クラブとゴルファーの唯一の接点であるグリップ。何気なく使っているかも知れませんが、サイズや重さ、素材など様々あるのをご存知ですか? また、きちんとしたメンテナンスや定期的な交換をしておかないと、スイングがどんどん悪くなってしまう事もあるので注意が必要です。
グリップにはサイズや重さ、素材の違いがある
ゴルフクラブは主に、ヘッド、シャフト、グリップがありますが唯一ゴルファーと接しているのがグリップです。

1970年代までは主に革を巻いていましたが、ゴルフプライド社が発表したラバー(ゴム製)グリップが登場して一気に世界の主流になりました。
また、ラバーグリップの中に糸が入っているものを「コード」グリップと言い、更にしっかりと握れるものが登場しました。その後、イオミック社によるエラストマー(樹脂製)グリップが登場してからは各社の主流になっています。
現代グリップの最大の特長は、スリップオン式で簡単に装着が可能になった事です。また、デザインやカラー、太さや重量などクラブの性能を引き出しどんなゴルファーにとってもクラブが滑らず快適にスイングできる消耗品になっている事です。
リキまず握れてスイング出来る事がグリップの大きな役目になっていますが、新発想のグリップも登場しています。ヘッド、シャフトも新しいものが登場していますがグリップの進化も見逃せません。
太さと重さが違うと何がいいの!?
グリップには素材以外にも重量と太さが異なります。市販クラブに装着されているものでは『ゼクシオ12』ドライバーに装着されている31グラムから50グラムくらい。しかしグリップ単体となると、最軽量25グラムから最重量モデルで100グラムを超えるものまであります。

グリップの重さはそのままクラブの総重量に影響し、基本的には軽いものほど振りやすい傾向があります。一方で、重いグリップにはスイング中の手元の存在感が強く感じられるメリットもあります。
太いグリップほど重くなりやすいのですが、太くても重くならないグリップや普通の太さなのに軽量だったりするモデルもあります。今使っているクラブが気に入っている場合は「なんでも良い」と思わずに、同じ種類のグリップに交換した方が違和感や使い心地が変わらずにリフレッシュできます。
グリップの太さは握った時の強さやクラブの振り心地、特にフェースを返すタイミングに影響を与えますが、必ずしも手の大きさに比例するとは限りません。
ほとんどのゴルファーにとっては「スタンダード」(標準サイズ)で問題ありませんが、太くする事で「あえて」手首を使いづらくしたり、細くしてクラブヘッドの動きを感知しやすくしたりする場合もあります。
最近は「太いと方向性が良い」というトレンド傾向にありますが、誰でもそうなる訳ではありません。あくまで振り切れる重量の中で、しっくり&リキまず握れる太さを探す必要があるのです。
バックラインって必要? 不必要?
パター以外のクラブには、はっきり向きが分かる多面グリップを装着する事はできないルールになっています。
ほんのちょっとだけ出っ張りをつけた「バックライン」のみ許されていますが、握った時に出っ張った部分が指に引っかかりクラブフェースの向きがしっくりする効果があります。

また、スイング中に手の中でグリップがずれる感覚がある人に、バックラインのあるグリップは効果を発揮することもあります。
一方、ラウンドタイプは360度、どの方向で握っても同じ感触を得やすいのが特長です。ドライバー「カチャカチャ」可変スリーブやウェッジなどでフェース向きを変えても同じ握り心地を求めるゴルファーにとっては、ラウンドタイプの方が違和感なくグリップ出来ます。
バックラインは、好みの握り心地を得るためのスパイスのような役目があるのです。
一方でパターグリップの場合は、ほとんどが四角に近い多面型グリップになっています。インパクト時のフェース向きで大きく打ち出し方向が決まってしまうパターの場合、はっきりとフェース向きを感知しないとナイスパットは出来ません。
まずは小まめにメンテナンス&交換をする
「どんなグリップが良いの?」にも少し触れなければいけないかと思います。
期待に反する答えになるかも知れませんが、グリップは消耗品。購入してから一度もメンテナンスせず使っていたり、滑る気がするまで放って置いたりは御法度。
例えば月イチペースでラウンドするゴルファーなら、一年経ったらグリップ交換する「つもり」は持って欲しいです。クルマだって、定期的にタイヤの交換をしますよね? “グリップ”である以上スイング中に滑るなんて事があるのは、合う・合わない以前の問題です。
中古クラブを購入した場合、グリップ交換はマストですし、交換のタイミングが来たら今使っているグリップの重量に近い範囲で太さや素材など種類を変えてみてはいかがでしょうか?
しかし、パターのグリップ交換だけは細心の注意が必要。パターの場合だけは「入らなくなったら」が交換時期。古くても滑ってクラブがすっ飛んでいってしまう事はないので、フィーリングが良いときは絶対に交換しないで欲しいです。
グリップ交換は簡単にできるチューニング
面倒臭かったりコストがもったいなかったりするグリップ交換。その「もったいない」のせいでスイングのリキみが取れなかったり、ボールが曲がったりしていたら、時間と労力がムダになってしまいます。

まずはドライバーやウェッジなど、1本から交換しても大丈夫なクラブから「気分を変える」つもりでトライしてみませんか?
例えば同じモデルでもカラーリングやデザインを変えるだけでクラブに対する印象や握りのテンション(グリッププレッシャー)が変わる事もあります。シャフト交換などクラブ調整はハードルが高いかも知れませんが、“グリップ”交換は間違った情報さえ鵜呑みにしなければメリットが沢山あるカスタムチューニングです。
【解説】筒 康博(つつ・やすひろ)
伝説のプロコーチ・後藤修に師事。世界中の新旧スイング方法を学び、プロアマ問わず8万人以上にアドバイスを経験。スイング解析やクラブ計測にも精通。ゴルフメディアに多数露出するほか、「インドアゴルフレンジKz亀戸」ヘッドコーチ、WEBマガジン「FITTING」編集長を務める。
猿場トール