単品で発売されているウェッジには、ソール部分に数字が記されています。「56」などの大きい数字はフェース面の角度を示すロフト角。小さい方の数字は“バンス”と呼ばれる角度を表しています。この数字、一体どんな意味がありゴルファーにどんな役割があるのでしょうか?

バンカーショットをやさしく打つために生まれた“バンス”

 グリーン周りに近い砂場でできたバンカーは、「ハザード」と呼ばれています。バンカーショットは普通のアプローチショットとは異なり、特殊な打ち方をしないと簡単に脱出できません。

“バンス”とはソール(底)の後方にある出っ張り(具合)のこと

 その昔、当時のトッププロですらバンカーからうまく脱出するのが難かったようです。それまでのウェッジは、ソール部分は真っ平か逆に後ろが上がった(キャンバー)ソールしかありませんでした。

 そこで、4大メジャーチャンピオンでもあるジーン・サラゼン選手がウェッジの底を出っ張らせた“バンス”ソールを発明。その後、世界中のクラブ作りに影響を与えました。

 “バンス”とは英語で「跳ねる」の意味があります。ソール部分の後方が出っ張っている事で、砂の中に潜ったヘッドが上に跳ね返ってボールを高く打ち出してくれます。

 まるで砂の中で爆発が起きているように見える事から「エクスプロージョン」ショットと呼ばれています。この機能があることで、ゴルファーは「とにかく砂の中にヘッドを入れる」だけでバンカーから脱出しやすくなりました。

 今でも56度以上のロフトの多いウェッジを「サンドウェッジ」と呼ぶのは、もともとバンカー専用のクラブとして生まれた名残からです。

4大メジャーチャンピオンである、ジーン・サラゼンはコース設計家としても有名。“バンス”ソールはバンカーショットをやさしく打つために発明された

サンドウェッジでアプローチもしたいという要望が高まる

 その後、プロの多くはサンドウェッジではなく主にアプローチ専用のウェッジでグリーン周りを打っていました。

 PGAツアーでタイガー・ウッズが登場し、高くスピンの効いたサンドウェッジやロブウェッジを使い活躍すると、一気に一般ゴルファーにも「サンドウェッジでアプローチする」文化が広まりました。

人気の単品ウェッジはバンカー専用ではなくアプローチ兼用に設計されている

 ところが、もともと砂の中で使う設計の“バンス”が大きいサンドウェッジは、芝の上ではヘッドが跳ねてしまい邪魔に感じる人が増えることになります。

 プロ達のウェッジ、実は「ちょうど良い」出っ張り具合に調整していました。“バンス”の角度を調整して、砂の中でも芝の上でも使える数字を探していたのです。みなさんのウェッジの底に記されている数字は、“バンス”の角度です。

ソールの幅が広く、バンスの数字が大きいほどバンカーショットがやさしく打てる

 改めて“バンス”の性能を見ると、数字が大きいほど効果が高いと言えます。

 例えばバンカーが苦手な人は「12」以上あるウェッジがオススメになります。逆に芝の上でボールだけをキレイに打ちたい場合は、「08」以下のウェッジが一般的にオススメです。

 刃の部分が地面に近いので、ヘッドが跳ねることなくボールの下に滑り込んでスピンをかけやすくしてくれるからです。「10」はどちらでもない中間的なバンスと言われています。

 最新&人気ウェッジの多くは、ソールがたくさんの面に分かれた「多面ソール」を採用しています。「バンカーも簡単に脱出できて、いろいろな場所からのアプローチもちゃんと打ちたい」というゴルファーのワガママに応えるためです。

 リーディングエッジ(刃)の前部分はダフったりトップしたりしないように“バンス”があり、ソール(底)の後方部分は抵抗が少なるようせり上がった形になっています。よく見ると「V字」型になり“バンス”効果にプラスαの機能が加わっています。

 “バンス”の数字と共にソールの形を見ると、使い勝手の良いウェッジを見つけやすくなるでしょう。

ウェッジのソールはバンスの大小だけではなく、様々な形のラインナップがある

【解説】筒 康博(つつ・やすひろ)

伝説のプロコーチ・後藤修に師事。世界中の新旧スイング方法を学び、プロアマ問わず8万人以上にアドバイスを経験。スイング解析やクラブ計測にも精通。ゴルフメディアに多数露出するほか、「インドアゴルフレンジKz亀戸」ヘッドコーチ、WEBマガジン「FITTING」編集長を務める。

猿場トール