■今回のアドバイザー
有限会社Sleepeace代表
三橋美穂さん
快眠セラピスト・睡眠環境プランナー。寝具メーカーの研究開発部長を経て、2003年に独立。現在は、全国での講演や執筆、個人相談のほか、ベッドメーカーのコンサルティング、ホテルのコーディネイト、快眠グッズのプロデュースなど、企業の睡眠関連事業にも広く携わる。著書に『驚くほど眠りの質がよくなる睡眠メソッド100』(かんき出版)ほか多数。
「深部体温」が下がりにくくなると、なかなか眠りモードに入らない
冬の寒い時期には、なぜ睡眠の質が下がり熟睡できなくなるのだろう? 三橋さんに説明してもらった。
三橋さん「通常、体の内部の体温『深部体温』は、日中が高く、睡眠中に低くなります。皮膚温度が上がると深部体温が下がって、体の覚醒の度合いも下がり、眠りモードに入ります。しかし、寝室が寒いと、熱を逃がさないようにするため体が緊張状態になり、深部体温が下がりにくくなることで、なかなか寝付けないのです。
冬の日照時間の問題も見逃せません。人間は太陽光を浴びることで、神経伝達物質であるセロトニンの分泌が増え、気持ちややる気が高まり、日中の活動量が上がります。セロトニンは、夜になると眠気を促すメラトニンというホルモンに変化し、分泌します。しかし冬は日照時間が短くなるため、メラトニンの量が減り、熟睡できないケースが増えることが考えられるのです」
寒いからといって厚着をしたり靴下を履いて寝ると安眠の妨げになることも
エアコンを付けても部屋が寒く、靴下や厚着をして冷えを防止している人も多いかもしれない。しかし、三橋さんによれば、それは安眠を妨げるNG の服装だという。
三橋さん「靴下を履くことで足先からの放熱を妨げる上に、足をキュッと締め付けるので血行が悪くなり、かえって冷えてしまう場合があります。さらに、足の裏に汗をかいて放熱することは、深部体温を下げることにはなりますが、靴下で足裏をふさぐと体温そのものが下がりにくくなり、その結果、眠りが浅くなる可能性もあるのです。足の冷えが気になるのであれば、靴下のかわりに足先が開いているレッグウォーマーの着用をオススメします。
厚着に関しては、何枚も重ね着してしまうと、動きにくいので寝返りがしにくく、余分な力が入って体に負担がかかります。ですから、たとえば寝るときは肌着とパジャマにして、あとは布団や敷きパッド、毛布を使って、保温調整するのがオススメです」
早い時間から部屋を暗くしておくことが安眠環境の第一歩
最後に、今日からぐっすり寝ることができるようになる安眠習慣をいくつか教えてもらった。
三橋さん「眠気がなかなかこないタイプの人は、早い時間のうちに部屋を暗くすると良いでしょう。光の量が減ると、メラトニンの分泌が高まるので、眠気が早く訪れます。
また、寝る前にオススメしたいのが、4・7・8呼吸法です。4秒空気を吸って、7秒息を止め、8秒息を吐きます。これを10回ほど繰り返すと、副交感神経を沈めて自律神経が優位になるので、心身をリラックスさせる効果が期待でき、スムーズに眠れるはずです。
熟睡できない人の場合は自律神経が乱れている可能性もあるので、冬は39〜41度くらいのぬるめの湯船に15分ほどゆっくり浸かるのもいいと思います」
最後にアドバイザーからひと言
「睡眠はただ疲れを取るためだけのものではなく、明日へのパワーを得るポジティブなものです。ぜひ睡眠環境を整えてみてください!」