様々な種類が発売されているドライバー。購入時には試打データや構えた時の形などで選ぶゴルファーは大多数だが、「打感」を重視する人も多い。そこで、ドライバーにおける「いい打感」とはどんなものなのか、ルフフィールズユニオンゴルフ店・店長の小倉勇人(おぐら・はやと)さんに聞きました。

「飛びそうな音」がいい打感だが上級者はやわらかさも求める

 ドライバーのインプレッションでは、必ず言及されるドライバーの「打感」。硬いとかやわらかいとか弾きがいいとか、様々な表現で「いい打感」を伝えています。この「打感」の正体は一体何なのでしょうか。クラブの試打経験が豊富な、ゴルフフィールズユニオンゴルフ店・店長の小倉勇人さんに聞いてみました。

 打感とは「打球音プラス手に伝わってくる振動」の複合要素で、とくに打球音から受ける印象が大きいといいます。

基本的な性能はもちろんだが、「好みの打感」を優先してドライバーを選ぶゴルファーも多い 写真:AC
基本的な性能はもちろんだが、「好みの打感」を優先してドライバーを選ぶゴルファーも多い 写真:AC

「打感は、クラブの性能の一部ともいえる重要なファクターです。アイアンの場合は、『いい打感』といえばだいたいやわらかい打感を指しますが、ドライバーは一概にそうともいえません」

「ドライバーの場合、打感がやわらかすぎると飛んでいない感じがしてしまうのです。その意味では『飛びそうな音』がするのが、ドライバーにおいては『いい打感』といえるのではないでしょうか」(小倉店長)

 昔のドライバーのヘッドは、いまのような金属ではなく、パーシモン(=柿の木)を削って作られたものでした。

 昔から鉄で作られていたアイアンと違って、ドライバーはあまりにも大きく進化したので、パーシモン時代と今の「いい打感」はまったく違うものになっています。

 現在のチタンやカーボンなどで、パーシモン時代の感触目指すのは、無理があるからです。

 その意味で現代ドライバーの「飛びそうな音」というと、金属的で響きのいい、爽快な音ということになりそうです。

 ポイントは、空洞のヘッド内に音がこもるような感じがなく、カキーンと抜けていくような音。とくに日本では、大ヒットしているロングセラーモデルの「ゼクシオ」が歴代で演出してきた、カキーンという金属的な音がひとつの基準のようになっている部分があり、多くのアマチュアゴルファーがああいう音を「飛んでいそうな、いい音」と感じるようです。

 しかし、上級者やプロにとっては必ずしもそれだけではないようです。

 上級者にとっては、あまりに甲高い金属的な音は、フェースとボールの接触時間が短い感じがして、ボールをコントロールできなさそうな違和感が残るというのです。

 そのため、プロモデルやアスリートモデルのドライバーは、アベレージゴルファー向けのものと比べると、弾きのよさの中に若干のやわらかさを感じられるような打球音を演出しているモデルが多いようです。

自分にとって「いい打感」とはどんなものなのか知っておく

 ドライバーの打球音に関しては、各メーカーが非常に入念に設計をしているといいます。

「どのメーカーも、ヘッド内部に『リブ』と呼ばれる衝立状の板をつけたり、樹脂素材などを封入するなどして、ヘッドの振動をコントロールすることで最適な音を目指す工夫をしています。とくに異素材を組み合わせる際に、お互いの共鳴や継ぎ目で生じる悪い振動をどうやって消すかは、各メーカー、かなり腐心しているようです」(小倉店長)

ヘッド内部に「リブ」と呼ばれる衝立状の板をつけるなど、各メーカーはドライバーの「音」には非常にこだわっている(写真はピン「G430」ドライバーのサウンドリブ)
ヘッド内部に「リブ」と呼ばれる衝立状の板をつけるなど、各メーカーはドライバーの「音」には非常にこだわっている(写真はピン「G430」ドライバーのサウンドリブ)

 ヘッドの重心設計の自由度を高めるため、チタンよりンも軽いカーボン素材を使うのはいまでは当たり前ですが、かつては「カーボンを使うと打感が悪くなる」と敬遠された時代もありました。

 また、形状が個性的なヘッドも、内部での共鳴が一般的なモデルと異なるので、打感に違和感が出るケースも多く、性能以上に打感の面で「失敗作」の烙印を押されてしまったケースもあります。

 いまでは接着技術の進化や、前述のリブや樹脂素材などの活用で、カーボンを使ってもチタン単一のヘッドと遜色ない打球音が演出できるようになっています。

 一方で、フェース部分を鍛造で作ったり、同じチタンでも成分の配合を変えるなどして、いい打感を演出しようとする場合もありますので、素材がまったく関係ないとまではいえない部分も残っています。

 いずれにしても、ドライバー開発において「打感」は無視できない重要な要因です。最近はデジタル技術を駆使し、打球音のどの周波数帯をどのように響かせるか、という科学的なアプローチで打球音を研究しているメーカーもめずらしくありません。

 各メーカーがどういったアプローチで打感を演出しようとしているかも、チェックしてみると面白いかもしれません。

「自分のイメージとズレていたり、飛ばなさそうと感じてしまう打感だと、もっと飛んでいる感じを自分で演出したくなってリキんだりすることもあります。自分にとって気持ちいい打感のクラブを使うことは大事です」

「打ち比べてみるとメーカー・モデルごとに個性があって面白いので、自分の好きな打感はどんな打感なのかを知っておくといいと思いますよ」(小倉店長)

鈴木康介