ゴルフクラブには、性能を高めるためにさまざまな金属が使用されています。中でもドライバーやFWなどに使われるポピュラーな金属が「チタン」です。ただしネックとなるのが値段の高さ。なぜチタンは高額になってしまうのでしょう?

比重が軽いからヘッドの設計自由度が劇的に上がる

 フェアウェイウッド(FW)の最新モデルを見ていくと、同じシリーズであるにも関わらず、販売価格に大きな差があることがあります。例えばテーラーメイドの公式HPを見ると、「ステルス」シリーズの「ステルスFW」は4万6200〜6万6000円という価格ですが、「ステルス プラス FW」は5万7200〜7万7000円となっており、1万円以上高く設定されています。

価格が6万円前後と高額にもかかわらずヒットしているヤマハの「RMX VD FW」

 この価格の違いはどこから来ているのでしょう?

 その答えは、ヘッドに使われている金属の違いにあります。「ステルス FW」のヘッドには「ステンレス」が使われていますが、高額な「ステルス プラス FW」には大部分に「チタン」が使われています。

 チタンはいわゆる「レアメタル」と呼ばれる金属の一種で、製造には高度な技術と高いコストがかかります。その便利さから多くの工業製品に使われる金属となっていますが、大量生産が難しいことからどうしても価格が高くなります。つまり、チタンFWが高額な最もシンプルな理由は、チタンという金属そのものが高価だからなのです。

 さらにチタンの大きな特徴として、比重が軽いことが挙げられます。同じ体積であっても、ステンレスや鉄の約60%の重さに抑えられるので、たとえば同じ形状、重さでヘッドを作る場合、チタンを使ったほうが大胆な重心設計が可能となります。つまり、ヘッドの性能を自在にコントロールできるようになるのです。

 最新FWの多くは、ヘッドの上部を軽く、下部を重くして低重心に設計されています。低重心化することで、ボールを上げやすくなりますし、FWにありがちなフェースの下めに当たるミスにも強くなります。ボディーにチタンを使ったヘッドは、ソールに比重の重い「タングステン」といった金属を使うことができ、ステンレスだけで造ったヘッドに比べて、より重心を低くすることができます。

 設計自由度が高まるだけでなく、チタンはフェースの素材として使ってもメリットがあります。軽く、強度も高い金属ですから、フェースを薄く作ることができ、その分、反発力を高めることができます。ちまたにはルール上限を超えた「高反発」と呼ばれるドライバーがありますが、ほとんどの場合、反発力を高めた特殊な配合のチタンが使われています。

 また、フェースの厚みに変化を持たせる偏肉設計も自由自在にコントロールできますので、チタンを使ったFWは打感が気持ち良い場合も多いです。つまり、チタンを使ってFWを作ることで、飛距離性能も、ミスへの強さも、打感などのフィーリング性能もすべて高めることができるわけです。

 チタンを使うことで、どうしても購入価格は高くなってしまいますが、その性能はあらゆる面でハイレベル。お値段以上の価値は間違いなくあると言って良いでしょう。

昔、チタンはFWには不要と言われた

 今でこそ高性能なクラブの代表的素材となったチタンですが、かつて「FWにチタンは不要」と言われた時代がありました。現代のように製造技術が発達していなかった頃は、比重の違う素材を複合してヘッドを作ることができませんでした。そうなると、チタン単一でヘッドを作るわけですが、FWのサイズでは重量が軽くなりすぎてしまい、今ほど性能を高めることができなかったのです。

 そのため、長らくゴルフ界では、ヘッドの大きいドライバーをチタンで、小さいFWをステンレスで作るのが主流となりました。

 しかし前述したように、製造技術の進歩によって、チタンの比重の軽さを最大限生かすことができるようになりました。近年はさまざまなメーカーからチタンを使ったFWが発売され、プロゴルファーの使用者もどんどん増えています。たとえば、ヤマハの「RMX VD FW」やPRGRの「egg spoon BLACK」はいずれもチタンを生かした高性能なFWですが、メーカーと契約する選手だけでなく、「契約外」のプロが使用する例も出ています。

 あの松山英樹プロも、「SIM2 FW」というチタンで作られたクラブを使用しています。1月に「ソニーオープン・イン・ハワイ」を制した時には、プレーオフ1ホール目のセカンドショットでこのクラブを使用し、ピン5メートルにつけるスーパーショットを披露して、イーグルをもぎ取りました。

 FWはそもそも地面から打つ中で最も長く、打ちこなすのが難しいクラブです。アマチュアゴルファーの中には、打てる気がしないからコースでは使わないと決めている人もいるほどです。しかし、FWで大きな飛距離を出すのはドライバーとはまた違った快感があります。プロも愛用する高性能なチタンFWならば、アマチュアゴルファーであっても、爽快なショットが打てる可能性が高くなります。今までFWに苦手意識があった人もぜひ一度、試してみることをおすすめします。

e!Golf編集部