多くのツアープロのコーチとして活躍している石井忍氏が、“ここはスゴイ”と思った選手やプレーを独自の視点で分析します。今回注目したのは、Hitachi 3 Tours Championship。最終ホールの星野陸也のドライバーショットだ。

意図的な引っかけ球で飛距離を稼いだ星野陸也

■星野陸也(ほしの・りくや)/1996年生まれ、茨城県出身。180センチ以上の長身を生かしたゴルフで高校時代は関東ジュニア連覇などの活躍。大学を中退し、2016年にプロ転向。ツアー初優勝を達成した2018シーズンは賞金ランク7位と躍進。2020-21シーズンは、3勝を挙げて賞金ランク5位。日本代表として出場した東京オリンピックは、通算6アンダー、38位タイ。ツアー通算5勝。興和所属。

 12月12日、千葉県の大栄カントリー倶楽部で国内男子ツアー、国内女子ツアー、国内シニアツアーによる3ツアー対抗戦が2年ぶりに開催されました。

 優勝したのは、国内女子ツアーチーム。2019年大会に続き大会連覇を果たし、通算6勝目を挙げました。

寒い季節でのプロのフルショットにはアマチュアでも使える「飛ばしのヒント」が隠されている 写真:JGTOimages

 この試合で私が注目したのは、最終9番パー4。グリーン左手前に池とビーチバンカーがあり、グリーンの左右にもバンカーがあるパー4です。

 Hitachi 3 Tours Championship は、各チームが異なるティーイングエリアを使用して行われ、ピンまでの距離は男子ツアーが299ヤード、シニアツアーが277ヤード、女子ツアーが257ヤード。各ツアーの飛距離自慢の選手が1オンを狙える長さです。

 今大会に男子ツアー代表として出場した星野陸也選手は、2020−21シーズンのドライビングディスタンス4位(301.21ヤード)の飛ばし屋。シーズン中ならラクに届く距離でしょうが、寒い時期だったせいか、プラスアルファの飛ばしの要素を入れて1オンを狙いにいきました。

 プラスアルファの要素とは、クローズスタンスです。ターゲットよりも右を向いて構えることが、なぜ飛ばしに繋がるのでしょうか。

 ここ一番で飛距離を稼ぎたい時、大切なのは、打ち出し角を上げること、スピン量を抑えること、そして初速を上げてミート率をアップさせることです。

 打ち出し角を上げるには、ティアップを高めにして、アッパー軌道でボールをとらえる必要があります。ただ、アッパー軌道はインパクトでクラブヘッドが右から左に動くため、カット軌道になることが注意点です。

 一方、スピン量を抑えるため、ミート率を上げるためには、ヘッド軌道に対してフェースを左に向ける必要があります。ロフトを立ててインパクトすれば、初速が上がり、低スピンの弾道を打つことができます。

 フェースを開いてインパクトすると、大きく右に曲がって風に弱い球になり、飛距離が出ませんよね。つまり、スライスのインパクトと逆の形で球をとらえることで力強い弾道になるのです。

 飛距離を稼ぐには、アッパー軌道とフェースを左に向ける必要があるのですが、この2つはどちらも引っかけ球の要素でもあります。せっかく飛距離が伸びるインパクト、弾道で打っても、目標より左に飛んでしまったのでは意味がありませんよね。

 Hitachi 3 Tours Championship最終ホールでの星野選手は、意図的に引っかけ球で飛距離を稼ぐため、右を向いて構えていたというわけです。

右を向いてアッパー軌道でスイング

 皆さんも“ここ一番”で飛ばしたい時は、右を向いてアッパー軌道でスイングしてみてください。

 この時、ターゲットに向かって振るのはNG。クローズスタンスでターゲットに向かって振ると、カット軌道がきつくなり、反対にスライスが出てしまう可能性があるからです。

 スタンスなりに振ることで力強いひっかけ球を打つことができますよ。

■石井 忍(いしい・しのぶ)/1974年生まれ、千葉県出身。日本大学ゴルフ部を経て1998年プロ転向。その後、コーチとして手腕を発揮し、多くの男女ツアープロを指導。「エースゴルフクラブ」を主宰し、アマチュアにもレッスンを行う。

小澤裕介