「パッティングがうまくなりたければ毎日数分ずつでもパターマットでボールを転がすこと」と、うまい人からアドバイスをもらったことのある人も多いでしょう。しかし、最もおなじみのタイプはカップの手前に急な上り傾斜がついていて、強く打たないと入りません。本当に効果があるのでしょうか。

急激な傾斜のためにパットで一番大事な“タッチ”が養えない

 自宅リビングでパットの練習をするのは“ゴルフ好きのお父さん”というイメージがありましたが、最近は多くのゴルファーがパターマットを使って練習をしています。リモートワークの合間やテレビ視聴中のコマーシャルタイムなど、ちょっとしたすき間時間に息抜きがてら毎日5分でも10分でもボールを転がしたらパットの感覚が磨かれそうです。

どうしてもカップに入れないと気が収まらないのがゴルファーの性 写真:AC
どうしてもカップに入れないと気が収まらないのがゴルファーの性 写真:AC

 パターマットでみなさん思い浮かべるのは、長さ2メートルほどでカップの手前が上り傾斜になっているタイプのものでしょう。市販のパターマットには、長さ、幅、厚さ、カップの大きさ、数、白線の有無などが異なるさまざまな製品がありますが、上り傾斜がついていると、カップインしてもしなくてもボールがマット周りの溝を通って戻ってくるので便利です。

 このようなパターマットを使って練習する場合、カップまでは約2メートルでも最後の急な上り傾斜の分を強めに打たないとカップに入りません。弱すぎるとボールが戻ってきてしまうこともあります。傾斜のあるパターマットで距離感や打ち方の練習をするにはどんなことに気をつけたらよいのでしょうか。

 サラリーマンから4年間の米国ゴルフ留学後、プロ転向。試合出場を経て、現在は横浜・湘南を拠点にレッスン活動を行うPGA公認ティーチングプロの南澤聡さんに教えてもらいました。

「厳しい言い方をするようですが、パットの上達のために傾斜がついたパターマットで練習しても効果は期待できません。タッチを養うことができないからです」

「タッチがどれほど大切か、分かりやすい例として20メートルのパットをイメージしてください。ビギナーの方がラインを入念に読んだ挙句6〜7メートルもショートしたりオーバーしたりする光景をよく見ます。これによって3パットはほぼ確定、4パットにつながりかねない大きなミスです。ミスをした原因は、“タッチが合っていないから”。たとえラインは違っても、タッチがそこまで外れなければビギナーの方でも2メートル前後に寄せられます。その確率を高めることが3パット撲滅への第一歩であり、パットの上達につながるのです」

「タイガー・ウッズもよく言っていますが、パットは“タッチファースト”、とにかくタッチありき。それには上り傾斜の練習は必要ないのです」

 ゲーム感覚でカップインさせることだけが目的なら、2メートルの距離に上り傾斜の分を足すか、それでもショートしたら、もっと強く打てば入るようになるでしょう。でもそれは今使っているマット限定。2メートルの距離感は養われず、タッチも合わず、グリーンでは通用しないと南澤さんはいいます。

 パッティングには、ジャストタッチでボールをカップの手前から流し入れるタイプと、大きめに打ってカップの向こう側の壁に当てて入れるタイプとがあります。ところが、一般的に傾斜つきパターマットで打ったボールは、ジャストタッチで入れば平地ならカップを30センチ前後オーバーするとされています。

 とすれば、前者のタイプの人がジャストタッチでカップの手前から入れたボールは、実際は距離に対してオーバーに打ったわけですから、意思に反して後者のタイプの打ち方をしたことになります。

 一方、後者のタイプの人は、常にカップの奥の壁にボールを当てて入れるつもりのタッチで打ちますが、傾斜つきのパターマットでも同じように打ったら、平地では入らなければ60〜70センチはオーバーしてしまうでしょう。上り傾斜のカップに入れることにフォーカスした練習は、タッチを養うどころか身についているものまで乱すことにもなりかねないのです。

傾斜のないところを利用してマットの角で止める練習を

 今まで傾斜つきのパターマットで練習していた人はガッカリしたかもしれません。でも、だからといって「大掃除のときに捨てるか」と考えるのはもったいない。

 南澤さんがパターマットをを生かした練習アイデアを教えてくれました。

「マットを逆向きに使いましょう。カップ側の傾斜のないところにボールを置き、マットの反対側の右スミ、あるいは左スミを目標にして打つのです。マットの角にカップがあると仮定して端にボールが止まれば100%入りますから、非常にいい練習になります。マットから転がり出ることなく端ぎりぎりに止めることでタッチが養われるのです」

「もう一つ、マットの角を狙うことでアライメントを正しくとる練習にもなります。特に、センターに白線が引かれているマットで、白線に逆らってマットの角を狙っていく練習はたいへん効果的です。白線があると、マットの角に向かって斜めに立つだけで最初はものすごい違和感を感じるでしょう。でも、慣れてくると白線も斜めの向きも気にならなくなります。どんな状況でも目標に対して正しいアライメントがとれるようになり、真っすぐ立って真っすぐストロークできるようになるのです。白線のないマットでも、マットの端に向かって立ち、端にタッチを合わせていくことは有効ですから、ぜひ取り入れていただきたいですね」

 傾斜のあるなし、白線のあるなしにかかわらず、マットの端にボールを止める練習がタッチを養い、アライメントを身につけるのに最も効果的なのです。

 ちなみに南澤さんは、自宅で使うパターマットをこれから買う場合は「まず傾斜がなく、長さはできるだけあって、白線のないものを選びましょう」と言います。家族やパートナーからのクリスマスプレゼントにパターマットをリクエストする方は、この3点を付け加えるのをお忘れなく。

野上雅子