2023年8月22日、キャロウェイから新作アイアン「APEX PRO」シリーズが発表されました。ラインナップされるのは、「APEX PRO」「APEX CB」「APEX MB」の3モデル。各モデルがどんな性能なのか、いち早く試打したゴルフライター鶴原弘高氏のインプレッションをお届けします。

「PRO」のシリーズとして新たに3モデルが展開される

「APEX」は、キャロウェイのアイアンブランドとして展開されているシリーズです。前作にあたる2021年モデルは、「APEX アイアン」「APEX DCB アイアン」「APEX PRO」と「APEX TCB」(※日本では数量限定発売)の計4モデルが用意されていました。

上から「APEX PRO」「APEX CB」「APEX MB」の3モデル
上から「APEX PRO」「APEX CB」「APEX MB」の3モデル

 今回発表されたのは、あくまでも「APEX PRO」シリーズとしての新作3モデルになります。前作にあったスタンダードモデル「APEX アイアン」や、やさしさを強調した「APEX DCB」のようなモデルはありません(※)。要するに、中〜上級者向けカテゴリーとしてのアイアンだけが新たに3モデルも発売されることになります。それが「APEX PRO」「APEX CB」「APEX MB」です。発売日は、9月22日(金)が予定されています。

※ ひょっとすると今後、モデルチェンジした「APEX アイアン」や「APEX DCB アイアン」が出てくるかも知れませんが、今のところキャロウェイからのアナウンスはありません。

 新作の「APEX PRO」「APEX CB」「APEX MB」は、一見すると分かる通り、バックフェースの外観デザインが統一されていて、どれもがスマートな印象のモデルになっています。目を引くのは、下部に配されているチャコールブラックのバッヂ部分のみ。実物を手にしてみても質感が高く、思わず「カッコいい」という言葉が口から漏れてしまうほどでした。

 キャロウェイによると、クラブの外観デザインを揃えたのは、モデルを組み合わせたコンボセットとして使ったときにも違和感がないように配慮したからだそうです。実際、笹生優花は「APEX CB」と「APEX MB」をコンボにして現在試しているとのこと。

3つのモデルそれぞれのヘッド構造やロフト設定は?

「APEX PRO」は21年の前作から引き続き中空構造を採用しています。3番から5番までは軟鉄鍛造の中空ボディーに「カーペンター455フェースカップ」を採用し、6番以下の番手はS25Cの鍛造フェース。ヘッド内部には打感を向上するキャロウェイ独自の「ウレタンマイクロスフィア」も搭載されています。7番のロフト角は33度という設定。「PRO」と名付けられているモデルだけあって、飛びを重視したストロングロフトにはなっていないところもポイントです。

「APEX CB」と「APEX MB」は、とてもよく似ている2モデルです。すべての番手がS25Cの軟鉄鍛造で、2モデルとも7番のロフト角は34度。どこが大きく異なるのかというと、ヘッド内部における重心位置の設計。「APEX CB」にのみ、ヘッド内部にMIM(金属射出成形)によるウエートを配置することで重心の最適化が図られています。

3モデルのヘッド形状や構えやすさは、どう違う?

「APEX PRO」「APEX CB」「APEX MB」は、同じシリーズだけあってヘッド形状もよく似ています。けれど、微妙に違うことろも見受けられ、3モデルでちょっとずつ違う、という言い方が適切かも知れません。

 ヘッド素材や構造、そして寛容性や直進性で考えると「APEX PRO」→「APEX CB」→「APEX MB」の順になり、見た目的にも「APEX PRO」が3モデルのなかでもっともトップブレードが厚く、ソール幅が広い。逆に「APEX MB」がもっともトップブレードが薄く、ソール幅も狭いモデル。「APEX CB」は、それらの中間です。オフセットに関しては、「APEX CB」と「APEX MB」がほぼストレートネック。それに比べると「APEX PRO」には若干オフセットが付けられていますが、一般的にはかなり控えめな部類です。

「APEX CB」と「APEX MB」は、前述したとおりロフト設定が同じ。アドレス視点でのヘッドの見え方もよく似ていて、どちらも中上級者向けらしいシャープな雰囲気が備わっています。あえて筆者の観点から細かい部分を記すと、「APEX MB」が伝統的なアイアンらしいルックスで、「APEX CB」はスコアラインが少しトウ側に寄っている現代的なルックスに感じられます。個人的な印象でしかありませんが、球を包み込んでドローを打つイメージが沸くのは「APEX MB」のほうで、ローテーションを抑えてフェードを打ちやすそうなのが「APEX CB」というふうにも見受けられました。

3モデルを打ち比べてみると、似ている部分と異なる部分が!

