PGAツアーの解説も務めるゴルフスイングコンサルタント・吉田洋一郎氏が、ツアーの第一線で活躍する選手のプレーを独自の視点で分析。今回は「ザ・メモリアルトーナメント」3日目の15番ホールで見せた、トニー・フィナウ選手の“片手パッティング”に注目しました。
「瞬間的な決断だった」と語るトニー・フィナウ
PGAツアーの公式Xに興味深いワンシーンがアップされています。ツアー6勝のトニー・フィナウ選手が9フィート(約2.7メートル)の距離を右手だけのパッティングでカップインさせる映像です。
練習グリーンでの片手打ちならそれほど珍しくありませんが、撮影されたのは「ザ・メモリアルトーナメント」3日目の15番ホールのグリーン上。そう、これは試合中の映像なんです。

しかも、この一打はバーディーパットでした。それにもかかわらず、片手でバーディーを決めたフィナウ選手は笑顔を見せるどころから、どこか不機嫌そうな顔で15番グリーンを去っていくのです。
フィナウ選手は切れ味の良いショットを武器にスコアメイクしていくタイプのプレーヤー。今季はパーオン率82位と低迷していますが、複数回優勝を果たした2022年はパーオン率5位という成績を残しています。一方でパッティングを苦手としており、平均パットは112位(22年)、120位(23年)、91位(24年)、今季は98位です。
この動画が撮影された3日目もグリーン上のパフォーマンスが悪く、15番までにボギーが6つ。8フィート(約2.4メートル)以内のパットは4回ミスしていました。
試合中に片手打ちをした背景をもう少し深掘りしていきましょう。
3日目のミスパットで目立っていたのはフックラインの引っ掛けでした。直前の14番でも、9フィート前後(約2.7メートル)のフックラインを左に外しています。そんな内容で迎えた15番のグリーン上。バーディーチャンスにつけていましたが、距離・ラインともに14番と同じような状況でした。
バーディーパットを打つ前、フィナウ選手は右手だけで数回素振りをして「これでいける」と片手打ちを決行したといいます。また、片手打ちは「計画的なものではなく、瞬間的な決断だった」というコメントも残していました。
片手でのパッティングを選択したのは左サイドをスムーズに動かすため
パッティングには大きく分けて2つのスタイルがあります。
一つはオーソドックスなショルダーストローク。もう一方がヘッドを真っすぐ引いて真っすぐ出すスタイルです。後者は順手グリップの場合、右手の平を目標方向に出すイメージでストロークしていきます。
フィナウ選手は「ヘッドを真っすぐ引いて真っすぐ出す」ストロークタイプ。ただし、彼は逆手グリップのため、右手の平ではなく左手の甲を低く長く目標方向に出していくイメージが必要になります。
この場合、大切なのは左サイドの動き。左サイドがスムーズに動かないと詰まって引っ掛けが出やすくなってしまうのです。
3日目のフィナウ選手はこの症状に苦しんでいたのでしょう。左サイドをスムーズに動かすため、思い切って左手を外して右手1本でストロークしたというわけです。
さて、ラウンド中に片手打ちをマネすることはオススメできませんが、練習での片手打ちはどんどん取り入れるべきです。ポイントは手先でヘッドを動かさないこと。胸や背中、肋骨などの大きな部位を動かし、連動してヘッドが動く感覚を身に付けるとパッティングが上達するはずです。
トニー・フィナウ
1989年生まれ、米・ユタ州出身。高校時代はバスケットボール選手としても活躍し、大学チームからオファーを受けるほどだったがゴルフに専念。2007年にプロ転向し、15年から米ツアーに本格参戦。翌年の「プエルトリコオープン」でツアー初勝利を飾った。21年はプレーオフシリーズ「ザ・ノーザントラスト」で2勝目を挙げ、22年は「3Mオープン」と「ロケットモーゲージクラシック」で連勝。同年11月の「ケイデンス ヒューストンオープン」では完全優勝を果たした。23年「メキシコオープン」でツアー通算6勝目を挙げた。
【解説】吉田 洋一郎(よしだ・ひろいちろう)
1978年生まれ、北海道出身。世界のゴルフスイング理論に精通するゴルフスイングコンサルタント。デビッド・レッドベターから世界一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。毎年数回、米国、欧州へ渡り、ゴルフに関する心技体の最新理論の情報収集と研究活動を行っている。欧米の一流インストラクター約100名に直接学び、世界中のスイング理論を研究している。海外ティーチングの講習会、セミナーなどで得た資格は20以上にのぼる。
小澤裕介


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