2020年にキヤノンから発売された「パワーショットズーム」は望遠鏡型カメラとしてヒットし、「観(み)れる」と「撮れる」を一体化したコンパクトな形状により、スポーツ観戦やイベントで重宝されています。2024年3月上旬に開催されたジャパンゴルフフェアでは、そのゴルフ版ともいえる「パワーショットゴルフ」をキヤノンが出展! 気になる性能について開発担当者に聞いてみました。

ポケットに入って スイングの邪魔にならないサイズ感

 2024年3月8〜10日にパシフィコ横浜(横浜市西区)で開催された「ジャパンゴルフフェア2024」では、さまざまなメーカーの距離測定器が展示されており、発売前の最新モデルの説明会も行われていましたが、他の距離測定器と一線を画すアイデアと性能を感じたのがキヤノンの「パワーショット ゴルフ」でした。

キヤノン「パワーショットゴルフ」
キヤノン「パワーショットゴルフ」

 大きな特徴は2つ。まずは望遠レンズが搭載されていることです。望遠機能として6倍、さらにデジタルズームで12倍まで拡大できます。実際に計測してみると多くの距離計に比べて明らかにピントを合わせやすいのです。従来のレーザー距離計ではピンフラッグまでの距離を測ったつもりが、奥にある木までの距離を計測してしまうものもありましたが、望遠機能付きの「パワーショット ゴルフ」ではそんなミスもなさそうです。

 もう一つは、撮影ができることです。ラウンドしながら遠くの景色を撮るのはもちろん、距離を計測した画面で撮影すると、計測距離も写真と一緒にデータ保存できます。例えば残り150ヤード地点から計測した画面を残すことで、自分のショットが短かったのか、長かったのか、どういうショットを打ったかを復習することができるのです。

「望遠×撮影」というコンセプトはまさに同社のヒット商品である「パワーショットズーム」と同じ特徴。その狙いについて開発担当者であるキヤノンの有賀一人さんに話を聞きました。

―この商品はどういう経緯で開発したのですか?

「実は『パワーショットズーム』を発売したときに、ゴルファーの人たちから『これで距離測定の機能はつけられないの?』という声がありました。それと、私自身がゴルフ好きで、約40年ゴルフをやっているので、こういう距離計があったら面白いなと思っていたことがきっかけです」(有賀氏)

―どのくらいのペースでゴルフに行かれているんですか?

「千葉にあるゴルフコースのメンバーになっていまして、昨年は年間52ラウンドでした。ハンディは11くらいですが、今年1月の月例競技はAクラスで優勝することができました」(有賀氏)

―ゴルファーとして開発にこだわった部分はどこですか?

「一番はサイズです。ズボンのポケットに入れてもスイングの邪魔にならないコンパクトサイズにこだわりました」(有賀氏)

 実際にズボンのポケットに入れてみましたが、確かに前ポケットに入れても、後ろのポケットに入れてもスイング中に気にならないサイズ感と重さです。歩行中も気になりませんでした。

―距離計としてのこだわりは?

「キヤノンがただの距離計を出しても面白くない。せっかくEVF(電子ビューファインダー)の液晶を搭載しているので、ワンタッチでズームできるようにしました。正式な構造や設計は『パワーショットズーム』とは違う系統になりますが、望遠ができて、撮影ができて、距離を測定できるという望遠型の『撮れる距離計』にすることにこだわりました」(有賀氏)

 2020年に発売された『パワーショットズーム』が最も売れたのは23年。ゴルファーの間でも、ゴルフ観戦に便利なアイテムとして認知度はこの1年で一気に高くなりました。『パワーショットゴルフ』はまだ発売時期も価格も未定のようですが、発売されたら大ヒットしそうな予感がします。

超広角レンズで自身のスイングを解析してくれるカメラ

 もう一つ、キヤノンの出展ブースで気になったのが、超広角レンズでスイングを解析してくれるカメラでした。まだ正式な商品名がないプロトタイプとのことですが、今までにない画期的なカメラです。この開発に携わったのはキヤノンU.S.A.incのシニアディレクター、ハルキ・セキヤマさんです。

超広角レンズを搭載しており、1.5メートルの距離からスイング軌道を完璧に撮影してくれる。デモンストレーションをしているのは、キヤノンU.S.A.incのシニアディレクター ハルキ・セキヤマ氏
超広角レンズを搭載しており、1.5メートルの距離からスイング軌道を完璧に撮影してくれる。デモンストレーションをしているのは、キヤノンU.S.A.incのシニアディレクター ハルキ・セキヤマ氏

「キヤノンはカメラの分野でシェアも高いですが、その技術をもっとスポーツの分野に生かせないかなと思っていました。スポーツをしている人が、そのスポーツをうまくなることにキヤノンの技術を利用できたら新しい分野が生まれます。たまたま私がゴルフをやっていたので、ゴルフがうまくなるのに役立つカメラをつくれないかなと思って試作してみました」(セキヤマ氏)

―このカメラの特徴は?

「超広角レンズを搭載しているので、1.5メートルの距離からスイング軌道を完璧に撮影できることです。1秒間に120コマの撮影ができて、ほとんど遅延せずにWi-Fiでモニターに飛ばしてくれます。練習場ではそのモニターを見ながら練習できます。そんなカメラは今、世の中にないと思います」(セキヤマ氏)

―自分のスイングを撮影するときはセッティングが面倒くさいという意見もありますが…

「このカメラは適当に設置してもらえればOKです。アプリ側が人間を認識してくれるので、少しくらい前後左右にズレても問題ありません。120コマで撮影したスイングはトップ選手や昔のスイングとも比較できるので、今まで自分一人では分からなかったポイントをこのカメラが気づかせてくれると思います」(セキヤマ氏)

 レンズ交換式デジタルカメラで20年以上も世界No.1シェアを誇るキヤノン。その技術がゴルフに応用されれば、ゴルフ界にも革命が起きそうです。

野中真一