左から「APEX MB」「APEX CB」「APEX PRO」の3モデル。「MB」と「CB」のフェースの見え方はよく似ている
左から「APEX MB」「APEX CB」「APEX PRO」の3モデル。「MB」と「CB」のフェースの見え方はよく似ている

 3モデルの7番アイアンを同じシャフト(ダイナミックゴールド ミッド S200)で打ち比べてみました。3モデルとも打音が静かで打感が柔らかい。インパクトでの球持ちの良さがあり、弾道を操作できそうな感覚が得られます。個人的には中空構造を採用している「APEX PRO」と、「APEX CB」や「APEX MB」との打感の差を心配していたのですが、まったく気にならないレベルでした。これならコンボセットにしたときのフィーリング面での違和感もないでしょう。

 飛距離に関しては、ロフト設定が同じ「APEX CB」と「APEX MB」がまったく同等。「APEX PRO」は、それよりも少しだけ低スピン弾道になりやすく、数ヤードだけ飛ばせます。やはりこの「APEX PRO」のシリーズは、飛距離よりもグリーン面への着弾のさせやすさとスピン性能、ボールコントロール性能に重きを置いて設計されていることがよく分かりました。

 飛距離が変わらない「APEX CB」と「APEX MB」ですが、スイング中のヘッド挙動やそれに伴うゴルファーが受けるフィーリングには少し違いがあります。

「APEX MB」は、MB(マッスルバック)と名付けられている割に打ちやすいタイプのモデルです。男子プロにも使用者が多かった前作「APEX TCB」よりもヘッドサイズはひとまわり大きく、ミスショットしても手が痛くなるような手ごわさはありません。とはいえ、操作性には優れていて、小回りを効かせやすいアイアンになっています。

 それに比べると「APEX CB」は、スイング中にソール側やトウ側にほんの少し重さが感じられ、ヘッド挙動が「APEX MB」よりは穏やか。ヘッド自体の慣性モーメントが高められているように感じました。そうは言っても、極端に「APEX MB」よりも寛容性が高いとか、やさしく打てるようになっているわけではなく、ゴルファー自身が持ち球を打ちやすいタイプをCBとMBの2モデルから選ぶことができるという感じです。

「APEX CB」よりも、さらにヘッド挙動が穏やかになるのが「APEX PRO」です。こちらのモデルにも弾道の操作性が備わっていますが、ヘッド自体のブレづらさも適度に加わられています。打っていてもテクノロジー感があり、ミスヒット時の許容性を求めるならば、「APEX CB」よりも確実に「APEX PRO」を選んだほうが良さそうでした。

「APEX PRO」シリーズはゴルファーにとって贅沢なラインナップ

 中上級者向けのシリーズとして、3モデルも展開される「APEX PRO」シリーズ。似ているけれど、構え比べてみると3モデルで少し違った印象を受けますし、打ってみると構えたときの印象どおりの弾道とフィーリングが得られます。それぞれが少しずつ違っていて、それぞれに存在価値とゴルファーからの需要があるように思えました。どのモデルも完成度が高く、そのなかで選択肢が3つもあるというのは、ゴルファーにとってはありがたく、贅沢なことのようにも思えました。

 今回、筆者が先行して試打できたのは7番アイアンだけでしたので、ひょっとすると5番アイアンぐらいなると、重心設計の違いから「APEX MB」と「APEX CB」の打ちやすさや弾道にもっと差が出てくるかもしれません。ぜひ、皆さんもご自身で3モデルを試打して性能の違いを確かめてください。

試打・文/鶴原弘高つるはら・ひろたか/1974年生まれ。大阪出身。ゴルフ専門の編集者兼ライター。仕事のジャンルは、新製品の試打レポート、ゴルフコース紹介、トレンド情報発信など幅広く、なかでもゴルフクラブ関連の取材が多い。現在はゴルフ動画の出演者としても活躍中。ギア好きゴルファーの会員制コミュニティサイト『3up CLUB』(https://3up.club/)では、配信される動画のキャスター兼編集長を務めている。Instagram :tsuruhara_hirotaka

鶴原弘高