2018年にツアー初優勝した香妻琴乃。大粒の涙を流して手にした1勝から6年の歳月が過ぎた。“美人ゴルファー”としても注目を浴びたが、近年はレギュラーツアー出場からも遠ざかり、下部ツアーが主戦場となっているが、それでも現役生活を続けている。今の心境とゴルフとの向き合い方の変化などについて聞いた。

美人ゴルファーとして注目を浴び……

 “かわいい”、“キュート”、“キレイ”、“美人”――女子プロゴルフの世界では、時に選手の容姿を指して、多くのメディアがそう表現することがある。

 外見を重視して物事を判断する“ルッキズム”は近年、減少してはいるものの、まだ残っているのも事実だ。2011年のプロテストに合格した香妻琴乃もそんな選手の一人だった。

リラックスした格好でインタビュー取材に応じてくれた香妻琴乃
リラックスした格好でインタビュー取材に応じてくれた香妻琴乃

 “美女ゴルファー”という表現がついて回り、キュートなルックスと共にアマチュア時代からナショナルチーム入りの選手ということでも注目を浴びていた。

「注目されるのはそんなに嫌ではなくありがたいです」と笑っていたが、プロ入りしてから12年が過ぎた。32歳のベテランは「今もツアー2勝目を目指しています」とハッキリといった。

QTランク177位で出場試合は限定的

「いま一番欲しいの自信。結果から来る得られる自信みたいなのがあれば一番いいのですが、そこが難しいところなんです」

 プロ8年目、26歳の時に香妻は2018年の「マンシングウェアレディース東海クラシック」でツアー初優勝。努力すれば報われるという大きな自信も得た。というのもこの時、彼女が優勝するとは思えない状況だったことも、自分を信じる大きなきっかけとなった。

 最終日は10位から出て8バーディー、ノーボギー。さらにツアー出場権を持たない状況で、ウェイティングからの初優勝というのも関係者を驚かせた。

 ギャラリー前のインタビューでは、「泣くつもりはなかったんですけど。キャディーさんに『ゴルフをしていてよかったね』といわれて。ゴルフが嫌いな時期もあったけど、優勝する日が来てすごくうれしい」と大粒の涙を流していた。

 しかし、いい時が長く続かないのがゴルフというスポーツの難しいところ。19年は賞金ランキング103位でシードから陥落。以降はレギュラーツアーの出場権を獲得できずにいる。結果が出ない日が続けば、どんな選手でも自信を失いがちだ。ガマンやメンタルの強さ、忍耐力も求められるが、時に弱音をはきたくなることもあるだろう。

「優勝した翌年(19年)の不振は、肩を痛めていて、試合を休むことが多かったんです。痛みがあると練習するのも怖くなって、そうなると筋肉も硬くなってもう肩も上がらなくなってしまったんです。悪いスイングでずっと練習していたからというのが原因です」

 肩だけでなく、腰の痛みとも長らく戦っていたが「ここ2〜3年は肩の痛みもなくなったんです。いい病院の先生と治療に出会ったことで、練習やトレーニングも心配なくこなせるようになりました。このストレスがなくなったのは大きい」と話す。

 ただ、それでも自信をつけるにはやはり結果が欲しい。昨季は推薦でレギュラーツアーには6試合出場したが、「樋口久子三菱電機レディス」の37位タイが最高位で、その他のトーナメントは予選落ちした。

 下部の「ステップ・アップ・ツアー」も6試合に出場して予選通過は4試合。昨年12月のQT(予選会)も最終予選会に進出できず、QTランキングは177位と今季は出られる試合がかなり限られてくる。

「今はファンの応援がすごく身に染みる」

「試合が少なくてもモチベーションはあるんです。ただ、自分では『こうやるぞ!』って思ってるけど、いい結果が出ない。結果が1試合でも出ないとやっぱり悩んじゃうし、今やっていることが合っているのかなと思うことも、スイングも正しいのかと迷うこともあります」

「試合に出られれば、練習していることを試せるチャンスがあるのですが、それも少なくなると難しい。だからこそ、1試合1試合にすごい気持ちがすごい入っています」

昨シーズン出場したレギュラーツアーで最もよい成績を残した「樋口久子 三菱電機レディス」 写真:Getty Images
昨シーズン出場したレギュラーツアーで最もよい成績を残した「樋口久子 三菱電機レディス」 写真:Getty Images

