「あっ、トップした!」「またダフった!」などと、自分のミスをいちいち解説してしまう。ゴルファーにありがちな行動です。何気なく言っているこうした独り言が、実はミスの連鎖を呼ぶNG行動だって知ってました?
深呼吸、ゆったり歩行、会話の3つを心掛ける
「あっ、トップした!」「またダフった!」
皆さんはこういった独り言をラウンド中に言うことはありますか?

「照れ隠し的に言ってしまいますね。ミスショットを打ったあとに真面目な顔をするのが恥ずかしいからだと思います」
「反射的に出ます。人に言われる前に自分で自分のミスを解説して、失敗を受け入れます」
理由はあとづけかもしれませんが、仲間とラウンドしているときに独り言が口をついて出てしまう自覚は案外多くのゴルファーにあるようです。
順天堂大学医学部教授の小林弘幸教授は、次のように説明してくださいました。
「そういう独り言は、自律神経が乱れているときの症状です。私自身たまにですが、自分のミスショットに対する独り言を自覚することはありますし、一緒に回っている人が『ダフった!』とか『(フェースが)開いた!』とか言うのもよく聞こえます。そういうときは『ああ、乱れの症状だな』と理解して対処をしたり、同伴者と接したりするようにしています」
具体的にどのような対処をされるのでしょうか? 大変気になります。
「シンプルなことです。もし自分が『あっ、ダフった!』と独り言を言ったなら、息を長く吐き出す深呼吸をすることとボールのところまで大股でゆったり歩くことを心がけます。一方、ほかの人の自律神経が乱れていると気づいた場合は、できるだけコミュニケーションを増やすようにしています」
小林先生によると、深呼吸、ゆったり歩行、会話の3つは、交感神経が優位になってしまった状態を落ち着かせるのに最も効果的だといいます。
「試してみれば実感すると思いますが、息を吸うときより2倍くらい長く吐き出すと血流が良くなりますし、大股でゆったり歩くことで体の力がスッと抜けます。また、天気の話やコースの話やトーナメントの話などたわいない内容でも、ほかの人と会話をすることで気持ちがリラックスします。自然と口角が上がって副交感神経が高まる副産物もあります」
力を抜いたり動作をゆったりすることで、心身をリラックスさせることが大切なのです。
他にもある! 自律神経が乱れている人の特徴
ところで、自律神経のバランスは打球がトラブルになって一気に崩れるケースもありますが、少しずつ乱れていくケースも少なくありません。
「きっかけは、ちょっとしたタイミングの狂いによる小さなミスです。2回、3回と続くと、ショットに対する不安を感じて交感神経が優位になり、肩や腕に力が入って切り返しが早くなっていきます。ショットの調子が悪くなるにつれて無口になる、早くボールのところへ行きたがるのも特徴です。普段のラウンド中は人との会話を大切にしている方でも口数が減るし、進行に支障もないのに1人でせかせかと走っていくのでコミュニケーションはさらに減ってしまうのです。黙って淡々とプレーしているように見えますが、実は積み木ゲームのように少しずつズレながら積み重なっているようなもの。いつ大崩れしてもおかしくない危ういバランスのときに独り言が出るのです」
「あっ、トップした!」「またダフった!」は、自律神経の乱れの症状であると同時に、さらなる大崩れの兆候とも受け取れるのです。無意識のうちに言ったことに気づいたら、交感神経を落ち着かせる3つの対処法をぜひ思い出してください。
野上雅子