに人やお金の態勢づくりをすることが大切


工藤さんが離職し、介護生活を始めたのは、今から5年前。現在も、東京と岩手を往復し、年間約20往復ペースで介護を続けている。介護離職というと、暗いイメージを抱く人も多いが、「介護サービスは充実しているので、意外となんとかなります。介護保険制度内ですべて考えずに、お金がかかっても保険外サービスを使って自分の時間を確保するという手もあります。とにかく態勢、人、お金などを作るところが大切」と工藤さん。



あなたにもいつか訪れるかもしれない、親の介護。工藤さんは「その時、すぐに体制作りができるよう、情報収集をしておくことが大切」とも話す。ネガティブな感情を膨らませ過ぎず、前向きな情報収集こそ、介護離職にしておくべき備えの第一歩となりそうだ。