 それは昨季の行動にも現れている。「1つでも多くの試合に出られるようにダメ元でウェイティングに入れるように現地まで行った試合がいくつかありました。出られない可能性もあるけれど、行かないとチャンスはないですから」。

 プロゴルファーとしては当然の行動かもしれないが、試合に出られなければ移動経費がムダになる。それにしても今もなおなぜこんなにも貪欲なのか。

「こんな私でもずっと応援してくれるファンがいることにすごく感謝することが増えたからです。スポンサーさんもそうですし、だからこそ結果で応えたい。だから引退とかも考えたこともありません」

 いくら成績が悪くても勝ちたい気持ちがあれば、辞める理由は見当たらない。香妻は自ら「ゴルフとの向き合い方が本当に変わりました」と切り出した。

「若いころはとにかく『自分のことだけ』という感じでした。いい成績、いいスコアばかり求めていて、正直、あまり周りのことを気にしたことなかったです。でも今はファンの応援がすごく身に染みます。予選落ちも分かっているのに応援に来てくれたりして、人の温かさを今はすごく感じています」

 そしてもう一つ、「周囲の意見を聞けるようになった」といって笑っていた。

「ゴルフがうまくいかなくて、ネガティブな時もあるんです。でも1人で考えてどうしようって時に、今はいろんな人の意見を少しずつ聞くようにしています。ほかの選手の成績も今まではまったく興味がなかったのですが、今はすごく見るようになりました。弟(陣一朗)の結果も以前は人から聞いていたくらいでしたから(笑)。今は練習ラウンドで選手のプレーを見たり、トレーニングや練習内容についても色々と聞くようになりました」

「予選落ちしていつも泣いていた20代」

 年を重ねるとともに柔軟な思考になったのは、それだけ苦労を重ねてきた証拠だ。笑顔が似合う選手だが、人知れず涙を流していたこともあったと告白した。

「20代の頃は予選落ちしたら、いつも泣いてたんです。悔しくてトイレで泣いたり……。それぐらいすごく落ち込んでたんですけれど、今は涙も出ないんです。それは心の余裕というよりかは、『また来週がんばろう』という緩い気持ちだったというか。今の自分に慣れてしまった感じがあったんです」

 ギラギラしていた20代。それこそ、悔しさがにじみ出る彼女の雰囲気は、外から見るとファンも声をかけづらいオーラが確かにあったかもしれない。

「でも今は本当にファンの方とお話したりして、私の変わりようには気づいていると思います(笑)」

 周囲を見渡せるようになったのは大きな成長と言えるが、またかつての強い気持ちを持った“香妻琴乃”を見せたいという。

「今年はもっと強い気持ちを持って、そこを意識して詰めていこうと思っています。負けないぞっていう気持ちを持てるくらい、たくさん練習をすれば、試合がなくても自信になると思っています」

 香妻は今季、レギュラーツアーの推薦の声もかかっており、現時点で「アクサレディスゴルフトーナメントin MIYAZAKI」(3 月22〜24日、宮崎県・UMKカントリークラブ)への推薦出場が決まっているという。

 今季の目標は「もちろんどんな試合でも勝つこと」。戦う気持ちにさせられるのは、青木瀬令奈、福田真美、堀奈津佳、葭葉ルミ、工藤遥加ら1992年生まれの選手たちの活躍も大きい。

「まずはステップで優勝すれば、QTもファイナルから進める。自信につなげて、そこからレギュラーツアーで戦えるようにしたい。絶対にチャンスはありますから、みんながんばっているから私もまだまだ続けます」

香妻琴乃(こうづま・ことの)

1992年4月17日生まれ、鹿児島県出身。ステップ・アップ・ツアーでは2013年「ANAプリンセスカップ」と2014年「中国新聞ちゅーピーレディース」と2勝。2018年「マンシングウェアレディース東海クラシック」で最終日に「64」の好スコアをマークし逆転でレギュラーツアー初優勝を飾る。サマンサタバサ所属。

キム・ミョンウ