目的外(サブ)グリーンに乗ってしまったボールは、無罰で救済を受ける必要があります。しかし、最近はそのまま打ってしまうゴルファーも多く、ゴルフ場は非常に困っているといいます。
シミュレーターでは目的外グリーンからそのまま打てる!?
家の近くに24時間営業のインドアゴルフスタジオがオープンしたので、ゴルフ練習場通いをやめてインドアゴルフスタジオで練習するようになりました。そのゴルフスタジオは1フロアに4打席あり、1打席に1台ずつ最新ゴルフシミュレーターが設置されています。
最初のうちはドライビングレンジモードばかり使用していたのですが、次第にといろんなモードを試したくなり、アプローチショットやパッティングを採点してくれるショートゲーム練習モードで高得点を狙うようになりました。
それに飽きてくると、今度は実際のゴルフ場をラウンドしているようなストロークモードで18ホールプレーばかりになりました。

ストロークプレーモードを1人でプレーすると、コースの難易度にもよりますが慣れてくれば45〜50分で18ホールを回ることができます。
ボールがラフやバンカーに飛んでもマットからボールを打つので、本物のゴルフ場とは大きく違いますが、ダフリやトップのミス、左右の曲がりは弾道解析機が計測してくれるので、実際のラウンドにかなり近い感覚のプレーを楽しむことができます。
ゴルフ場も18コースの中から自由に選べるので、順番に選んでいくと新鮮な印象のラウンドが何度でも楽しめます。
その中の1コースをプレーしているとき、グリーンを狙ったショットが目的外(サブ)グリーンに乗ってしまったことがありました。実際のラウンドでもよくあることです。
日本のゴルフ場は高温多湿な夏場にグリーンの芝生が枯れてしまうことへの対策として、2種類の芝種のグリーンを隣り合わせに配置し、季節に応じて使い分ける2グリーンのゴルフ場がけっこうあります。
プレーヤーがそのときプレーしていない他のすべてのホールのパッティンググリーンを目的外グリーンと呼び、2グリーンのゴルフ場で使用していないほうのグリーンもこれに含まれます。プレーヤーのボールの一部が目的外グリーンに触れている場合、プレーヤーはそのボールをあるがままにプレーしてはならず、救済を受けなければなりません。
ところが、そのゴルフシミュレーターはボールが自動的に救済エリアに移動する機能は搭載されておらず、目的外グリーンからそのまま打つ設定になっていました。
もちろん実際にボールを打つのはマットの上なのですが、多少の罪悪感を覚えました。でも、罪悪感があるのは本物のゴルフ場でのプレー経験があるからです。
このゴルフシミュレーターでゴルフを覚えた人は、本物のゴルフ場に行っても目的外グリーンにボールが乗った場合、そのまま打ってしまう可能性が高いだろうと思わずにはいられませんでした。
シミュレーターでゴルフを覚える人はこれから増える
ゴルフ場関係者に話を聞くと、目的外グリーン上のボールをそのまま打ってしまうゴルファーは増えているそうです。
キャディーつきプレーが主流の時代には、目的外グリーンにボールが乗ったときの救済措置をキャディーさんが教えてくれましたが、昨今はセルフプレーが主流ですから、同伴競技者が教えなければ知る機会がありません。そして同伴競技者がルールやマナーを教えるような場面はどんどん減っているのが実情です。

ほとんどのゴルフ場はサブグリーンの手前に「CLOSED」と書かれた鉄製の看板を設置しているだけで、目的外グリーンにボールが乗ったときにどうすればいいかは記されていません。
そんなとき、ゴルフシミュレーターでそのまま打っていたことを思い出したゴルファーは、間違いなくそのままボールを打ってしまうでしょう。
コロナ禍以降、インドアゴルフスタジオが急激に増えていますから、ゴルフシミュレーターでゴルフを覚える人はこれからどんどん多くなります。
ゴルフシミュレーターではOKでも本物のゴルフではNGだということを知らせるには、やはり誰かが教えるしかありません。その役割を担うのは同伴競技者ではなくゴルフ場のような気がします。
保井友秀